音楽は、自分を任せられるもの

――一方で映画を見た所感ですが、半分くらいはアドリブではないかな? という感じでもありました。

 そうですね。結構アドリブも多かったと思います。台本に”楽しそうな二人”とか、具体的に何をやるかを何も書いていないところもあって、現場に入って原監督から「知英さん、ちょっとここは遊びますからね」とか言われたり。「え? どうやって遊ぶんですか?」って言ったら、何か劇中で、二人で遊んでいるところで、アメリカンドッグを食べるシーンがあるんですけど…。

知英

知英

――淳之介がケチャップをたっぷり付けるのを見て「付け過ぎだよ!」とか言われていたシーンですね。あれば稲葉さんのアドリブですか?

 そう!(笑)。あんなことをやるとも思わなかったんですが、急にガーッと付けて食べるから「この人、おかしい」って(笑)。稲葉と原監督で“知英さんを驚かせよう”みたいな感じだったらしくて、“何それ~!?”って思ったんですけど。

――あのシーンは一発でOKでしたか。アドリブのシーンというと、大体があんな感じだったのでしょうかね。逆にそういうところがあったからこそ、稲葉さんともすごくやりやすかったというところも?

 あったと思います、二人で遊んでいるところは結構アドリブ。稲葉さんとは初共演でしたけど、そんな気がしませんでした。本当に淳之介と瑞穂みたいに幼馴染み、という感じでしたし。だからすごく楽だったし。

――稲葉さん自身が歌を歌われるというシーンでも、共感するところがあったのかなと。最初のシーンでは、ちょっと“あれ?”という感じの下手な演奏を、力強く披露されていましたが(笑)

 (笑)まさしく。でも稲葉さんの歌声って結構力があって、魅力があります。

――また、劇中では結構長回しのシーンもありましたね。あれはすごく大変そうだなと。セリフなんかも覚えるのも大変だったのではないでしょうか?

 そうなんです! リハーサルも何回もやって、セリフも合わせてやったり。それとテンポも、やっぱり“二人の感じ”みたいな雰囲気を出すというか。

――セリフの入らないところの、間合いなんかみたいなところもですかね。

 それも確かに。それと車椅子を押しながら長回しするのがなかなか。ただ歩くだけとも違う感じだったし。車椅子とこっち、それとこっちに集中、みたいな感じで、本当に大変でした。

――何か腕もパンパンになっちゃう感じですよね。車椅子の方は本当に大変だと思います。

 車椅子の皆さん、言われていました”ムキムキになる”って。私は短時間だけだったから大丈夫だったけど、やっぱり皆さんは腕の力がすごかったです。

――また、今回の主題歌「涙の理由」についてもお話をうかがえますでしょうか? 今回の歌は、曲ができた段階で頂いて、どんな印象を受けられましたか? 詞には、映画の印象が強く感じられましたが。

 そう、やっぱり“瑞穂の歌”だなと思いましたね。ただ瑞穂だけでなく、これは誰に対しても人生の悩みを持っている方であれば誰でも響くし、絶対この歌詞は共感する方も沢山いらっしゃると思います。

 だから、この曲を聴くことで勇気を持って欲しいという思いもあります。私もそんな思いでこの曲を歌えましたし。また改めてこの作品を撮り終えて、思ったことも沢山ありますし、みんなもそんな風にこの映画を見終わった後に様々な思いをめぐらせていただければと思います。

知英

知英

――例えばこの映画では、“歌に救われる”というポイントがストーリーにも描かれている印象を受けました。知英さん自身も歌に救われたという点については、今までの人生の中で何か引っ掛かるところはありますか?

 それはもちろん。やっぱり仕事として歌っているということもあるけど、仕事だけじゃない。でも仕事でやってきたものが自分の全てになっている。今は芝居という部分も自分の中にはあるけど、やっぱり歌うということは、自分の全てでもあるので、歌はやっぱり私の中ですごく大きな部分を占めています。

――改めておうかがいしたいのですが、知英さんにとって音楽とは、どのようなものなのでしょうか?

 音楽は自分を任せられるものだと思います。例えばその状況によって、曲を変えたり、楽しいときには楽しい音楽に自分を任せられて、悲しいときには、たまには悲しい曲を聴きたいと思ったら、そこに自分を置き換えたり。“何!! そう、それ、分かる~”と一人で納得しながら聴いたり(笑)。

 今改めて考えると、その気持ちに合わせて、私は音楽を聴いているんだと思います。歌うのはまた違うかも知れないですけど。でも聴くほうだと、音楽とは自分を任せられるもの、ゆだねられるものだと思います。

――自分の可能性を広げてくれるものという面も?

 それは仕事としてですね。そういう面もあるけど、自分にとって音楽といえば、歌うほうも、聴くほうも両方あって、両方ともに通じることだと思います。

――歌うほう、聴くほうということで位置づけが変わってくるところはますか?

 いや、それはどちらも一緒だと思います。今はソロになって、自分が表現したいものを音楽に乗せているので、ある意味自分を任せていると思うし。自分をうまくそこに乗せて、生きているんじゃないかと。

(おわり)

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