シンガーソングライターの吉澤嘉代子が6月16日と17日、東京国際フォーラム ホールCで単独公演『吉澤嘉代子の発表会』をおこなった。16日は「子供編」17日は「大人編」と趣を変えおこなうというもの。17日の「大人編」は「ケケケ」や13日にリリースされたシングル「ミューズ」などダブルアンコール含め全21曲を熱演。ラストは愛犬のウィンディとともに「23歳」を奏で、吉澤の歴史を垣間見れた公演の幕は閉じた。2日目の「大人編」の模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

愛犬のウィンディが登場

「大人編」のもよう(撮影=山川 哲矢)

 ステージ上は多くの楽器で埋め尽くされていた。今回は管楽器に加え、ストリングスカルテットも参加し総勢10人による大編成でのライブ。この楽器編成を見ているだけでも、これから始まるライブへの期待感は高まって行く。ホールならではの演出もワクワク感を増長させてくれる。

 会場が暗転し、バンドメンバーに続いて吉澤がステージに登場。まだ暗いステージ上でスカートの裾をつまみ上げ挨拶。カウントから始まったのは「綺麗」。シックな黒いドレスに身をまとった吉澤。そして、天井から吊るされた2つのミラーボールが回転し、キラキラと光に満ちた空間を作り出し、まさに綺麗と声をあげたくなるような世界を作りあげた。そこに流れるストリングスのダイナミックなサウンドが臨場感を高め、その上で歌う吉澤の歌声をより生き生きとさせた。

 吉澤が子供の頃に飼っていた愛犬のウィンディ(パペット)が登場し、吉澤がよく“一人発表会”を部屋でおこなっていたというエピソードから「ねえ中学生」、「腕に毛が生えている...」というセリフから80年代のダンスミュージックを彷彿させるファンキーな「ケケケ」と吉澤の音楽の振り幅を見せる展開。ブラスの効いたファンキーなサウンドに座っていた観客も立ちあがり、吉澤と同じ振り付けで楽しんだ。

 「月曜日戦争」ではブルーマンデーを吹き飛ばすかのように、バズーカ型クラッカーを客席へ向け発射した吉澤。「仕事も良いけどやっぱり恋したいなあ」と呟き、紐からハンカチへ変化させるパフォーマンスが目を惹いた「手品」、さして、トレードマークとも言える白いアコースティックギターを手に取り「化粧落とし」、「がらんどう」、「ジャイアンみたい」と立て続けに歌唱。しっとりと吉澤の表現力を堪能できたセクションであった。

 ストリングスやブラスによるスリリングな不協和音が感情を揺さぶりかけてくる。そして、吉澤はアコギからエレキギターに持ち替え、女性らしい突き抜けるようなシャウトがホールに響き渡った「ユートピア」。歌唱前に放った「わたしめちゃくちゃなの」というセリフを体現したかのようなナンバーだ。続いて、観客による手拍子が響いた「シーラカンス通り」では、エンディングでの楽器隊のアグレッシブな演奏が高揚感を煽る。

 「ちょっとちょうだい」では、グルーヴィな演奏に合わせイントロで華やかなに踊る吉澤の姿が印象的だった。続いて、<麻婆>のコールアンドレスポンスで盛り上がったファンキーな「麻婆」、加藤雄一郎 (Sax)との小芝居からスタートした「地獄タクシー」と違ったジャンルを吉澤色に染め上げパフォーマンス。

ダブルアンコールで「23歳」を披露

「大人編」のもよう(撮影=山川 哲矢)

 椅子に座り、物語を読むかのような歌声を聴かせてくれた「人魚」はギターとストリングスによる演奏で、そこに乗る吉澤の歌は叙情的に響いてきた。その世界観へさらに没入させたのは「ぶらんこ乗り」。異国の風を感じさせてくれる蚊のようなアレンジは鮮明に情景を映し出していた。エンディングでは星が瞬くようなライトがステージ上に輝く光景が広がった。

 ここで再び愛犬ウィンディが登場し、子供の頃の吉澤に託されたという手紙を読み上げる。そこには「大人になった私へ。誰かに会いたいのに、それが誰なのかわかりません。でも、本当はわかっています。ピカピカに輝く未来のあなたに会いたいのです。その時はどうか私を迎えに来てください」という言葉が手紙には綴られていた。届けられた曲は「一角獣」。ファンタジーの中にある吉澤の世界観は独創的。ドラマチックな歌と言葉で紡がれる。本編ラストは「ストッキング」。ステージ上のライトが盛大に輝くなか笑顔で歌う吉澤。その歌声と空間に引き込まれるかのように本編を終了し、ステージを後にした。

 アンコールでは、今回のライブのコンセプトを話す吉澤。15年前と15年後、13歳と28歳の自分をこの2日間で表現したという。吉澤の歴史を振り返るようなライブになったと話す。そして、この発表会からコンタクトレンズデビューしたことと、秋にアルバムのリリース、更に全国ツアーを開催することを発表した。

 盛りだくさんのMCからヒット曲「残ってる」を丁寧に歌い上げ、13日にリリースされたばかりの最新曲「ミューズ」を届ける。誰かにこのミューズという言葉を送りたいという思いで書き上げたという。<戦っている貴方はうつくしい>と、力強いサウンドをバックに歌い上げる吉澤。ラストは国際フォーラムのステージから見る景色が好きだと話し、「東京絶景」を披露。ステージから眺めるこの景色を噛みしめるように歌う姿に、観客も静かに耳を傾けていた。

 鳴り止まない手拍子。ダブルアンコールに応え再びステージに吉澤。もう一曲弾き語りで「23歳」を2年振りに届けた。愛犬ウィンディもトイピアノで参加するというスペシャルバージョン。そこに観客のクラップがのり、会場全体で一つの楽曲を紡ぎあげ『吉澤嘉代子の発表会』の幕は閉じた。

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