3人組ロックバンドのBURNOUT SYNDROMESが8月3日に配信限定シングル「世界を回せ」をリリースする。MusicVoiceでは、そのレコーディングに密着。青春文學ロックを掲げる彼らが、1曲をどのようにして仕上げていったのか、その課程の一部を覗いた。その模様とともに、彼らの話などを交えてこの曲の魅力に迫ってみたい。【取材・撮影=村上順一】

自身最速のテンポ

熊谷和海(撮影=村上順一)

 BURNOUT SYNDROMESは3月に東京・渋谷CLUB QUATTROでのワンマン『孔雀〜いざ真剣勝負〜』を成功させ、更に、2019年3月に始まるワンマンツアーのファイナル公演の東京・恵比寿LIQUIDROOMもチケットはソールドアウト。その年の4月26日には追加公演として東京・TSUTAYA O-EASTが決定している。

 これを見ても今勢いに乗っている彼らが、8月3日に配信限定でリリースするのがシングル「世界を回せ」。今年2月に2ndフルアルバム『孔雀』をリリースした彼らが次のステップとして提示したのは、テンポ180という自身の楽曲のなかでも最速のナンバーで、生バンドとシンセが見事に融合した夏らしい爽やかさ、キラキラとした夏の太陽を感じさせるロックチューンだった。

 その楽曲のレコーディングに密着。PCの普及とテクノロジーの進化により割りと珍しくなってきているともいえるレコーディングスタジオでの録音。熊谷和海(Vo、Gt)のディレクション力が印象的だった制作風景、それはどのようなものだったのか。

回転がコンセプト

石川大裕(撮影=村上順一)

 タイトルは「世界を回せ」とスケールの大きさを感じさせるものになっているが、この曲の動機はライブで「タオルを回せる曲が欲しい」という実にわかりやすいものだった。石川大裕(Ba、Cho)は、意外にも過去の作品でタオルを回すような楽曲はなかったと話している。ツアーを回り数多くのステージを経験して感じたこと、それが今作に大きく反映されているのだろう。

 熊谷は音を回転させるプラグインエフェクトがきっかけで“回す”というコンセプトが生まれたとその動機について話す。その手段が目的となったことでリアルな情景が歌詞にも反映されている。ライブバンドとして全国を回るということにも掛かっているのだろう。歌詞にある<次の街までは未だ遥か 車内で響く鼾のハーモニー>は彼らのツアーの様子がイメージできる臨場感を打ち出している。

 「曲を作るのに重要なことは?」と熊谷に尋ねると「今は何を伝えたいかというのも重要だが、それよりも自身の中では最初のきっかけ、アイデア」だという。過去の曲たちもそういったふとしたきっかけから曲が生まれていると明かした。

 今回のレコーディングの一連の流れの中でも、特に興味深かったのが熊谷のディレクションだった。もちろんプロデューサーやディレクターもいるが、楽曲を作った熊谷の感覚と判断が光る瞬間がいくつもあった。歌やギターはもちろんだが、石川や廣瀬拓哉(Dr、Cho)の演奏についても細かく指示を出していく。

 特に基盤となるドラムレコーディングはシビアなものだった。ドラムがメインの録音だが、2人も参加し、一緒に演奏。途中、熊谷が「パルスが外れた」とリズムについて指摘し、キックのリズムをジャストにスネアを後ろになどグルーヴに対して指示を出していく。リズムコントロールとしての今の流行りは、「前ノリ」らしくドラムが後ろにあるのが気になるという。スネアの音色を変えてみたりと、サウンドもリズムやグルーヴに大きく影響することが確認出来た瞬間だった。

 続いては石川のベースだ。ドラムレコーディングの時から、絶好調といったプレイを見せていた。知人から借りたというベースと同じ機種の中でも状態のよいAmpegという英国ブランドのアンプでスタッフからも絶賛の声が上がっていた。レコーディング自体もスムーズで途中、ピッキング(ピックで弦を弾くこと)の粒立ちなどドラムでは出せない存在感をベースに求める熊谷の要望に応えていく石川。ここでドラム録りからの疲労か、弾きすぎによって手の調子が芳しくない。一瞬スタジオにも重い空気が流れ掛けたが、小休止を挟みムードメーカーでもある石川の持ち前のポジティブさで、しっかりとOKテイクを決めた。

下半期はシンセを極めたい

廣瀬拓哉(撮影=村上順一)

 ここで今作の特徴を説明すると、『孔雀』に収録されている打ち込みをメインに構築された「POKER-FACE」を彷彿とさせるシンセサイザーの使い方だろう。「POKER-FACE」が“陰”なら今作「世界を回せ」は“陽”といった立ち位置。回転というコンセプトを強く感じさせるイントロのサウンド、基本となるバンドサウンドにスパイスを与えているエレピなど、さりげない音が効果的に楽曲を盛り立てている。熊谷はギターのみならずオールマイティな手腕を発揮し、通常のバンドサウンドにとらわれない発想で、楽曲彩ることに成功していた。

 熊谷は「下半期はシンセを極めたい」と話す。シンセの魅力はギターでは埋められない帯域を出すことが可能で、今の音楽にそれが必要不可欠だと感じているという。実際今回のシンセサウンドやギターソロ前の声も回転しており、サウンドからもテーマ性を強く訴えている。ヘッドフォンで聴くとその回転具合がわかりやすい。

 ここからギターのレコーディングに突入。ベーシックとなるバッキングを何とワンテイクで録り終えるという理想の流れ。メンバーからも驚きの声が上がっていた。石川が「熊谷は人として只者じゃない」と話していたのが印象的だった。というのも、過去多い日には作曲や練習として「10時間ぐらいギターを弾いていたのでは? 本やゲームなど他の趣味もあるだろうけれどそれも全て音楽へ還元する為」だと語ってくれた石川の言葉からも、このレコーディングスピードは納得出来る。続いてイントロでのリードギターやソロ、サビ前に登場するタッピング奏法など上物と呼ばれるパートは、音色など少々考察するシーンもあったが概ねスムーズに終了。

 ギター録音に続いては楽曲のメインともいえるボーカルのレコーディングに突入。歌唱前の歌詞の最終調整を終えレコーディングはスタート。まずはツルッとラストまで歌ってみることに。そうすると歌ったことで様々な違和感が発見できる。より情景やそのもののイメージが伝わるような言葉へと変えていく。そこに音として響きが良いものをはめていくわけだが、歌が一番リスナーの耳に入ってくるということもあり、慎重に言葉を選んでいく姿が印象的だった。熊谷の声が活きる言葉と音というところだが、それが良い感じの響きだったとしても歌い辛いと判断すればまた違う案を考える。その試行錯誤を繰り返し歌自体のレコーディングは1時間ほどでメインパートは終了。緊張感のある密度の濃い時間だった。

 熊谷は最初のアイデアが重要だということが今作で確信に変わったと話す。歌詞は聴いた人それぞれに置き換えられるよう、共感出来るものが良いのだという。今作は文学的要素というよりも、リアルな情景、ライブへの欲求、さらに<未だ見ぬあなたに出逢う為 死ぬまで旅して生きたい>と歌詞に綴っているように、ファンとの絆が存分に表現された作品となった。その想いをストレートに感じて欲しい1曲がここに誕生した。

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