現代版ジャズロックバンドのfox capture planが音楽を担当した『フジテレビ系ドラマ「コンフィデンスマンJP」オリジナルサウンドトラック』が5月30日に発売された。長澤まさみを主演で詐欺師たちの活躍を描いたドラマは人気のうちに最終話を迎え、既に映画化と韓国版、中国版の製作も発表されている。この作品の面白さを音で支えたのがfox capture plan。ピアノ、ベース、ドラムの3人組だが、このドラマのメインテーマでは編成にとらわれないゴージャスなビッグバンドサウンドを提示している。このサントラに込められた意図は一体何だったのか。そして先日おこなわれたバンド初のブルーノート東京2デイズ公演について、fox caputure planの3人にインタビュー。【取材=小池直也】

ドラマというよりも映画の様なサウンドトラック

岸本亮

――今回のサントラ制作はどのように決まったのでしょうか?

カワイヒデヒロ スタッフの方が僕たちの資料を出したら、プロデューサーさんの目に留まったそうなんですよ。それがきっかけでオファーを頂きました。決定する前にデモ曲を作ったり、特にメインテーマは決まるまで何回も制作サイドとやりとりしていました。

井上司 テーマだけで3人それぞれ5、6曲くらい作りましたから(笑)。

カワイヒデヒロ 今ではほぼほぼお蔵入りしてしまったものばかり。これだけ作って本決まりにならなかったら困りものでしたが、決まってよかったです。

――皆さまはこれまでもドラマの劇伴を数多く担当されていますが、今作のコンセプトなどはありましたか。

岸本亮 ピアノトリオなので、ベースをエレキとウッドで持ち替えたり、鍵盤もオルガンやエレピを使い分けたりもできますが、それだけではバリエーションが足りなくて。主にホーンセクションとギターを何曲もフィーチャーしています。

カワイヒデヒロ プロデューサーさんからも「とにかくゴージャスな曲がほしい」とお願いされていました。それならビッグバンドだろう、という事で。1人だけとかセクションなど、管楽器はかなり使いました。サントラってストリングスが多いのが通例なんですけど。

岸本亮 特に日本の連ドラとかではあまりないかもしれません。ドラマのサントラというよりも映画のサントラっぽいですね。

カワイヒデヒロ 管楽器だったり、バンドサウンドが多いので、わりと普通にバンドの新譜としても聴けると思います。でも楽器が多いと各楽器の演奏量のバランスを考えたり、楽器の特性を考えてメロディも意識しなければいけなかったので大変でしたね。管楽器は同時に1部屋で録っていて、誰かが間違えたらそこだけやり直し。だから1曲目にレコ—ディングしたメインテーマは、結構ピリッとした雰囲気で(笑)。

 でも皆さんが「こういう風に吹いた方が良いんじゃない」というアイディアも出してくて助かりました。やっぱり僕らは管楽器奏者ではないので、奏法でどこまでやれるのかとかもわからないんですよ。それから、もともとビッグバンドのアレンジの経験があったのが救いでした。これで初めてだったらもっと時間かかったんじゃないかなと思います(笑)。

――収録曲の中で印象深いものがあれば教えてください。

岸本亮 僕は「S.O.S.」。これは制作過程の後半に「速い曲をもっとください」というオーダーをもらって作った曲です。ピアノがメロディを弾いて、途中からストリングスが加わるという構成は僕らの曲でも結構ありますね。デモ段階では「緊急事態発生」というタイトルでしたが、打つのが面倒くさくてデモのファイル名を「S.O.S」にしたんです。そうしたら、それが正式タイトルになりました。

井上司 ドラマーの視点で言うと「Strain Match」が印象深いです。僕が作った他の曲は、基本的にドラムはシンプルなんですが、これはドラム2人がバトルしている様な曲なので違いますね。1度ドラムを録音して、その上から自分で自分とバトルしていく様な形で制作しました。テンポが揺れてぐちゃっとなった場面もあるんですけど、そういう生っぽいせめぎ合いが出せたなと。事前に考えていたところもありますけど、最終的に勢い一発的な感じでいきました。

カワイヒデヒロ メインテーマはもちろんなんですけど、僕は「Fish on!!」が印象深いです。(長澤まさみ 演じる)ダー子のだましが成功した時に流れる曲で、ジャズスタンダードの曲を合体させたリズムにメロディを乗せた様な感じでできています。わかる人にわかればよいかなと遊び心で作りました(笑)。

――制作にあたり、参考にされた音源などはありましたか?

岸本亮 色々聴いて参考にしましたよ。『キル・ビル』(2003年)、『オーシャンズ11』(2001年)、『パルプ・フィクション』(1994年)とか。

カワイヒデヒロ 「『パルプ・フィクション』みたいな音楽がほしい」というオーダーもあったんですよね。それでできたのが、「Confidence Rumble」です。

――日本の『古畑任三郎』(1994年―2006年)などは?

カワイヒデヒロ 今回は日本のサントラは参考にしてませんね。

岸本亮 ブラスをメインに用いている点では一緒ですが『古畑任三郎』はどちらかというとクラシックというか、現代音楽みたいなサウンドですね。でした。

井上司 「『踊る大捜査線』(1997年)や「HERO」(2001年)みたいに一瞬流れただけでドラマを思い浮かべられる様な曲にしてください」という話もしていましたし。

――ドラマの内容もチェックされました?

カワイヒデヒロ いち視聴者として楽しんでいます。脚本を読んでいる時点で超面白いと思っていたので、実際に音楽も当てた映像を観て「これは良いドラマになったな」とニヤニヤが止まらなかったです。

井上司 長澤まさみさんの振り切った演技も今までのイメージと違うもので、驚きました。

カワイヒデヒロ (出演された)小手伸也さんだけは直接お会いしてご挨拶できましたが、主演の3人(長澤まさみ、東出昌大、小日向文世)にはまだです。近いうちにお会いできたら嬉しいですね。

岸本亮 映画化も発表されましたし。

カワイヒデヒロ そうですね。ドラマでの続編とかもあればやりたいです。

――バンドとしての作品を作るのと、サントラを作るので心境の違いなどはありますか。

井上司 単純に劇伴の時は楽器の制約もなく、イメージに合う楽器を入れる事ができますね。ライブも意識しなくてもよいので、やっぱり心境の違いはあると思います。ライブだと3人の音が中心ですし。

岸本亮 表面的な部分は使っている楽器の違いだったりするんですけど。音楽的にはコード進行などでも、自分たちのオリジナル作品では使わないパターンを採用したりしています。ブルースっぽい進行を思い切って使ってみたりして。

――今後も劇伴は取り組んでいきたい?

カワイヒデヒロ 締切に向けての追い込みはつらいですけど(笑)機会を頂ければやりたいですね。以前は自分たちの作品を作りながら、劇伴の制作もやって、もう1つの企画盤もやって、みたいな時期もありました。その時は毎週スタジオに入って大変でしたよ。『コンフィデンスマンJP』の映画化に向けては、まだ追加曲のオーダーとかはないのですが「五十嵐(小手伸也)のテーマがない」と言われたので、急遽作った曲(ドラマの副音声企画で生演奏した)があるのでそれは音源化したいと思っています。

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