3ピースバンドのThe Wisely Brothersが22日、東京・新代田FEVERで自主企画ライブ『The Wisely Brothers presents キュロッツ』をおこなった。この日はシンガーソングライターの澤部渡によるソロプロジェクト・スカートとのツーマンライブ。2組がそれぞれ飾り気のないストレートな演奏ながら才気あふれるステージを展開。The Wisely Brothersは“等身大”という言葉で表せるような自然体な歌詞ながら、独自のサウンドや構成で唯一無二の世界観を見せファンを魅了した。【取材=桂 伸也】

スカート

 先にステージに登場したのはスカート。なんの飾り気もない登場で、スカートのステージは幕を開けた。定刻を5分ほど過ぎたころ、鳴り止まぬBGMの中、飄々とした表情でメンバーが登場、最後に、拍手と歓声に迎えられ澤部がステージに現れた。そして始まりの挨拶を一言、告げる。「こんばんは、スカートです!」続いてステージはおもむろに始まり、そっけない登場の印象をすぐさま吹き飛ばした。

ライブの模様(撮影=相原 舜)

 グルーヴィーなリズムを奏でるバッキングにのせて、澤部が歌う。強く抜けるような、反して少しリラックスしたような雰囲気を醸す歌。一つひとつのドラマチックな物語が、聴く者の胸にスッと入り込み、躍動するリズムへといざなう。巧みなカッティングの引き出しを多く持つ澤部のギターが、そんな雰囲気をさらに煽り、フロアの観衆をゆらゆらと揺らせていく。

 多くの音楽に対する造詣を感じさせるセンスも曲作りに感じられ、短い時間の中で贅沢とも思える空気を会場いっぱいに吹き込んでいた。

The Wisely Brothers

 真舘晴子(Gt、Vo)、渡辺朱音(Dr)、和久利泉(Ba)の3人からなるThe Wisely Brothersは2014年に、同じ高校で1年生の同じクラスのメンバーで結成。2018年に1stフルアルバム『YAK (ヤック)』をリリースした。今年は『SUMMER SONIC 2018』にも出演し、今後の活躍が期待される。

真舘晴子(撮影=相原 舜)

 彼女らもまた、その登場は淡々としたものだった。ポップなSE曲こそ流れたが、登場の挨拶もそこそこに、ステージは「Thursday」で幕を開けた。静寂の中、エコーの効いたギターで、真舘が何か合図のようなしらべを奏でる。その音に、さざ波のようなドラムの音で渡辺が続いていく。そしてあるタイミングでその音は、ゆったりした8ビートのロックサウンドに変化する。そしてその音に真舘の声が、キャッチーなメロディーをのせていく。

 か弱いというわけでもない、かといって力強い雰囲気でもない、何か捉えどころのないその声。しかし、彼女がその声で歌いつむぐメロディは、なにか一人の人間にまつわるもの、物語を音楽でより鮮明に表しているようにも感じられる。意識的にそんな表現をしているようにも感じられる、端々の少し揺らいだ音程が、サウンドに対してさらに人間味を付与し、聴く者に心地よい浮遊感を与えていった。

和久利泉(撮影=相原 舜)

 キラキラしたギターサウンド、というとあいまいな表現に聞こえるかもしれない。しかしThe Wisely Brothersのサウンドの中にあるその音は、まさにそんな表現がピッタリだ。クランチな歪みがあるわけではない、でも何となく金属的でもあり、反して単に冷たい感じでもない。渡辺と和久利のリズムセクションにうまく溶け込み、かつ浮遊感のあるボーカルに色彩感を与えていく。

 「waltz」と名づけながら実際の“ワルツな部分”はラストだけ、といったユニークな構成や、ポップさを目いっぱいに織り込んだ「キキララ」と、3ピースながら彼女ら自身のフレーバーをたっぷりと披露し、会場をThe Wisely Brothersならではのカラーに染め上げていった。

等身大を表したもの

 この日のイベントタイトルにもある「キュロッツ」というキーワードは、今回スカートとの対バンライブをおこなうにあたり、彼らのイメージに寄せてタイトルにつけたものであるという。2組のグループは、サウンド的には全く異なるイメージを見せるが、ボーカルの声がサウンドに強い印象を与えている意味では、両者に共通している部分があるようにも感じられる。

渡辺朱音(撮影=相原 舜)

 ステージでは、さらにラップ的にも聴こえるユニークなボーカルメロディーをフィーチャーした「アンニュイ」など、独自のカラーを見せる楽曲が続く。そこには単なる音楽とか、情景的なイメージを越えた、なにかドラマのような画が見えてくる。中盤にはリズミカルな新曲から、薄めのサウンドでシンプルな空間を作り出す「マリソン」と、全般にゆったりした雰囲気が流れるのとは裏腹に、様々なストーリーが展開していく。この日のラストナンバーは「サウザンド・ビネガー」。

<私は君が大切だけど 君も同じ気持ちなのかな そんなこと目の前では聞けるわけないよ だって私センスなし子だから>

 彼女たちの世代ならではの、特徴的な言葉をちりばめたその歌詞。歌っている本人ら自身の、胸の内にある思いや情景がそのままサウンドに表現されているようでもある。それこそは彼女たちの最大の魅力ともいえるのかもしれない。

 この日はアンコールで映画『青のハスより』に楽曲提供をおこなったことを発表、その主題歌「柔らかな」を披露した。さらにリリースツアーの実施、ラストは東京でワンマンライブをおこなうことを発表した。“等身大”という言葉は、余りにも使い尽くされた表現にも見えるが、彼女たちのサウンドはまさにその表現がよく似合う。だからこそ、彼女ら自身の成長と共に今後バンドがどのような姿を見せていくのか、それもまた興味深いところだ。

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