ロックバンドのLAID BACK OCEANが1stアルバム『NEW MOON』をリリースした。結成8年目にして初となるこのフルアルバムには、これまでも『RE:SOUZOU PROJECT』と題してユニークな作品を世に届け続けてきた彼らの今のクリエイティビティが詰まっている。そんな彼らは現在、リリースに伴うツアーの真っ最中。16日に東京で迎えるファイナルを前に、ボーカルのYAFUMIにインタビューに応じた。JELLY→のボーカルとしても一世風靡した彼にとっての音楽や、時代、世の中について思う事などが語られていく中で、何気なく口にした「生き延びるために音楽はやりたくない」という言葉はあまりに説得力を放っていた。彼の理想は今どこにあるのだろうか、YAFUMIに聞いてみる。【取材=小池直也】

世の中にないものを作りたい

――発売から1カ月が過ぎました。新作の反響はいかがですか?

 不思議な受けとめられ方をしたなと思っています。「何考えてるんですか?」「何狙ってるんですか?」と(笑)。自分的にただわかりやすいものを作っているつもりもないですが、仕掛けたものに響いてくれるんだなと嬉しかったです。時にストレートな歌詞も書きますけど、基本的には斜めの方向にボールを投げているので「その角度から推測するに次はこのくらいで投げるかな?」と見てもらえると面白いタイプの人間かなと自分では思っています。

 『NEW MOON』について、まだ自分でもよくわかっていない状態なんですよ。ただ、意外とまとまったなと。結成8年目にして1stフルアルバムなので、色々な時期に作った曲が入っています。直前に作った曲もあれば、今まで100曲くらい作ってきたのでそこから勝ち上がってきた曲もパッケージされているので。

LAID BACK OCEAN

――「TOILET REVOLUTION」の<革命の日にトイレは汚れる>というのは、ある意味でとても冷めた目線ですよね。力強い革命の事を考えつつもトイレの事を考えているなんて。

 それは今回僕が言いたかった事に近しい事ではあるかもしれません。「革命をしているのにトイレの事を考えている瞬間ってあるよね?」と。「STANDING BACK」のミュージックビデオはデフォルメされていますけどね(笑)。監督にあまりにトイレの話をしすぎてしまったからああいう映像になってしまいました。「全然トイレの曲じゃねえし」とも伝えたんですが。ファニーさが付加されましたけど、まあいいかと思ってます。

 普段から人と会話していてもあまり言葉の意味は聞いていないんですよ。それこそイスから立ち上がる瞬間にその人の本心が出るというような、そこが面白いのかなと。曲もそういう観点で作っているかもしれません。

――アルバムの元々のコンセプトはなんだったんでしょう。

 根本のコンセプトは単純に「1stフルアルバムを作りたい」という事です。2年くらい前メジャーデビューが決まったんですけど、結局できなくなってしまったんです。ファンも笑ってました(笑)。その後にメジャーで出す予定だった音源をリリースする事もできたんですけど、それをせずに『RE:SOUZOU PROJECT』に取り組んだんです。そこから心が立ち上がってきてフルアルバムを出したいと思える様になりました。看板を出したいというか。

――今作は以前決まっていたメジャーデビュー用のフルアルバムとは別物のようですが、それを1枚目にしなくてよかったと思いますか。

 その時に出すのと今出すのでは全然違いましたね。今出せてよかったです。当時もメジャーに行く理由を考えて、縛りが増える事を承知で決めていました。でも「この時代に、はたしてそれが何の意味を持つのか?」という疑問もあって。制作費も宣伝費もそんなに変わらないですし。だから『RE:SOUZOU PROJECT』で「何を送るかわからないけど、とにかく良い物を送るから投資してくれ!」と募集したんですよ(笑)。それを信用してくれた方がたくさんいたので、それで自由にやらせてもらえたのは自信にも繋がりました。そういう心持ちで『NEW MOON』を作れたのがよかったですね。

 僕らとクラウドファンディングの相性が良いというのも良くわかりました。信頼の中で、“面白い事をやらせてください”とお願いすれば皆が面白がってくれるものができる。それがありがたいです。投資してくれた人には毎回CDを送っていますが、今作ではでっかい段ボール箱の黒い風船(新月)に入っているCDを送りました。そういう事も『RE:SOUZOU PROJECT』の延長線上でフレキシブルにやっていこうと思ったんです。

LAID BACK OCEAN

LAID BACK OCEAN『NEW MOON』

――収録曲の中でもテンポがいきなり変わる「運命ルーレット」など、音楽的に不思議な点も印象的でした。タイトルと歌詞を見て楽曲の方向性を理解するような。

 あれは僕の趣味みたいなものです(笑)。せっかく音楽をやるのであれば、音の仕組みであったりとかで歌詞の持つ意味を増幅したいと思って。変拍子だったり、テンポが上っていったりだとか、そういうのが好きなんですよ。わかりにくいと言われがちなので、そことのバランスを見てですけど。コンセプトを理解してもらえれば面白いですよね。あの曲を他のバンドがやっていたら「この曲すげえな」と僕は悔しいと思うくらい好きで。でもメンバーにはあまり伝わっていないみたいです(笑)。

 やっぱり世の中にないものを作りたいんですよ。ドキドキさせたい。僕にとってのロックはそういうもの。共感を得るために作るものではないなというのがあります。「自分はどうしたらみんなが共感してくれるのかがわかります」という人のインタビューを読むと馬鹿じゃねぇのか?って思うんです。アーティストたるもの、傷ついている人とか悲しい想いをした人の心に寄り添うのは当然というか、やらなければならない事で。それをひけらかすのは違うと思うので。

――この8年間でそういう心境に至った?

 実はもともとなんですよ。バンド始めた時はパンクを聴いてて。その前は『ミュージックステーション』とか親の聴いてるものを聴いてました。友達にパンクを聴かされて「バンドやろうぜ」と言われた時にめちゃめちゃドキドキしたんですよ。こんなものがあっていいのか、こんな事を人の前で言っていいのかと。

 筋肉少女帯の「元祖高木ブー伝説」も衝撃でしたから。「こいつは少女でもねえし、筋肉もねえし、ましてや高木ブーでもないのに『俺は高木ブーだ』って言ってる! すげえな」とか思ってました。ここまで自由でいいんだと。そういう空気でどこか救われたのかもしれませんね。

 とはいえ色々な音楽を聴いてきたので、言葉が美しくて共感を呼ぶものだって好きですよ。でもやっぱり勝負どころでは外したくない。1stフルアルバムの1行目に<革命の日にトイレは汚れる>と提案したら、みんな「いいねそれ!」と言ってくれるチームだからそれができたんです。

――という事はYAFUMIさんにとってのロックはサウンドではないという事でしょうか。

 そうですね。サウンドではなく、アイデンティティですね。どういう気持ちでいるのか。「ヘヴィなロックで叫びたい」とかそういう気持ちはありません。そうやって叫んでいても「こいつめっちゃポップスだな」って思う奴はいっぱいいますよ。逆も然りで、それこそthe band apartなんかもうね(笑)。彼らとはJELLY→の時によく対バンしてました。あんな美しい音楽をやりながら、心では刺している様な、そういう音楽には感動しちゃいますね。

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