沖縄の歴史、歌の力

 ところで、石垣島での現代版組踊のステージで歌った際に会場が一つになったと語っていた。会場が一つになる要因は様々あるが、観客一人ひとりが同じ体験をしているなど、共通する認識がなければ一体感も生まれないだろう。

 「会場にいる人たちはうちなんちゅう(沖縄の人)なので、方言も分かるだろうし、島が(共通認識として)持っている、いろんな歴史のなかの魂の声が一つになった要因だと思う。それと舞台に出る方は子供たちがメインですので、子供たちがやるエネルギーやそれに感動したと思います」

 「驚くのは、うちなんちゅうが感動したものが、仙台育英高校さんや聖光学院高校さん、花巻東高校さん、そういう東北の方々が使ったということ。『ダイナミック琉球』という曲名ですけど、人の心の奥底の情熱を灯して、それが力になって周りの人たちを一つにして、そういうパワーに繋がって応援歌になっていると思います。とにかくこの曲の力は凄いと思います」

 現在放送中のNHK大河ドラマ『西郷どん』では先般、西郷隆盛が沖縄本島から60キロ離れた沖永良部島に流罪されるシーンが放送された。そこでは、薩摩藩から厳しくさとうきびを取り立てられる島民の姿が描かれていた。

 奄美は1600年代前期に琉球王国から割譲された。その琉球王国は明治時代になり日本に併合されて沖縄になった。そして、先の大戦では日本で唯一の本土決戦の地に。言葉に出来ない悲痛な思いが歴史から見える。

成底ゆう子

成底ゆう子

 一方の東北は、2011年に未曽有の災害、東日本大震災が発生。死者1万5893人、行方不明者2553人という甚大な被害が出した。今も癒えない悲痛の思いがある。土地と共に生きる。「ダイナミック琉球」が繋げるのはそうした言葉に出来ないエネルギーのような気もする。

 沖縄の歴史を見た時に、彼らの音楽はどこかブラックミュージックにも繋がる。誕生した背景こそ違うものの、音楽を通じて活路を見出そうとしている点においては重なる部分がある。

 「ブラックミュージックと言われて、なるほどと思いました。沖縄の人はシャイな人が多い。自分の思っていることを表現するというのは、本土の人と比べて少ない。まずは相手を思ってしゃべったりするけど、それは奥底に自分という確固たるものがあるからだと思います。日本になるまでいろんな歴史があって、いろんな文化を吸収してきました。そのなかでも変わらないものがありました。それは音楽です。三線があったり民謡があったり、生活の一部として残っていて、自分たちの心の奥底にある島人の誇りだ、それが強いんだと思います」

 「ブラックミュージックと通じるものと言ったらそこだと思います。『自分たちは琉球人だよ』という誇りを、まさに平田さんは表現したと思います。力強いという言葉だけじゃなくて、人が持っている奥底の魂の叫びとか、そういうモノを灯せる力がある。それがこういう事に繋がっていると思います」

 沖縄に限ったことではなく、日本各地、世界各地にはそうした歴史がある。悲しみや喜び、言葉に出来ない感情を歌に託したものは多い。歌詞には「応援」という言葉が使われていないものの、そうした感情が呼び起こされるのは、その土地とともに生きる、それぞれに宿す命がこの歌にはあるのかもしれない。

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