1月のZepp Tokyoから幕を開けたBiSHの全国ツアー『BiSH pUBLic imAGE LiMiTEd TOUR』は4月21日・22日の中野サンプラザ公演を以って幕を閉じた。最後の地となった同公演は、2日間ともソールドアウト。3月に発売した最新シングル「PAiNT it BLACK」も、オリコンのウィークリーチャートで初の1位を獲得と、まさに今、BiSHに熱狂の追い風が吹いている。取材で足を運んだ4月22日の公演でも、会場には終始「熱狂の風」どころか、「熱狂の嵐」が吹き荒れていた。もちろん、その嵐なら誰もが大歓迎なのは言うまでもあるまい。では、興奮渦巻いたあの日に時計の針を戻そうか。【取材=長澤智典】

今宵も、互いに限界を超える嬉しい戦いになりそうだ。

BiSH(撮影=外林健太)

 会場が闇に包まれると同時にフロアー中から沸き上がった、メンバーを呼ぶ声、声、声。舞台前方にズラッと横一列に並べたスポットが、フロアへ向け徐々に光源を上げるのに合わせ、場内からも続々と雄叫びが飛び交いだした。

 ライブは、絶叫と共に幕を開けた。冒頭からBiSHは、濁流のようなカオスな音を叩きつけてきた。その流れへ飛び乗りながら、凶暴な牙を剥き出し襲いかかる。「SHARR」に触発され、最初からレッドゾーンまでテンションを一気に押し上げ、暴れ騒ぐ清掃員(観客)たち。今宵も、互いに限界を超える嬉しい戦いになりそうだ。

 歌始まりの「My distinction」でも、演奏が進むごとに、身体中に熱い高揚を覚えた。身体のみならず、その内側から沸き上がる衝動に、魂が嬉しく震えていた。熱い手拍子に乗せ、心も肉体も一気に開放するように響いたのが「オーケストラ」。気持ちを歓喜へ導くドラマチックな楽曲だ。会場中の清掃員たちが、拳を突き上げ「オーオーオーオオー」と叫んでいたのも納得だ。

 メンバー紹介に続き、ライブは次のブロックへ。ズンドコとリズムの跳ねる祭りナンバー「DA DANCE!!」に合わせ、メンバーも清掃員たちもモンキーダンスに興じてゆく。リズムに合わせ軽快にステップを踏むたびに、ドキドキ高揚した気持ちも一緒に弾みだす。
このまま、心開放する宴に興じるのもいい気分じゃないか…と思っていたところへ、「アガッていこうぜ!!」の声に合わせ叩きつけたのが、「SMACK baby SMACK」だ。ハイテンション/ハイスピードで炸裂するパンキッシュな楽曲に乗せ、メンバーも、清掃員たちも、熱狂のアクセルを勢い良く踏み込み騒ぎだした。

もっともっと熱くなりたい、もっともっと熱狂の中へ溺れたい。そんな興奮を重ねるように、「本当本気」が飛び出した。ソリッドでワイルドな楽曲が理性の留め金を壊し、気持ちを野生に戻してゆく。一心不乱に暴れていたいということだ。舞台上も客席も、互いに感情を剥き出しにぶつかりあっていた。その様が、最高に刺激的だ。

 BiSH流のロックンロールナンバーが炸裂。「BODiES」が、気持ちを熱狂へ突き上げる。感情の内側を…闇な心模様を吐き出すように、凄まじいロックンロールな楽曲が、病んだ気持ちを思いきりバーストさせていく。そんな熱した感情を光を持って包み込むように心の嘆きを抱きしめ、共に溶け合うように、それまでの熱狂を「JAM」が優しい光で包み込んでいった。

 MCコーナーでは、ツアーを振り返っているなか、沖縄で食べた美味しい料理の話で盛り上がるメンバーたち。ところが急に「あー、売れたい」と騒ぎだすハシヤスメ・アツコ。一人絶叫し続けるハシヤスメ・アツコを黙らせようと、リンリンが魔法によって彼女を猫に変えてしまう。猫になったハシヤスメ・アツコは大人しくなるが、彼女が猫のままではライブの続きが出来ないことから、誰かに猫を乗り移らせようと、客席最前列にいた男性を無理矢理巻き込み、猫に成りきらせ「ニャー」と叫ばせる場面も。清掃員たちを勝手に巻き込んでゆくところがBiSHらしさ!? しかも、一人の力ではハシヤスメ・アツコに憑りついた猫を移し変えるには不可能ということから、清掃員全員を猫に変えてゆくやり取りまで飛び出していた。この破天荒な展開もまた、BiSHのライブの面白さだ。

 次のブロックは、輝きを放つ「プロミスザスター」からの幕開けだ。とても開放的な楽曲。フロア内の人たちも、メンバーと一緒に大きく手を振り、ともに光の中で想いを分かち合っていく。続く「スパーク」では、メンバーらが二手に分かれ戯れるのに合わせ、客席でも同じ光景が広がっていた。
 「spare of despair」からはふたたび轟音のエンジンを轟かせ、猛々しい熱狂をBiSHは描き出した。激しく疾走しながらもメロウな歌を届けた「VOMiT SONG」でも、清掃員たちが大きく手を振りながら「オーオーオーオーオー」と熱唱。スカッと弾けたポップパンクナンバー「Here's looking for you,kid.」では、清掃員たちがモンキーダンスに興じながら、会場中にハッピーな空気を描き出していった。

 ファストコアな「GiANT KiLLERS」で生まれた絶叫の掛け合いや、清掃員たちによる合唱。場内に昂り出した熱気は、クライマックスへ向けてどんどん膨れ上がっていく。

 スクリームからの幕開け、アイリッシュな要素も組み込んだメタルコアナンバー「OTNK」で興奮を攪拌すれぱ、続く「MONSTERS」では、会場中の人たちがヘドバンや身体を思いきり前へ折り畳みながら暴れ続けていた。もちろん、メンバーたちも徹底した攻めの姿勢を見せていく。清掃員たちも、負けじと絶叫と熱狂をぶつけ、その戦いへ挑み続けていた。飛び跳ねる観客たちの勢いにより搖れる会場。いつしか中野サンプラザはカオスな空間に様変わっていた。

今は、BiSHと清掃員でしか作れないものこそが宝物になっています。

BiSH(撮影=外林健太)

 最後の曲へ入る前に、リンリン。とアユニ・Dが、こう語り出した。

 「一時期はBiSHと学校との両立が難しくて、悩み葛藤をする日々を過ごしてました。でも、大好きなハロプロの聖地である中野サンプラザでBiSHとしてライブが出来ることが決まり、それを励みにここまで走り続けてきました。今は、BiSHと清掃員でしか作れないものこそが宝物になっています」

 BiSHだから…BiSHと清掃員たちとの熱い繋がりがあるからこそ成し得ることや、叶えられる夢がある。メンバーたちはそれを強く実感している。リンリン。とアユニ・Dの言葉も、そう。きっと同じ気持ちを、メンバー全員が心に秘めているに違いない。

 最後は、これまでの熱狂をすべて全身で受け止め、両手いっぱいに包み込むよう「FOR HiM」を届けてくれた。とてもスケールあふれた楽曲だ。その歌へ触れている間、心地好い温もりを覚えていたのも事実。改めて、BiSHの持つ懐の深さと温かさを覚えたエンディングだった。

 アンコールは、シンフォニックハード/ダンスビートな「My landscape」でスタート。激しさを持って唸る楽曲に合わせ熱狂してゆくその風景は、新しい何かへと踏み出すようにビッグバンした様にも見えていた。なんて、凄まじい熱狂を生み出しながら、感情を嬉しく破壊してゆく楽曲だ。

 「BiSHはこれからも、世界を味方にしていきます」。そう宣言した後に飛び出したのが、最新ナンバーの「PAiNT it BLACK」。何もかも情熱と熱狂で塗り潰してしまえと言わんばかりに突き刺さる歌と演奏。そして…。「わたし達はわたし達の信じたものと一緒に走り続けます。これからも、あなた達の力でありますように」。

 セントチヒロ・チッチの言葉に続き、最後にBiSHは「BiSH-星が瞬く夜に-」を届けてくれた。心のわだかまりや嘆き、苦悩や葛藤などなど、すべてのネガティブな要素を飲み込み、ハッピーな気持ちへ様変えるように、BiSHは心を晴れな表情へと導く歌をプレゼントしてくれた。清掃員たちもヘドバンや身体を折り畳み激しく騒ぎながらも、気持ちを光へ導くようにアゲてゆく楽曲のパワーによって心は笑顔に満たされていた。

 終始、心や身体をはしゃがせながらも、改めて良質な楽曲へ魅了されたライブだった。何より、メンバーたちの全力で想いを燃やし続ける青春な姿に何度も嬉しくノックアウトされた。それでも、あの一体感を全身で感じ続けたくて、何度も立ち上がる…。次は、5月22日に横浜アリーナでおこなわれる『BiSH "TO THE END" 』だ。チケットは、早くもソールドアウトを記録している。

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