米ロサンゼルス在住の日本人ギタリスト・YTが中核を担う音楽プロジェクト「GOSPELS OF JUDAS」が今月18日、初のフルアルバム『IF』をリリースした。プロジェクトの始まりは、氷室京介が親交の深いクリエイターとともに「クリエイティビティだけをもとに、自由に、遊びから生まれた音楽を、デジタルのメソッドを使って創出し、それを共有したい」という思いで発足したプロジェクト「DiGiTRONiX」に端を発する。「GOSPELS OF JUDAS」にはYTを中心に、Jun Inoue、Gin Kitagawa、Tesseyが参加している。氷室ファンならこの名前を見ただけでも想像がつくメンバーだ。そんな彼らが送り出した今回の“創作品”はまさに映画音楽といった感じで、1曲目から映像の世界へと引き込まれるような立体感がある。そして、ライブ活動休止前に録音した氷室京介のボーカル曲なども収録されている。今回はYTとJun Inoueに話を聞く機会を得た。氷室京介から得たものとは何か。YTを中心とした参加メンバー、DiGiTRONiX、そして氷室京介からの脈絡があって生まれたと言ってもいい今回の作品はどのようなものなかのか。彼らの世界に触れた。【取材=木村陽仁/撮影=冨田味我】

2年前から既に始まっていた「IF」

 遡ること約2年前。2016年5月14日の福岡ヤフオク!ドーム。『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』福岡公演で氷室京介はこう言った。「ぜひ、みんな応援してあげてほしい」。GOSPELS OF JUDASに関して語った言葉だ。

 この日の公演。アンコールを受けて登場した氷室は、バンドメンバー一人ひとりを丁寧に紹介してステージに呼んだ。「LAのウチの近くに住んでいるんだけど、俺のスタジオではしょっちゅう顔を合わせて親戚みたいなヤツ」と語って呼び込んだのがYT、その時にGOSPELS OF JUDASのことも紹介した。

 「『“B”ORDERLESS』というアルバムで俺の曲を7曲アレンジして、ベースも弾いて、ギターも弾いて、めちゃくちゃ才能があるヤツで、LAのウチの近くに住んでいるんだけど、俺のスタジオではしょっちゅう顔を合わせて親戚みたいで、めちゃくちゃ頼りになるギタリストです、YT。彼は『GOSPELS OF JUDAS』というバンドをやっていて、俺も今4曲ぐらい歌っていて、そのバンドが引き継いで、Tesseyも参加すると思うけど、ぜひみんな応援してあげてほしいなと思います」

 この時から約2年、ようやく創作品が世に誕生した。GOSPELS OF JUDASの1stアルバム『IF』。しかしなぜ、『IF』なのか。

――『LAST GIGS』から約2年の歳月が経ちます。氷室ファンとしてもYTファンとしても作品がこうして形となることは嬉しいと思っていると思います。リリースされることに当たっての心境は?

YT 結構、制作に時間がかかったのでやっとできたという安堵感と、気に入ってもらえるのか、という不安もあります。できる限り多くの人に聴いてもらいたいですね。

――制作はいつ頃から?

YT 2年くらい前からですね。氷室さんから、GOSPELS OF JUDASを引き継いでいって欲しいと言われて。それがアルバム制作のきっかけですね。

Jun Inoue 僕は『アルバム作るから、ちょっと手伝って』とYTが声をかけてくれたのがきっかけで参加しました。

――氷室さんに「引き継いで欲しい」言われた時はどう思われました? 何か氷室さんの想いというか、そういうものを感じましたか?

Jun Inoue 僕は氷室さんに『YT歌えるんだから、歌え』と言われたことが凄いことだなと、びっくりしましたね。

YT 氷室さんが僕に対してどういう想いを抱いて下さったのかはちょっと分からないですけど、氷室さんに『歌え』と言われたら、『はい、わかりました』と言うしかないですよね…。物凄く気が引き締まりましたけどね。

Jun Inoue そりゃそうですよね(笑)。無理とは言えないよね。

YTとJun Inoue(撮影=冨田味我)

――確かにそうですね(笑)。今こうして作品として出来上がって、改めて振り返って感じることはありますか?

YT 曲作りは、初期の『Bloody Moon』の時からやっているので、このプロジェクトに関しては、そのまま氷室さんが感じて来たものを託してくれたんだろうな、ということは感じましたね。

――「自分たちの持っているものを自由に創出しよう」というこのプロジェクトのコンセプト通りということですね。

YT そうですね。まさにその通りのことですよね。

――プロジェクトを最初に呼びかけたのは氷室さんですか?

Jun Inoue 最初は氷室さんが「DiGiTRONiX」という、商業的ではない音楽的な実験、音楽だけでどれだけのことが出来るのかというプロジェクトでGOSPELS OF JUDASと、僕はGODBROTHERというバンドで2曲作らせて頂いて。今はその2つが融合しました。だから、「音楽でどこまで表現できるか、やってみろ」というメッセージを受け取った感じがしています。

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