元キリンジで、シンガー・ソングライターの堀込泰行が3月25日に、東京・日本橋の三井ホールでソロライブ『YASUYUKI HORIGOME Live Vibration Vol.1』をおこなった。2017年11月に発売した最新EP『GOOD VIBRATIONS』の発売に伴いおこなわれたもの。ライブでは、堀込の持ち曲に『GOOD VIBRATIONS』の楽曲、そして現在制作中のアルバムに向けたという新曲を加えたセットで16曲を披露。さらに、今回はEP制作にも参加したWONKがオープニングアクトとして登場し、EPで作り上げた新鮮な世界観をさらに味わい深いものとした。【取材=桂 伸也】

インパクトを残したWONK

 『GOOD VIBRATIONS』は、堀込が自身と“全然違う”音楽性のアーティストを集めてコラボレーションし作られたもので、D.A.N.、tofubeats、□□□(クチロロ)、シャムキャッツ、WONK、THE NEW SHOESといったグループが集結。堀込の持つ世界観を大胆に打ち崩し、斬新な世界観を再構築している。

WONK(Photo by 立脇卓)

 会場は定刻を迎えると暗転、静まり返る場内。やがてステージの上には、WONKのボーカリスト・長塚健斗を除いた3人のメンバーと、サポートメンバーでギター、サックスプレーヤーの安藤康平が、拍手に迎えられ登場した。かと思うと、突然バスドラを強く連打する音が会場に響く。意表を突いたそのプレーはやがてドラムソロに変化、さらにキーボートのコードが絡み、続いてベース、ギターがそのセッションに加わっていくと、その音は一つの曲のアウトラインを描き始める。

 そして最後に長塚がステージに登場し、WONKのステージはスタートした。16ビートを基本としたサウンドの中で、ソウルフルな長塚のボーカルがサウンドを曲として成立させる。一癖もふた癖もある荒田光のドラムのリズムや、安藤の艶やかなサックスの音に合わせて、ジャジーなインタープレーが随所に飛び出たりと、クリエイティブなステージが進行。たった6曲の演奏ながら大きなインパクトを観客に与えた。

 そしてWONKの面々が去ってしばしの転換の時間が過ぎると、次は堀込の出番だ。WONKの時と同様、入場のSEなど無い、静まり返った会場で、サポートメンバーに続き最後にステージに登場した堀込に、観客は惜しみない拍手を向ける。そして堀込は、背後のドラマーへの合図とともに、tofubeatsとの共作曲「THE FLY」でステージを始めた。

 序盤はキリンジの楽曲「カメレオンガール」を交えながら、『GOOD VIBRATIONS』の楽曲を中心に構成されたこの日のステージ。ハーモニーに様々なテイストを加えたり、バラエティに富んだ構成を見せたりするなど、どの楽曲もそれぞれが堀込の歌を土台としながらも、新鮮で明確な個性をしっかりと主張する。

 それはキリンジの楽曲として、1曲だけ差し込まれた「カメレオンガール」が、堀込のスタイルとしては一番イメージしやすいものとしてそこに存在したからこそ、そう感じられたのかもしれない。新たなカラーの楽曲は、クリアーな堀込の歌の印象を違うものに変え、観客の聴覚に訴える。それを深く感じたのか、観客は席を立とうとするでもなく、ただ彼の歌とステージのプレーに引き込まれ、聴き入っていた。

「現在までのもの」から「新たなもの」へ

 中盤は、これまでの堀込のライブでも度々演奏されているアルバム未収録曲「ファイヤーバード」と、2009年に「馬の骨」名義で発表したソロでの楽曲「クモと蝶」に続き、堀込が「現在制作中」と明かす、ニューアルバムに収録予定という新曲を2曲披露。これらの楽曲も16ビートのグルーヴをベースとする中で、様々なサウンドの色彩感を入れ込むことを試みた様子がうかがえるもので、観客は興味深くそのサウンドに耳を傾けていた。

堀込泰行のステージ(Photo by 立脇卓)

 そしてステージ終盤、「さよならテディベア」からラストスパートの時を迎えた。ここからは『GOOD VIBRATIONS』収録の、シャムキャッツとの共作「Beautiful Dreamer」を加えながらも、堀込のソロ名義のアルバム『One』からの楽曲を中心に披露された。「ここからはノリのいい曲を」という堀込の言葉で、終盤はここまでの展開から一転、リズムは8ビートへ変わり、ポップで明るい雰囲気の楽曲が続く。

 観客も喜びながら、手拍子でそのノリに追従していた。その印象は、堀込の一番得意なスタイルであり、聴く側としても耳に残りやすいものだった。逆にそれゆえに『GOOD VIBRATIONS』で、新たなスタイルを追求するためのきっかけを作った、そんな堀込の、制作に対する貪欲な姿勢が、このセットの流れではっきりと明示されたようでもあった。

 ラストには「ブランニュー・ソング」を披露し、盛大な盛り上がりを見せるステージを降りた堀込。そしてしばしの間に鳴り止まないアンコールが続くと、ステージの転換の後に再びWONKのメンバー、続いて堀込が登場。楽器隊の奏でる静かなワルツに乗せて、堀込が「GOOD VIBRATIONS」でWONKと共作をした「Dependent Dreamers」を歌い始める。そして曲のフックを通過すると、WONKのボーカリスト・長塚もステージに登場。デュオによる味わい深いハーモニーを最後に響かせ、観客をいつまでもその余韻に浸らせていた。

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