歌手の由紀さおりと安田祥子が8月2日と3日に、東京・日経ホールでコンサート『日本通運 presents「童謡 生まれて100年」~あしたへつなぐ~』をおこなった。1部では童謡にまつわるエピソードとともに誰もが知っている楽曲を届け、2部ではゲストにひばり児童合唱団を招き2人のソロデビュー曲や観客からのリクエスト曲を披露。美しいハーモニーをホールに響かせ訪れた観客を童謡の持つ温かさで包み込んだ。2日の公演の模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

子供たちに童謡を歌ってあげてほしい

 開演時刻になり暗転すると、爽やかな水色のドレスに身を包んだ由紀さおりと安田祥子の2人が観客の拍手に迎えられステージに登場。2人は笑顔で向かい合い一礼すると、「早春賦」でコンサートの幕は開けた。「夏の思い出」「スキー」など四季を感じさせる童謡をメドレーで次々と披露。2人の歌声は曲によって表情を変え、その季節にあった表現で歌い紡ぐ。

 MCでは今年で100年を迎える童謡の歴史を丁寧に説明、1918年に創刊された童話と童謡の児童雑誌「赤い鳥」に掲載された第一号の童謡といわれている「かなりや」を、由紀さおりが語りかけるように歌い紡ぐと、続いては安田祥子が「待ちぼうけ」をリズミカルに歌唱。くしゃみを入れるユーモアも見せ観客を楽しませた。

 童謡作曲家である本居長世についての話題から本居作曲の「めえめえ児山羊」を届ける。2人の歌唱スタイルの違いが堪能できた一曲。続いて、ドラマチックな展開が耳を惹きつけた「青い目の人形」で魅了。2人は童謡を歌い続ける理由を語る。それは、思い出を蘇らせることが出来るからだという。過去にファンからのリクエストで、みんなそれぞれに思い出の曲があることを体験したエピソードから由紀さおりは「人形」を、安田祥子は「里ごころ」をそれぞれ届けた。

 ここで童謡が教養にも良いことを、4人の子供たちを東京大学に入学させた実績を持つ“佐藤ママ”こと佐藤亮子さんのエピソードを語る。童謡の歌詞から知識や興味を得たことが受験にも役に立ったという。その話にまつわる楽曲、烏瓜という詞が印象的な「まっかな秋」や「夏は来ぬ」、「茶摘」と披露。何気なく聴いていた楽曲だが、エピソードを交えたことによって聴き方が変わる面白さがあった。

 そして、母の大切さ、子供たちに童謡を歌ってあげてほしいという想いを話す2人。キーワードは「童謡は心の栄養」と話し各々が母をテーマにした曲「おかあさん」を歌唱。そして、2人で「からすの赤ちゃん」、「七つの子」と子守歌を歌うかのような優しい声色で会場を包み込み1部を終了した。

ひばり児童合唱団がゲストで登場

 15分の休憩を挟み、ピンクのドレスに身を包んだ2人がステージに登場。「子鹿のバンビ」を優雅に舞いながらの歌唱。続いて、躍動するリズムに合わせ手拍子が巻き起こった「森の小人」と趣の違った童謡を届けた。

 2人が童謡に触れたときのことを振り返る。2人の歌のルーツともいえるひばり児童合唱団での思い出やソロデビューした当時のことなどで盛り上がる。由紀さおりは当時の独特の緊張感もありレコーディングが嫌いだったと明かす。人前で歌うことの方が大好きだったという。当時の貴重な話から現在、ひばり児童合唱団で歌う子供たち14人をゲストに招き、「海メドレー」を届ける。先輩、後輩による世代を越えたコラボレーションは美しいハーモニーを作り出し、このコンサートのコンセプト「あしたへつなぐ」を強く感じさせた瞬間でもあった。

 続いて合唱団とともに安田祥子のデビュー曲「愉快な町の風船屋」、由紀さおりのデビュー曲「もんしろ蝶々のゆうびんやさん」を披露し、ひばり児童合唱団も「幸せのリズム」で豊かな歌声を披露し、観客も手拍子で盛り上がりを見せた。由紀さおりは「清らかで良いですね」と合唱団の歌を賞賛。

 NHK『紅白歌合戦』でのエピソードからその紅白でも歌唱した「赤とんぼ」を披露。情景が目の前に広がるような歌声。由紀さおりの歌に絡み合うような安田祥子の声が印象的であった。続いて、昨年他界した故・山川啓介氏の思い出から、山川氏が作曲したこの童謡コンサートのテーマソング「あしたへ贈る歌」を情感を込めて披露。同じく山川氏作曲の中村雅俊のヒット曲「ふれあい」は、歌い出しの由紀さおりによるアカペラが印象的。

 叙情歌について話す2人。安田祥子は「叙情歌とは美しい日本語と豊かな心情を歌っているもの」ではないかと話す。その叙情歌として中島みゆきの「糸」を披露。1番を安田祥子、2番を由紀さおりと各々の心情を表現するかのように歌い紡いだ。

 リクエストコーナーでは観客から聴きたい歌を訪ねる。「緑のそよ風」や「朧月夜」、「五木の子守唄」、「七才の夏まつり」、「ふるさと」など10曲以上のリクエストに応えた。どんな楽曲にも対応していく童謡コンサートを始めて32年間という2人のキャリア感じさせるセクションであった。そして、コンサートは「ソレアード~子供たちが生まれる時~」を会場全体で合唱。生命力に満ちた歌声が包み込むなか、本編を終了した。

 アンコールの手拍子に応え、ステージに再び登場した2人。由紀さおりは「こんなにも2人で長時間歌える日が来るとは思っていませんでした。こんな日が迎えられて幸せです」としみじみ。そして、2人ならではのコンビネーションが堪能できる「トルコ行進曲」を披露。速いパッセージのメロディを一音一音魂を込めたスキャット、その見事なスキャットに観客も大きな拍手を贈る。

 ラストはこのコンサートのエピローグのような感覚とノスタルジックな気持ちを与えてくれた「夕やけこやけ」。2人はステージを降り、客席で歌唱。温もりのある歌声を近くで感じながら、コンサートの幕は閉じた。音楽、歌が持つ力の可能性を2人が伝えてくれた。これからも童謡を歌い紡いでいかなければと感じさせるコンサートであった。


プログラム

▽第一部

01.早春賦
02.夏の思い出
03.村祭
04.スキー
05.どこかで春が
06.かなりや
07.待ちぼうけ
08.毬と殿様
09.めえめえ児山羊
10.青い目の人形
11.人形
12.里ごころ
13.まっかな秋
14.夏は来ぬ
15.茶摘
16.おかあさん
17.おかあさん
18.からすの赤ちゃん
19.七つの子

▽第二部

01.子鹿のバンビ
02.森の小人
03.海メドレー
04.愉快な町の風船屋
05.もんしろ蝶々のゆうびんやさん
06.幸せのリズム
07.赤とんぼ
08.月の沙漠
09.あしたへ贈る歌
10.ふれあい
11.糸
12.リクエストコーナー
13.ソレアード~子供たちが生まれる時~

アンコール

EN1.トルコ行進曲
EN2.夕やけこやけ

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