お天気と気持ちは似ている

植田真梨恵

――「雨にうたえば」は、とてもアーバンでポップなサウンドの楽曲。歌詞は、ケンカしたときの気持ちを歌っているんですね。

 はい。大切な相手とケンカしたことが、きっかけで作りました。例えば私がひどいことを言ったりして怒られたときに、どっちも同じくらい嫌な気持ちになりますよね。言葉って思ったことを言えばいいわけではなくて、心を通わせやすくするためのものだから、考えて言葉を尽くさないといけないなって、特にここ半年くらいすごく考えていたんです。言葉は心だなと。それを1曲にしようと思いました。

――仲直りの仕方って難しいですよね。

 自分への嫌悪感もあるし、忘れて寝ようと思っても、なかなか寝つけなかったりとか…。かと言って他の友だちに話しても、結局は何も解決しないし。要するに自分で受け止めないといけないときの消化方法が、私の場合は曲にすることなんです。

――曲にして歌って、気持ちは晴れましたか?

 晴れました(笑)。でもできあがったときは、思いのほかウジウジしている曲になっていて。「こんな歌は誰も口ずさんでくれない」と思ったから、雲間から光が差し込むようなイメージで編曲をお願いしました。

――雨のシチュエーションにしたのは、どうしてですか?

 お天気と気持ちは、とても似ていると思います。憂鬱な気持ちのときを天気にたとえると、雨が降っているときなのかなと思うんです。その雨という天気の気持ちの中で、雨を誰かと分かち合うのでも、ひとりで耐えるのでもなく、その雨の中で私は歌ってみたかったという感覚ですね。

――最後のほうにカエルの鳴き声っぽい音が入っていますが、あれは?

 カエルがいますね(笑)。編曲をお願いしているjoeくんが、カエル好きなんです。

――そして3曲目の「distracted」は、通常盤にはメロトロンと歌のバージョンを収録して、初回限定盤には弾き語りをボイスメモで録ったバージョンが収録されています。

 なるべくいちばん良い形で聴いていただきたいと思っている中で、iPhoneで録った弾き語りが、二度と出せない雰囲気と声で、とても良かったんです。だから、良ければこの形でも聴いてほしいなと思って収録しました。歌詞が全部できて「よし歌ってみよう」と、初めてこの曲を通して歌ったときの音源です。キッチンのカウンターにiPhoneを置いて、明け方だったのですごく小さい声で歌いました。

――そういう録音物をみんなに聴いてもらうことに、照れくささはありませんか?

 私の歌は、エンターテインメントだと振り切ってやっているものではなくて、自分の中にあるものをただ形にしている感覚に近いんです。なので、これを照れくさいと思ってしまったら、そもそも私の歌をお聴かせすることができなくなってしまいます(笑)。

――通常盤は、メロトロンを使ってアレンジされていますが、どうしてメロトロンを使おうと?

 メロトロンの音が、すごく好きで。何とも言えない懐かしさやもろさを感じて、聴くと不思議な気持ちになるんです。生のフルートの音を鍵盤に吹き込んである楽器なので、フルートを吹いたときの息の長さみたいに、鍵盤によって音が伸びる長さが違うのも不思議だし。そういう音色が、私にとっては温かくて寂しくもあり、不安定でもろくもあると感じて。そんな雰囲気が、「distracted」にとても合っていると思ったので使いました。

――メロトロン自体は、ビートルズの曲で知ったのですか?

 最初は単純に音として、サンプリング音源として耳にして惹かれました。それをきっかけに、ビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」のイントロを奏でているのが、メロトロンだったと知ったという感じです。だからあの雰囲気を目指して、レコーディングのときも何十回と聴いたし。ビートルズは、何でこういう音を出そうとして、何で逆回転をやろうと思ったんだろうとか、いっぱいの謎を想像しながら録っていきました。

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