ロックバンドの忘れらんねえよが9日、東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブ『忘れらんねえよ 渋谷クアトロワンマン YouTuberになればモテると聞いた』をおこなった。【取材=桂 伸也】

 2008年に結成した忘れらんねえよは、2017年には自身初の日比谷野外音楽堂でのワンマンライブをソールドアウトさせるなど近年、特に注目を浴びているバンドの一組だが、2015年にドラマーの酒田耕慈、そして2018年5月にベーシストの梅津拓也が脱退、以降は柴田隆浩(Vo&G)一人がオリジナルメンバーとして活動を続けている。

 この日のライブは、梅津して脱退して以降初のライブとなり、バンドの今後を占う上でも大きなポイントとなった。その姿を見届けようと、開場時間前には建物前に長い列が並び、開場後は30分も経たないうちに、スタンディングで満員状態だった。

ステージスタート前には寿司詰め状態。2カ月ぶりのバンドステージに柴田は大喜び

撮影=古賀恒雄

 ステージのスタートから5分を過ぎたころだろうか。ギュウギュウに詰まって身動きも取れなくなった会場はようやく暗転、そして3人のお面をかぶったサポートメンバーが、拍手に迎えられステージに現れた。そして5月におこなわれた梅津のラストライブの時と同じように、3人は[Alexandros]の「ワタリドリ」をプレーし始める。とその時、柴田は観衆の意表を突いて、会場の後方から登場。

 そのサプライズに、既に観衆は大興奮の様子。その観衆の上を、柴田は両腕を広げ、クラウド・サーフィンをおこない、まさしく「ワタリドリ」さながらの姿でステージに降り立った。そしてステージに立ち吼える。「Yeah! 返ってきたぜ、渋谷!」。そしてサポートメンバーが一人ひとりお面を取り、ドラムのタイチサンダー(爆弾ジョニー)、ベースの長谷川プリティ敬祐(go!go!vanillas)、ギターのカニユウヤ(突然少年)とメンバー紹介。続いてタテノリナンバーの「僕らチェンジザワールド」で、いよいよステージは幕を開けた。「Yeah! 忘れらんねえよ、始めちゃっていいですか!?」一曲を終えて、なおも叫ぶ柴田。

撮影=古賀恒雄

 もう柴田が何を言っても、観衆は「Yeah!」と大声で返すだけ。どんな曲でもサビを共に歌い、手拍子を入れて、と観衆はエキサイトして柴田たちのプレーに応える。「ここ2カ月は弾き語りをずっとしていて、それも楽しかったけど、楽しければ楽しいほどまたバンドをやりたくなって…」と柴田はこの日を迎えた気持ちを改めて語る。そこにはまさしく彼なりの“忘れらんねえ”思いがあったにちがいない。

 合間には様々な思いを語りながら、この日はとにかくパンキッシュで、疾走する8ビートナンバーを続ける。「中年かまってちゃん」から「寝てらんねえよ」まで、その様相は変わることがない。そのリズムに合った、シンプルなリズムとハーモニー。しかし一見単純な曲の中には強い流れが存在し、メロディーにはキャッチーな要素も感じさせる。その上を、全く飾ろうとしない様子の柴田のボーカルが泳ぎ回るように存在する。柴田が抱えていたギターは、2曲も過ぎると弦が切れた様子だったが、それすら関係ないといわんばかりに、気迫の表情で歌を歌い続ける。全く飾り気のない姿、それこそが忘れらんねえよの最大の魅力だということが、この時ステージからはっきりと示されていた。

やりたい放題のライブ、思いが滲み出るプレー、改めてバンドを続ける思い「(ロックは)辞められねえよ」

撮影=古賀恒雄

 「新曲やっていいですか!?」とステージ中盤に近づいたころ、柴田が観衆に語り掛けた。そして披露したのは「YouTuberになればモテると聞いた」。柴田はそれまで抱えていたギターを置き、ハンドマイクでさらに観衆に向かって迫る。その様子に、観衆はすかさずまってましたとばかりに大きく反応する。掛け合い、手拍子、シンガロング。この日のライブでは始まってずっとこの調子だ。しかも観衆は疲れた様子を見せるどころか、さらに熱気を漂わせ、強力なエネルギーを放ち続ける。「みんなの“頑張れ! イケメン”という思いが伝わってきたよ! みんなが少しでも痩せられるように、今日は速い曲しかやらないんですよ!」と柴田は冗談っぽい話を交えながら、観衆を煽る。

 続いて「ばかばっか」では「ビールが飲みたい」からと、ステージからドリンクのカウンターまでクラウド・サーフィングで観衆に運んでもらうなど、やりたい放題。さらにはフロアの真ん中まで運ばれると、そのまま観衆に支えられて真上に立ち上がり「よっしゃ! 俺はここでロックを誓うぜ!」と高らかに咆哮、その瞬間場内からは怒涛のような歓声と拍手が巻き起こった。さらに「ばかもののすべて」をはさんで「菅田将暉やっていいですか!?」と叫び、菅田将暉の「ピンクのアフロにカザールかけて」を繰り出したりと、ユニークな選曲にも、観衆は大喜びだ。

撮影=古賀恒雄

 一方、ライブもいよいよ終盤を控え、柴田は先日おこなわれたチャットモンチーのラストとなる日本武道館ライブを観覧したことを語り始めた。自身がバンドを始めるにあたり、大きな影響を与え続けてきたチャットモンチーのステージを回想しながら「“ロックバンドって、こんなにカッケーんだ”と思ったんだ」とライブの感動を振り返る。そしてその衝撃で改めて自分のバンド活動に対して「辞められねえよ」と一言、しかし思いたっぷりに語る。

 さらに柴田は、一向に引くことを知らないように盛り上がった残り4曲をプレー、その中で「一からやり直したくなったんだよ。やっぱり、ロックバンドはここからっしょ!」と、この日忘れらんねえよのライブをおこなおうとした意味とともに、これからに向けての思いをしっかりと語る。さらにアンコールに突入しても勢いは全く衰える気配もなかった。

 この日は新曲の「踊れ引きこもり」を含む全18曲を全力でプレー。最後は「ありがとうございます! よろしくお願いします!」「またな。楽しいことをしてやろうぜ! バイバイ!」と、別れの寂しさより、間もなく訪れる次の出会いの期待を感じさせるような言葉で、ライブを締めくくった。ライブ中には10月からツアー各所でツレ(知人バンド)との対バン、ツーマンライブのツアー『ツレ伝』をおこなうことも発表している。今後バンドがどのような活動を見せてくれるのか、改めて大いに期待したいところだ。

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