主演に女優の文音を迎えた映画『ばぁちゃんロード』が、14日より全国公開された。記者は、同映画並びに、『おみおくり』の舞台挨拶を取材してきた。特に、前者に至っては単独インタビューもおこなった。舞台挨拶はおおよそ、完成披露試写会から始まって公開初日あるいは大ヒット上映記念で一連の“キャンペーン”が終わる。これらを一貫してみたときに、作者あるいは出演者の姿が垣間見えることがある。文音については大らかな気持ちを支える宿命への挑戦心がうかがえた。

文音

小媒体のインタビューに応える文音(撮影=ヨコマキミヨ)

 この物語は、少女時代から祖母を慕う一人の女性と、老いを改めて実感し、生きる気力を欠いた祖母との2人が、結婚式のバージンロードを共に歩くという目標に向かう中で、かつての愛情と、生きる気力を取り戻していく様を描いたストーリー。

 共演に、ベテラン女優の草笛光子や、近年存在感を増しつつある三浦貴大らを迎え作られたこの作品は、昨年富山県・氷見市で撮影がおこなわれた。プライベートでも仲の良い付き合いをしているという草笛と文音の関係が、そのまま劇中でも情感たっぷりに表現されており、さらに主題歌、劇中歌として使用されている歌「この道」(唱歌 作曲:山田耕作、作詞:北原白秋)の持つ性質が程よくマッチし、ストーリーのポイントを鮮烈に浮き出している。

 この映画において、今回2度の舞台挨拶を取材した中でも印象的だったのが文音だった。インタビューのプロフィールにもある通り、芸能界でもよく知られた著名人を両親に持ち、いわゆる「二世タレント」という宿命を背負う女優の一人であるが、そこには敢えてその“運命”に挑戦しようとする、前向きな姿勢も感じられた。

三浦貴大・文音・草笛光子・篠原哲雄監督

 「二世タレント」という立場にある人は、基本的には公の場で親の名や親の話を出すことを避けたりする傾向がある。その理由は様々だが、“親の七光り”という言葉の裏に存在する束縛のようなものを抜け出し、自分の力でその道に進みたいという思いが、強いのではないだろうか。

 だが文音は、インタビューも含め特に親の話を避けようとする様子も見せなかった。ひょっとしたら、共演の三浦も同じく「二世タレント」ということで、気分的にはリラックスした雰囲気があったためでもあるかもしれない。しかし彼女が見せた姿勢には、逆に何者にも捕らわれずに躍進していきたいと願う、強い意志のようなものと同時に、大きな存在である両親に対する敬意のような思いも感じられた。

 文音自身のパーソナルな面に関しては、自身が長女である故か、インタビューで「人に甘える」のが苦手という性質を語っており、実直な性格がうかがえる。2年間のニューヨーク留学という実績も、そんな自身の思いの強さが見えるようでもある。この映画に先立って公開された映画『おみおくり』の舞台挨拶では、共演の高島礼子への尊敬心を語っていた一方で、同じく共演の渡部秀からは気遣いの場面があったことも明かされており、気配りも人一倍な印象だ。

「おみおくり」舞台挨拶では高島礼子との仲の良さがうかがえた

 実はインタビュー時に、映画のストーリーにちなみ結婚への思いなどをたずねると、その質問に笑顔で答えながら「ご結婚はされていますか? そちらはどうでしょう、どう考えられます?」などとこちらにフッと質問を返し、私自身が独身であることを見透かされたような気がして、心中で少し焦らされたという、クレバーさを感じさせるエピソードもある。

 『おみおくり』の舞台挨拶では、伊藤秀裕監督より「ちょっとドジ」などとイジられ、親しみやすさを感じさせた文音だが、そんな非常に明るい一面を持つ一方で、役者という仕事に意欲的で、とても礼儀正しく、さらに頭が切れるところもある。

 高島、草笛と、尊敬し気の合う共演者との作品は、素直な文音自身の表情が見えたところだが、今後続く作品の中では、どんな表情を見せてくれるだろうか? その意味では、とても素晴らしい器を持ち、今後自身ならではの個性、技量を発揮することに、今後期待したいと思える女優でもある。【桂 伸也】

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