サザンオールスターズが、デビュー40周年の記念日である6月25日と翌26日に、NHKホールで、約3年ぶりとなるライブ『キックオフライブ2018「ちょっとエッチなラララのおじさん」』を開催。単独公演では自身初となるNHKホールで、40周年イヤーを華々しくキックオフさせた。MusicVoiceではこのうちの25日を取材。音楽ジャーナリストの柴那典氏が以下にレポートする。【取材=柴 那典】

 そこにあったのは、いわば日本のポップ・ミュージックの最高峰だった。数々の名曲を生み出してきたバンドが、再び第一線に舞い戻ってきたことを告げるステージだった。

 デビュー40周年を迎えたサザンオールスターズが6月25日・26日におこなったキックオフライブ 2018『ちょっとエッチなラララのおじさん』。約3年ぶりに表舞台に立った彼らが再始動の舞台に選んだのはNHKホール。意外にも、ここでサザンの単独ライブがおこなわれるのは史上初のことだという。会場にはプラチナチケットを手にした各日3600人の計7200人が足を運び、26日には全国の映画館で7万人を超えるファンがライブビューイングに集った。

 暗転すると「1978年、あるアマチュアバンドがプロの世界に足を踏み入れました――」と、元NHKの有働由美子アナウンサーが歩みを紹介しバンドを呼び込む。大歓声に迎えられてメンバー5人が登場し、桑田佳祐が笑顔で手を振る。1曲目は「茅ヶ崎に背を向けて」。続けて「女呼んでブギ」。デビューアルバム『熱い胸さわぎ』に収録されたアマチュア時代からの楽曲だ。「茅ヶ崎に背を向けて」で桑田佳祐は<おかげさまで40年><いつもいつもありがとう>と歌詞を変え、ひときわ大きな拍手がそれに応える。

撮影=岸田哲平

 さらには「いとしのエリー」。イントロからどよめきのような歓声がわく。ビジョンに5人が映り、サビでは全員のハーモニーが響く。この序盤3曲の説得力がすさまじかった。40年前の楽曲が今も色褪せないポップスのスタンダードであることを否応なしに示す歌と演奏だ。

 「ここ、久しぶりなんですよ。ここで『レッツゴーヤング』って番組に出て、汚いのがジョギングパンツ履いてたんです」とMCで桑田佳祐はデビュー当時のNHKホールでのエピソードを振り返る。

 セットリストは「愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~」や「真夏の果実」など大ヒット曲を惜しげもなく披露し、シングルのカップリング曲やアルバム曲も散りばめたスペシャルな構成。印象的なのは、ドームやスタジアムでの公演が当たり前になっているサザンを間近で観たときの生身のバンドの姿だ。歌の力だけではなく演奏全体を届けるような、アンサンブルのパワー。桑田佳祐のパフォーマーとしての底力。5人の声が重なったときの得も言われぬ美しい響き。そういうものがありありと伝わってくる。

 そして、もうひとつ印象的だったのは、今回のキックオフライブが「過去」ではなく「未来」にフォーカスを当てたものであったということ。40周年の感謝はキーワードとしてあったけれど、決して懐かしさを共有するような場ではなかった。むしろバンドがこの先に突き進むエネルギーを放つ場だった。

 その象徴が、この日のライブ初披露となる3年ぶりの新曲「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」。6月15日に配信限定シングルとしてリリースされ各配信サイトのランキング1位を席巻したこの曲は、ビジョンに歌詞を映し出し、スーツ姿のダンサーたちをバックに従えて披露。池井戸潤原作の映画『空飛ぶタイヤ』主題歌だけあって、企業社会に翻弄されながらも自らの意志を貫くサラリーマンの熱いエモーションが伝わってくるような一曲だ。

 「栄光の男」から「東京VICTORY」を続けて披露した中盤も胸に響いた。長嶋茂雄氏をモチーフにした曲から、変わりゆく東京と2020年のオリンピック・パラリンピックに思いを馳せる曲へ。ミラーボールが光り「Wow…」のコーラスを全員が歌う。これだけ数多くの名曲を作ってきたバンドの40周年を記念したライブで、新曲や最新アルバム『葡萄』収録曲がハイライトの一つになっている。それって、本当にすごいことだと思うのだ。

 「やっぱりサザンは楽しいね。目指せ50周年!」と告げた松田弘(Dr)、「このバンドにパーカッション必要かな?」と自虐でファンを笑わせながら「最後尾から支えていきます!」と声を上げた野沢秀行(Perc)、親の反対を押し切ってデビューした学生時代を振り返り「その後の僕の人生、幸せです」と笑顔を見せた関口和之(B)、そして「(女性で)もはや還暦を過ぎてこんな学生みたいなバンドをやっているオバさんは私くらいですが、サザンが続く限り頑張ります!」と原由子(Key)。メンバーそれぞれの言葉にも、40年青春が続いているバンドの奇跡的な絆が伺える。

撮影=岸田哲平

 終盤は、一時たりともテンションを落とさずどんどん盛り上げていく展開だ。「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」から「匂艶(にじいろ) THE NIGHT CLUB」へと、桑田佳祐のショーマンシップが炸裂していく。会場中の手拍子がそれに応える。一曲一曲に、歌謡曲からJ−POPへと受け継がれてきた日本の大衆音楽のエッセンスが詰まっている。「HOTEL PACIFIC」ではセクシーな女性ダンサーたちが舞い踊る。そして本編ラストは「みんなのうた」。イントロの前には、ライブでお馴染みのOvertureをこの日のために用意されたスペシャルな歌詞で歌い、それがスクリーンに映し出された。

 <6月25日にデビューしたサザンオールスターズ みんなの応援があり ここに立っているのさ 美しい思い出も大切だけど 人生はこれからを夢見ることさ>

 まさに今のサザンオールスターズを象徴するような一節だった。彼らがポップ・ミュージックの第一線に居続ける理由は、常に「これから」を夢見ていること。ファンの人生と思い出の中に曲が残り、時代を経て数々の楽曲が日本のポップスのスタンダードになっても、しかしサザン自身は自らを更新し続ける。そういうバンドの今を強く感じさせた。

 アンコールに応え再び登場した彼らは、最後に「勝手にシンドバッド」を披露。ステージにはサンバダンサーが舞い踊り、キラキラと光るテープが舞い、メンバーとオーディエンス全員が「♪ラララ〜」と声をあわせる。ビジョンには40年前の映像が映し出され、過去と現在が狂騒の中で混じり合うようなクライマックスだ。

 サザンオールスターズは、8月1日に2枚組のプレミアムアルバム『海のOh, Yeah!!』をリリース、来春には全国ドーム&アリーナツアーの開催を発表している。アニバーサリーイヤーの熱狂はまだまだ始まったばかりだ。ワクワクするような一夜だった。

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