米SF映画『スター・ウォーズ』シリーズで屈指の人気を誇る、ハン・ソロの知られざる若き頃を描いた『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』がいよいよ明日29日に公開される。伝説の運び屋にして反乱同盟軍のヒーローとなったハン・ソロが、生涯の相棒、チューバッカや愛機、ミレニアム・ファルコン号といかにして出会い、いかにして愛すべき悪党<ハン・ソロ>になったのか、彼の原点が明かされる。シリーズへの関連性を緻密に組み込みながらも、単体でも十分に楽しめる作品になっている。監督を務めたのはロン・ハワード氏。『バックドラフト』や『ダ・ヴィンチ・コード』などで知られ、音楽ではザ・ビートルズの初期に迫ったドキュメンタリー映画の監督も務めている。今回、そのハワード監督に取材する機会を得た。本作については、70年代のロックンロールのバイブを入れたかったといい、ハン・ソロが初めてファルコンの操縦席に座ったシーンを、エリック・クラプトンが初めてギターを手にしたような瞬間だったとも例えた。音楽でもチャレンジがあったという本作。その舞台裏を聞いた。【取材=木村陽仁】

脚本に惹かれた

 撮影中に当初監督だったフィル・ロード氏とクリス・ミラー氏が降板。その後任を引き受けたのが、『スター・ウォーズ』の生みの親であるジョージ・ルーカス氏と古くからの友人で、信頼も厚いハワード氏だった。

――オファーを受けた時の心境は?

 もともと、『ウィロー』(1988年公開の米映画でハワード氏が監督)のテレビシリーズの話を、ルーカスフィルムとしたくて、キャスクリーン・ケネディと会っていたんです。『ウィロー』のキャラクターが大好きで、またテレビ用にぜひ作りたいなとずっと思っていた。そうしたら「実はこちらも話があるの」と『ハン・ソロ』の話をされました。「監督を代えるという判断をしました」、「他の監督の候補を探し始めています」と。でも僕は「候補としてどうかな、僕は入れないでね」と。だけど「脚本は読むよ」と言って。

 まず、確認したのは「絶対に監督を代えるんだという決断をしたのか」という点でした。というのは、どんな作品であれ、監督を途中で代えるのは作品にとって良いことでは絶対にないから。僕は、フィル(ロード)もクリス(ミラー)もリスペクトを凄くしているし。でも、そういう決断をしたということを確認して。それと、(ジョナサン・カスダン&ローレンス・カスダンが手掛けた)脚本がとにかく気に入ってしまったんですね。

ロン・ハワード監督とチューバッカ(撮影=堤博之)

 それと、運命的ともいえるような感じだったのはスケジュールがたまたま空いていたんです。もともとキャスクリーン・ケネディとも仕事をずっとしてみたいと思っていた。ずっと『スター・ウォーズ』の監督には興味があって。でも2、3年コミットするのはちょっと重いかなという気持ちも実はありました。もちろんジョージ(ルーカス)との長い友情もあり、結果的にはこのチャンスを取らなければ自分は後悔するだろうと考えて、そして、これをクリエティブなチャレンジと受け止め、イエスと言ったんです。

 この作品を作る経験は本当に楽しくて、クリエティブな意味でも凄く刺激的で、目から鱗というか。「こういうタイプの作品を作るというのは、なんてエキサイティングなんだろう!」と改めて感じたし、様々なイマジネーションは刺激を与えてくれたし、神話的な物語でもあるところも面白い。今回はキャストやスタッフとのコラボレーションを本当に楽しみました。誇らしく思っているのは、それぞれがプレッシャーのなかで成し遂げたことです。

足したかったのは70年代のロックンロールとカーアクション

――私たちが知っているハン・ソロになっていく、その過程をどうやって演出しようとしましたか? 劇中ではランド・カルリジアンの“相棒”でもあるL3-37(女性型ドロイド)が深手を負うシーンがありますが、そのあたりから(ハン・ソロを演じた)オールデン・エアエンライクがハン・ソロに見えて。

 僕にとってはその場面は、「自分は自己中心的な奴だから」と打ち出している彼が、実は勇気があって、高貴なノーブルさを持っているのを、チラッと見え始めた瞬間だったと思うんですよね。今まで隠していたんだけど、自分のなかにあるそれらが無視できないことに気づいてしまった瞬間でもあった。

 それと、彼のなかでは、ヒーローとして変化、進化していく道のりというのを、ファルコンを初めて操縦したタイミングで生まれたんだと思う。彼とマシンの関係、彼とチューバッカの関係が一つになり、ハンのなかの最高のヒーロー像がそこで立ち現れた瞬間なんだと。ちょっと人生と似ていますよね。誰でもそうだけど、沢山の試練を経験する、それは気持ちの面かもしれないし、肉体的な面かもしれない。何か危険なストレスを感じるような状況に直面すれば、それまでとは異なる違った人生を経験するわけだから。

 現代的な神話的な、プラス70年代のロックロールっぽいバイブを持たせたかったんです。だから、クラシカルなある種大人への成長の物語だと思っています。脚本段階でカスダン親子が、ハンがファルコンのパイロット席に座った時にダッシュボードを見て、スイッチをいじり始める、その姿は、エリック・クラプトンが夢のギターを手にしたような瞬間。あのシーンは脚本全体のスピリットでした。

ロン・ハワード監督(撮影=木村陽仁)

――エリック・クラプトンが名ギタリストならば、ハン・ソロも名パイロットというわけですね。

 そうだね。あとは実話ものなんだけど、自分が監督をした、F1を題材にした『ラッシュ』(2013年公開=ラッシュ/プライドと友情)との関係も強くって、この作品は、カリスマ性のある、クリス(ヘムズワース)が演じたジェームス・ハントという実在する英国のF1ドライバーの物語。プレッシャーを感じていた時に彼は、彼とぴったりのマシンと出会い、その年に、マシンと一体となりチャンピオンになりました。何かそこに近しいものを感じたんですよね。ハンとファルコンとの関係に。

 それと、ルーカスが受けたインスピレーションで得たのは、黒澤映画を通して解釈した日本文化なので、神話的な要素がそこにはあって。その影響を受けてエピソード4を作ったわけですから、名誉や誇りを大切する神話的な側面を含めて、それはアメリカの西部劇もそうですし『アーサー王の伝説』も。SFやコミックやポップカルチャーなども、そうした既にある『スター・ウォーズ』シリーズに僕が足したかったのは、70年代のカーアクションやロックンロールなんです。

 それと、この作品は、映画作りにおいてテクノロジーがいかにリアリティというものを則しながらできるようになっているかという良い例だと思います。今回はファルコンの窓の外の映像を見せる事ができた。以前はハイパースペースとか、星雲とか光のビームとか別のシーンを作らなければいけなかった。でも今回は窓に映すことができ、役者もそれを感じながら演技ができた。だから、グリーンバックでいかにSF物を作っているというよりも、皆がそういう環境に身を置いて宇宙を感じているという効果がありました。カメラマンやスタッフたちも感じていました、繋がりという意味ではその瞬間、飛んでいるような感じだったので、そのとき僕らもファルコンと一体化しました。

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