ピコ太郎が見た海外と日本

ピコ太郎

——ちょうど海外の話もありましたが「PPAP」以降、海外に行かれて思った事はありますか?

 山ほどあります。古坂さんは「日本人は他の国の方と比べてダンスミュージックが特殊である」と言っていました。日本人はダンスミュージックを踊る為に流す。盆踊りとかでも。「踊ろう」という事で音楽をかけるんですよ。海外は流れているから踊る。「今からDJが音をかけますよ」という時にもう踊っていますからね。それはもう概念が違っている感じでした。

 あと、日本人は単一言語じゃないですか。だから言葉が繊細で深いんですよ。レベルが高い、というよりも深いそうです。ただ、アメリカに行くと多民族・多言語。笑いは「あるある」をズラす事によって起きる。合コンにダブルのスーツで来て「なんだよそれ」となる時の笑いは「そんな服で来る人はいないだろ」という「あるある」をズラしたもの。でもアメリカだと、そんな人が山ほどいる。上半身裸に革ジャンで来ても誰も笑わない。そうなると笑いの間口が広くなってしまいますよね。つまり「あるある」が難しくなってしまうんです。

 だから共通言語は「動き」とか「表情」になるんですよ。これは基本誰でも近いので。だから「PPAP」がどこでウケるかというと、日本だと「ペンパイナッポーアッポーペン」と言うところ。海外だとイントロの後で踊った瞬間、大爆笑します。あのリズムでこう踊る事が面白いんですね。日本では動きや表情の笑いってレベルが低い様に考えられがちですけど、海外ではそれがスタンダードだったりする。僕みたいなコミックな歌は世界的に凄いわかりやすくて、音もこだわっていればとんがっている人の耳にも入る。コミカルなので子どにも伝わって、そこにラッキーが重なったんですね。これも全部古坂さんから聞いた話なんですけど(笑)。

——言葉ではなく、動きの「あるある」をずらして笑いに繋がるという事ですか。

 そうみたいですね。あと日本だと「いくら稼ぎましたか?」と「どうやって思い付きましたか?」という質問が1番多いんですけど、海外だとまず「なぜその服を着てるんだい?」と訊かれます。つまり見た目なんです。色々な違和感が詰まっているみたいで、やはり見た目はすごく大きいんだなと。

——インタビューでも着眼点が違うんですね。

 あとお客さんも楽しもうとして来る感じがあります。楽しませてくれるんでしょ、と腕組んで見る様な感じではないですね。アジアでもそういう雰囲気はないですし、日本独特かもしれません。海外の人は「楽しみに来たよ!あと火を点けてくれさえすれば、俺らは勝手に爆発するから」という感じ。台湾も照れ屋な人が多いですけど、日本よりも盛り上がっていました(笑)。

 でも海外の方の日本リスペクトは激しいですよ。アニメやヴィジュアル系やアイドルなど、元々は海外から生まれたものが日本のフィルターを通すととんでもないものが生まれてくるという感じです。「オタクってどんな感じ?」と訊いたら「プロフェッサー」と言っていました。博士が科学のオタクじゃないかと。だからアニメの博士はオタク。

——アニメなどの日本文化も海外の人の方が高く評価している様な気がします。

 古坂さんの受け売りばかりですみませんが、最近は日本を讃える様な海外のニュースとかで喜ぶ人がいる反面、それに対して「海外に住んでるけど、日本人はそんなに好かれてないよ」みたいに不快に思う人もいるそうです。ただ僕が色々な場所に行ってみると、皆日本大好きですよ。というよりも、海外に興味があるんです。日本は海外に興味がないんですよね。それだけの違いだと思うんです。インドネシアの人はタイにも中国にもアメリカにも、アフリカにも興味があって知識もある。これはなぜかと古坂さんと考えていたんですけど、これも言語だなと。

 英語に小さい時から接している地域の人は勝手に海外に目が向いているんです。ネットでも日本人は英語のサイト見ないと思いますし。多分、自分の好きなアーティストも英語で検索しないですよね。普通に英語を話すような地域の人は全部のニュースが読めるわけですから、興味を持ちやすい。日本語だけで生活しているとそれが難しいのかなと。私もジャスティンインパクト以降、海外からのメールが沢山来て、全部コピペしてグーグル翻訳しましたから(笑)。でも、それで充分だと思うんですよ。だから「日本人は日本を見直すべき」というよりも「海外を見直すのが大事」と古坂さんが話してました。

——音楽もある種の言語だと思います。ガラパゴス化ともいわれる現在の日本の音楽についてはどうお考えですか?

 ちょっと、これも僕は詳しくないので古坂さんが話していた事でお答えしますね(笑)。これについては「売れる/売れないという事だと思う」と言っていました。僕たちは農耕民族ですから、他の地域を荒らさずに自分の畑を広くしていくという文化が残っていると思うんですよ。だから荒らす人を悪者にしがちなんですけど「反応や評判は全無視で良い。良いと思う物を着実に進めていくべき」というのが古坂さんの意見の様です。あとは日本だと1億しか人がいないけど、海外だと規模が全然違いますよね。

 南アフリカのヒップホップグループ、ダイ・アントワードも良い例ですよね。どの地域にいてもインターネットで知ってもらえる。チャンスはたくさんあるはずなので、曲げずにめげずに。しかも、きちんとクオリティを追及してやっていれば売れるかどうかは関係なく話題にはなると思います。ただ日本の技術は凄いと思うので、そこは自信をもって良いと思います。

 ただそこで大事なのは「愛」だと思うんです。愛というのは、礼儀、尊敬、友人とかそういうものだと。私がミュージックビデオを出しましたと発信したら、古坂さんの知り合いが拡散してくれました。AAAだったり、LiSAだったり、AKBの梅田彩佳ちゃんだったり、何十万人もフォロワーがいる人がリツイートしてくれて。このおかげで日本の女子中学生が真似して、それがYouTubeに流れて、アジアに伝わって、アメリカでジャスティン・ビーバーまで届いたという感じだと思うので。

——ピコ太郎さんはエゴサーチがお上手の様ですが、愛のない反応に困る事はありませんか。

 ちょうどさっき古坂さんとそういう話をしていたところでした。私は気にしないですけど、古坂さんのところにばんばんそういう反応が来るそうです(笑)。特にTwitterですよね。ツイッターでフォロワー100万の人と、フォロワー20の人の気持ちを考えるとわかりやすいと思います。20の人はテレビの前で「つまんねえな」「かわいくねえな」と言っている心境なんですよ。でも100万人となると、そうはいかない。全校集会で壇上から話す言葉って違うじゃないですか。それが一緒になってしまっているんです。

 だから古坂さんは酔っ払いの人のいう事を真に受けないで、誰が何を喋ったかを気にしているらしいですよ。それで見極めて気難しい人はミュートするそうです(笑)。確かに飲み屋で「おいクズ」と言ってくる酔っ払いと一緒に飲んだりはできませんから。「違う店行こうぜ」になりますもんね。あれはミュートですから。だから顔が見えていないだけで、インターネットと実社会は同じルールで良いと思いますと。ブロックではなくミュートです。あれは良い機能ですね。今は過渡期なので、段々と文化が熟成していくのではないかとも話してました。

(おわり)

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