シンガーソングライターの川嶋あいがデビュー15周年を迎えた。2003年2月にI WiSHとして「明日への扉」でデビュー。同年8月には「天使たちのメロディー」でソロデビューした。「明日への扉」は当時、フジテレビ系恋愛バラエティ『あいのり』の主題歌に起用され、2週連続チャート1位になるなどヒットを記録した。6月27日に発売された10年ぶりベストアルバム『川嶋あい 15th Anniversary BEST』は、リアレンジした代表曲「旅立ちの日に…」「My Love」「compass」など全30曲を収録。まさに彼女の15年の歩みが刻み込まれている。デビュー当時、渋谷公会堂での単独公演を実現させるため、路上ライブ1000回やCD手売り5000枚というノルマを課し、それを達成させた。「明確な目標が常にあったほうが良い」と語る川嶋のこの15年はどのようなものだったのか。楽曲づくりの変化も交えて話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】

作品をゼロからイチにする作業が一番楽しい

川嶋あい(撮影=冨田味我)

――この15年間なのですが音楽制作に変化はありましたか。

 最近になって自分自身ってそうなんだろうなと思ったことがあって、作品をゼロからイチにする作業が一番楽しいということに気づきました。中学の時から曲を書き始めたんですけど、作品が増えていくと当たり前になってきてしまうんです。それもあって好きとか嫌いという感覚もなかったんです。

 15年経ってアーティストとして色々経験させていただいて、曲作りの他にもライブやテレビやラジオへの出演など、様々な自分の表現方法がある中で、なにもないところに命を吹き込んで、自分自身で種を作って植えて行くのは一番楽しいという感覚を理解出来て納得出来たのは15年経ってからなんです。

――それまでは使命感みたいな感じもあったり?

 いえ、10代だったこともあり何も考えていなかった、意味を見出さなかったんじゃないかなと思います。路上ライブに立つためや次のCDのために曲を作っていたんだと思います。10代の頃から曲の作り方も変わっていなくて、単純に生きがいだったからこそ、ずっと続けてこられたのかなとも思います。

――歌や曲をやり始めたのは、お母様が川嶋さんの人見知りを克服させるために習わせたというお話があるのですが、そこもこの15年で変化はありましたか。

 変わってないですね。いまだに人見知りです。その人に心を開くまで5年ぐらいは掛かっちゃいます。最初からオープンに行ける方は本当に羨ましいです。なので、私の周りの人たちはオープンな人が多いんですけど、それは自分が持っていないものを求めてるからなのかなと思います。たぶんこれは一生変わらないんじゃないかなと思います(笑)。

――ご自身の曲など分析したりしますか。

 分析します。ルーツは歌謡曲なので、懐かしい古き良きメロディーラインだなと思います。歌詞もボキャブラリー豊富な昭和の曲を聴いてきたので、それが基盤になっているなとも感じています。

――昭和の歌詞の方がボキャブラリーがある印象?

 今は違うベクトルで新しいボキャブラリーはあると思います。昔は情緒があって情景を模写出来るような言葉があふれていたような気がします。

――その中で以前すごいなと思うアーティストに福山雅治さんや松任谷由実さんを上げていたのを見たのですが、そのお2人に情緒などを感じられるというところも?

 そうですね。福山さんや松任谷さんは変わらずすごいと思います。歌詞の世界観も情緒を感じられるものを書かれていますし、メロディが人懐っこい王道のJ-Popだと思います。誰でも歌いやすい、馴染みやすいメロディなんです。どんな曲調でも色んな角度で生み出されているので、最新作がいつも待ち遠しいんです。福山さん節もあるんですけど、万人に愛される楽曲だなと思います。

――ちなみに“川嶋あい節”もあると思うのですが、ご自身ではどのあたりだと思いますか。

 私ですか!? 難しいなあ…。たぶんサビでの転調が“川嶋あい節”だと思います。転調はけっこう多いんです。曲作りの方法としてはサビはもちろんキャッチーさというのは重要なんですけど、サビに行く前のBメロをどう作って行くかというのを重視しているかも知れません。Bメロで気持ち良いものが生まれると、サビも良いものが生まれることが多いので。

――サビから作らないんですね。

 そうですね。Aメロから順番に作って行くことが多いです。あまりバラバラに組み合わせることは少ないです。「compass」はちょっと違うんですけど。基本的には曲の頭からです。

――その「compass」は改めて録り直してみていかがでした?

 すごく大切な作品のひとつで、たくさん時間を掛けて作り上げた楽曲です。あまりやらないメロディの組み合わせをやってみた曲です。Aメロ、Bメロ、サビを別々に作って、パズルのように繋げていきました。音程のレンジが広いので、今回ベスト盤で改めて録り直してハードな曲だなと思いました。

――そうなんですね。さて、そのベストアルバム『川嶋あい 15th Anniversary BEST』がリリースされましたが、ベストアルバムは川嶋さんにとってどのような存在ですか。

 もう本当に思い出のフォトアルバムという感じです。自分の思い出を見返すような感覚になれるものです。

――まさにアルバムなんですね。ヒストリーを振り返れるものになっていますが、ご自身の中でターニングポイントとなった楽曲はどれでしょうか。

 「天使たちのメロディー」、あと「12個の季節~4度目の春~」「絶望と希望」の時期かなと思います。I WiSHから川嶋あいとしてソロデビューしたのが「天使たちのメロディー」なんですけど、当時大学生だった人たちが路上ライブを手伝ってくれて。その人たちとレコード会社を立ち上げてCDをリリースした曲なんです。そして、「絶望と希望」は路上ライブ1000回を達成した後で、ここから“イチ”アーティストとして新たな道が始まって行くという楽曲なので、ターニングポイントになるかなと思います。

――重要な楽曲なんですね。その中で今回ベストアルバムで過去曲をリアレンジして収録されていますが、楽曲はどのように決められたのですか。

 今回はスタッフさんと相談して決めました。もう、あっさりと決まってしまって。代表曲3曲という話で、これしかないみたいな感じでした。リアレンジはしたいというのは前から考えていて、私の中で世界観は明確にありました。それをアレンジャーさんに相談して作っていただきました。

――「My Love」はダンスっぽいアレンジで。

 そうですね。打ち込みを増やして、4つ打ちでまた違った感じに仕上げていただきました。極限までパワーアップさせた「My Love」にしてみたかったんです。

――ダンスミュージックはルーツにあったりしますか。

 ルーツにはないんですけど、この15年間でアルバムやライブで様々なアレンジでやってきたこともあって抵抗感とか全くないです。

――代表曲「旅立ちの日に…」はボサノバのリズムが心地良い新たな一面を見せてくれました。この楽曲の生まれたきっかけも改めてお聞きしたいのですが。

 中学を卒業して上京するまでの間に作った曲です。地元福岡で過ごした中学時代を振り返りながら書きました。

――その中学時代の思い出で印象的だったことはなんでしょうか。

 中学2年生の時に演歌歌手としてデビューしたことが印象的でした。

――演歌歌手としてデビューに至ったまでの流れはどのようなものだったのでしょうか。

川嶋あい(撮影=冨田味我)

 習っていた内容が演歌と歌謡曲でした。J-Popに触れたのは中学に入った頃でした。

――自作曲でデビューされたとのことですが、演歌で自作曲って珍しいですよね。通常なら作家先生がいてという流れが多いと思うのですが。

 確かにそうですね。実際作詞は作家先生がいらっしゃって、その先生がオーディションで私が演歌を歌っているのをみて「僕の詞に曲をつけてみない?」と仰ってくれて、それでデビューに至ったんです。

――デビューが早いですけど、その時はどのような気持ちだったのでしょうか。

 本当に小さい頃から歌手になりたいと思っていたので。まさに夢が叶うという感覚ですごく嬉しかったです。

――今でもその演歌で培ったものは体に染み付いてますか。

 はい。たまに“こぶし”っぽいのが回っちゃうことがあって。立ち会ってくれるスタッフさんやミュージシャンの方はそれ理解してくれています。

――そのこぶしとビブラートは違うものだとは思うんですけど、どういうわけかたをされるのでしょうか。

 違いますね。ビブラートをもっと激しくした感じがこぶしに近いかも知れないです。

――こぶしを回すコツってありますか。

 コツですか!? 私も教わったわけではないんです。自力でやってみて、「ちょっと(こぶしが)回ってるかな?」ぐらいなので。私はビブラートとこぶしの間ぐらい感覚を持ち続けてやっていたんだと思います。

――ベストの収録曲でこぶしのニュアンスが聴ける曲はありますか。

 こぶしっぽいのないんですけど、演歌を通ってきた私ならではという曲なら「12個の季節~4度目の春~」にその癖が出ていると思います。

――その曲に川嶋さんのルーツが垣間見れるわけですね。歌うこと、表現へのこだわりはどこに置いてますか。

 「旅立ちの日に・・・」はもう十何年前に作った曲ではありますけど、音源に近い歌声で歌うようにしています。私は曲によって声色をすごく変えます。皆さんが知っている曲に関しては皆さんが聴いているそのままで届けた方が喜んで下さるのかなと思っています。その他の曲に関してはその時のライブのテンションとかアレンジによっても変わるので、その世界観に合わせて自由に表現したいと思っています。「旅立ちの日に・・・」はそれが苦痛というわけではなく、それも表現の一つだなと思っています。

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