シンガーソングライターの平井 大が7月4日、アルバム『WAVE on WAVES』をリリースした。温故知新とも言えるサウンドで多くのリスナーを魅了してきた彼が今作で見せたのは、シンセサイザーを大胆に取り入れたものだった。平井はヴィンテージと呼ばれるものを好んでいて、それを今までの作品にも反映してきた。「80年代という年代もヴィンテージに入ってきた」と話す平井は、収録曲の「SONG FOR TWO」や「RIDE THE WAVES」ではアナログシンセを投入し、新たな表現力を見せた。最愛のパートナーのアドバイスもありながらの楽曲制作についてや、「はじまりの歌」での葉加瀬太郎とのセッションで生まれたもの、27歳という今についてなど多岐にわたり話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】

80年代という年代もヴィンテージに入ってきた

平井 大(撮影=冨田味我)

――今作『WAVE on WAVES』の周りからの反応はいかがですか?

 ライブでは、アコースティックでやったりしているんですが、みんな素直にスッと聴いてくれているかなという印象です。

――CDのジャケットで薔薇の花を一輪持っていますが、何かメッセージが?

 薔薇というのは僕の中で大きな意味を持っている花で、パートナーとケンカをしちゃったときや仲直りのきっかけを作ってくれるのも薔薇だったりするし。ただ単に贈り物をしたいなと思ったときも愛している人に対して薔薇をプレゼントします。そういった意味では僕の中での象徴でもあるのでライブでもいつもステージ上に薔薇を飾っています。

――『WAVE on WAVES』タイトルがついたきっかけは?

 基本的にアルバムタイトルは全曲出来上がってから最後に付けていますが、まず『WAVE on WAVES』というこのギザギザなフォルムが凄く美しいですよね。それが一つと、ナチュラルな波と人工的な波のミックスというのが今回のアルバムでは表現できていると思っていて。ナチュラルな波というと自然界の波で、一番わかりやすいのが海の波であったり、山の小鳥のさえずりとか風の音とか、そういうナチュラルな波の音と、あとは人工的な波。僕は東京生まれ東京育ちで、人工的なものに囲まれて育ったので、そういう所からの影響も絶対に受けています。今回のアルバムだとシンセサイザーの音がたくさん入っていたりとか、そういうナチュラルな波と人工的な波のミックスという表現も含めてこういうタイトルにしました。音も全部“Wave”ですから。

――確かに音は“波形”となって目で確認できます。「SONG FOR TWO」はシンセサイザーを取り入れています。ここまで大胆に使うのは初めてだと思うのですが、なにかきっかけが?

 まず、僕は昔の音楽からインスパイアされて音楽を作ることが多いんですけど、自分の音楽も今後の世代にどう受け継いでいくのか、みたいなことはミュージシャンとして大前提にあって。古くからあるものって、GパンもTシャツもそうですけど、着たときにフィットするものであったり生活に馴染みやすいですよね。音楽もそうで、古くからあるものって聴くと安心したり、生活に馴染みやすい。なので今回はそういった要素を入れたかったというのも一つあります。

 僕が作ったものも何十年後かにまたヴィンテージになればいいなと、そういうスタンスで曲を作っています。

 僕の肌感覚ですけど、80年代から90年代初頭に生まれたものもヴィンテージという枠組みに入ってきているなというのは感じていて。よくヴィンテージショップに行くんですけど、80'sのTシャツとかがピックアップされるようになってきたんですよ。80年代の映画とかも大好きで、『ゴーストバスターズ』とか『ジュラシック・パーク』とか『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『スター・ウォーズ』の初期の三部作の後半とか。その辺は当時、未来を色々想像して作ったものだと思うんですけど、今観たらメチャメチャ懐かしかったりとか。

――レトロフューチャー感がありますよね。

 ええ。僕はそういうのが凄く好きで。サウンド的にもそういうのを取り入れたいなというのがまずあって、シンセサイザーが色んな所で使われていた時代でもあるし、僕としても見直さなきゃなというのがあったので、そういった意味で「SONG FOR TWO」「RIDE THE WAVES」の2曲に関してはそこからのインスパイアが強かったかなと思います。

――シンセサイザーは普段からよく触れるのでしょうか?

 僕は基本的に弦楽器を弾くので触れないですね。元々打ち込みとかやっていたのでキーボードはたまに弾いたりしますけど、ここ最近はあまり触っていなくて。今回のアルバムはバンドのキーボーディストと一緒にシンセサイザーのことを研究したりとか、ディスカッションしながら制作しました。使っているのは全部アナログシンセなんですけど。やっぱりヴィンテージ感だったりとかは表現しやすかったりするし。温かみがあるんですよね。人工的な音なんだけど凄く人間味があるというか。そこが凄くいいなと思って。

――そのシンセサイザーの研究の結果、新しい発見はありましたか?

 シンセサイザーでも温かみのあるサウンドは作れる、というのはけっこう大きかったかもしれませんね。人工的なものであると手作り感とかヴィンテージ感が凄く大事だと思っているから、それをどういう風に人工的な音を使って表現するかという部分に関しては今回僕の音楽にプラスになったことだと思います。古いものからのインスパイアでどういう風に後世にその音楽を残していくのか、未来に向けてどういう風にヴィンテージとして残していくのかというのは僕の音楽のスタンスでもあって。それは前作の『ON THE ROAD』でも『Life is Beautiful』でもそうですし、そのスタンスはあまり変わっていないと思います。

――「SONG FOR TWO」はどういった情景を思い浮かべながら書いた歌詞でしょうか?

 凄くパーソナルな部分なんですけど、曲を作って最初に聴かせるのはパートナーなんです。曲が出来上がって家に持ち帰って、どうかなって聴いてもらうというプロセスが僕はいつもワクワクする部分だし、最初のアウトプットだったりするから、そのワクワク感を表現したいと思って。プレゼントを送るときってワクワクするじゃないですか? そういう心情を曲の中で表現できないかなというのはこの曲でありました。

――最初にパートナーに聴かせたときの反応は、良いときもあれば微妙な反応のときも?

 フィフティ・フィフティですよ。「この曲いいじゃん!」というときもあればネガティブな意見のときも勿論あります。

――ネガティブな意見のときはやっぱりがっかりしますか?

 そうでもないですよ。それをどう改善していこうかというのも一緒に考えてくれるので。その辺りについてはすごく信頼していますから。

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