ヴァイオリニストの石川綾子が22日、東京・Hakuju Hallでコンサート『石川綾子ジャンルレスクラシックシリーズ2018 VOL2. シネマクラシック』をおこなった。5月から3カ月連続でおこなわれるジャンルレス公演で、映画音楽をテーマにこの日はシンガーのMay J.をコラボレーションゲストに招き共演。1部では「彼こそは海賊」や「シェルブールの雨傘」など石川とピアノの森丘ヒロキの2人で届け、2部ではMay J.と「Time to say goodbye」や「My Heart Will Go On」、さらにアンコールで「Let It Go」を披露し訪れた観客を魅了した。【取材=村上順一】

石川綾子「ワクワクした気持ちを大切にしたい」

石川綾子(撮影=片山拓)

 この日は夏がそこまで来ているのを感じさせる陽気。代々木公園からほど近いこのホールには多くの人々がこのスペシャルなコンサートへの期待感を胸に足を運ぶ。開演時刻になると明かりがゆっくりと落とされ、ステージだけがほのかに明かりが灯っている状態。そして、程なくして石川と森丘の2人が大きな拍手に迎えられステージに登場した。息を大きく吸い込み奏でられたのは『パイレーツ・オブ・カリビアン』より「彼こそは海賊」。勇敢な男たちが海に出て行く光景が思い浮かぶかのようなダイナミックな演奏、石川の端正な容姿からは想像が出来ない、力強さを感じさせる演奏に圧倒された。

 「心を込めて全力で演奏させていただきます」と宣言し届けたのは、ジブリ映画『天空の城ラピュタ』より「君をのせて」。甘く切ないメロディがホールに響き渡り、「彼こそは海賊」とは全く違った表情のヴァイオリンの音色を聴かせてくれた。さらに新たな表情をのぞかせたのは「オペラ座の怪人」だった。シリアスな旋律は会場にも独特な緊張感を与えてくれた。演奏終了後、石川の迫真の演奏に大きな拍手が飛び交った。「全てを使い果たしました」と投げかける彼女の笑顔も印象的であった。

 続いては「シェルブールの雨傘」。この楽曲はセリフが一切ない音楽のみで構成された同名のミュージカル曲で、その背景もあり「メロディ一つで思いを伝える」という類い稀なる力強い意思がこの楽曲からは感じ取れた。演奏する石川はこの楽曲の世界に入り込んだのか、どこか悲しそうな表情でヴァイオリンを奏で、その音で様々な感情を放つようだった。

 6月17日に誕生日を迎えた石川を観客とともにお祝い。石川は「大人になればなるほどワクワクした気持ちを大切にしたい」と今の心境を語り、「その気持ちを込めて次の曲をお届けします」と、優雅に伸びやかな音色を響かせた「銀河鉄道999」、心躍るようなイントロが心地よい「踊り明かそう(マイ・フェア・レディより)」では、ヴァイオリンとピアノが対話するかのようにストーリーを紡いでいくかのようだった。

 1部のラストを飾ったのは2つの要素を融合させた楽曲「Amadeus Fiction」。モーツァルトの交響曲第25番と『パルプフィクション』を融合した異種格闘技戦とも言えるかのような組み合わせ。そのスリリングな演奏は聞くものの耳を惹きつける。力強さと繊細さの両方を堪能させてくれた。

May J.「毎日毎日成長できるように頑張りたい」

石川綾子とMay J.(撮影=片山拓)

 2部ではサングラスをかけた森丘がステージに登場すると、そのあとをヴァイオリンを銃に見立て同じくサングラスを着用し真っ赤なドレスに身を包んだ石川がステージに登場。2人で「Mission Impossible」の音楽を奏で、小芝居を展開。そんなファニーな一面を見せながら、緊張感のある演奏で魅了した。そして、1曲の中で2つの感情を落とし込んだ「ポル・ウナ・カベサ」は、聴いた人のその時の心情によって響いてくる感覚が変わってくるドラマチックなタンゴのナンバー。タンゴのリズムの中で流れるようなヴァイオリンの旋律は、我々の感情を揺さぶりかける。

 ここでコラボレーションゲストのMay J.を招き、2人が初めて出会った時のことを語り合った。May J.は石川を「そのスイートな見た目と、力強い演奏のギャップに驚きました」と当時の印象を述べた。そのMay J.と一緒に届けたのは、ヴァイオリンとピアノ、そして、このホールという環境にぴったりの楽曲だというサラ・ブライトマンの「Time to say goodbye」。どこまでも滑らかで水のように体に浸透してくる歌声、そして、生命力に満ちた天まで届きそうなほどの透き通ったハイトーン。その歌を後押しするかのような石川の艶やかな音色のコラボレーションは、2人のヴォーカリストがいるかのような感覚をも味合わせてくれた。石川は「天使の歌声です」とMay J.の歌声を表現。May J.も「心地良かったです」とお互いを称え合った。

 そして、6月20日はMay J.の誕生日だったこともあり、「Happy Birthday」を演奏しお祝い。May J.は「人間的にも音楽的にも日々反省しながら、毎日毎日成長できるように頑張りたい」と述べた。続いて、7月25日にリリースされるMay J.のカバーアルバム『Cinema Song Covers』にも収録されている『タイタニック』の「My Heart Will Go On」を披露。心に語りかけてくるかのような歌、それに寄り添うかのようなヴァイオリンの相乗効果でクライマックスかのような空間を作り上げ、お互いのパフォーマンスを称え合う化のように2人はハグをし、May J.はステージを後にした。
 
 再びヴァイオリンとピアノでの演奏で届けらたのは「ひまわり-Loss of Love-」。東京・青山のFuture SEVENで先月おこなわれた『Astell&Kern presents 石川綾子ハイレゾヘッドフォンコンサート Powered by TASCAM』でも披露された1曲で、石川の叙情的な音色と旋律を存分に堪能できる楽曲。そして、ヨハン・パッヘルベルの「カノン」と「NEVER ENDING STORY」を融合させた「NEVER ENDING STORY meets CANON」でホールの隅々にまで届き渡るかのような爽快な演奏、2部のラストは観客との相愛を感じ得ずにはいられなかった「Can't Take My Eyes Off You」を届けた。観客の振り上げたタオル回しによって、ここはフェスやライブハウスかと見間違うかのような光景が広がった。石川もそれを見て満面の笑みを浮かべるなか2部を終了した。

 アンコールを求める観客の手拍子によって再びステージに石川と森丘が登場し、再びMay J.を呼び込み、3人でもう一曲、2人が最初に共演した思い出の楽曲「Let It Go」を届け、このコンサートを締めくくるのに相応しい1曲は、観客の手拍子とステージ上の3人の一体感が心地よくホールを包み込むなか、プレミアムな一夜の幕は閉じた。