4人組ロックバンドのココロオークションが28日に、メジャー1stフルアルバム『Musical』をリリース。16年4月にメジャーデビューし、昨年は夏の短編小説シリーズの4作目となるミニアルバム『夏の夜の夢』など、物語を感じさせる作品を発表して来た彼ら。フルアルバムで提示したのは“音楽そのもの”だった。“音”からいかにして“音楽”にするか話し合いを重ね、一つの作品を作り上げたという。表題曲である「musical」はバンド史上最長で8分を超える大作となった。今作についてメンバーは「歌の後ろに景色があって欲しかった」と話す。新譜について彼らが込めた想い、音楽とどう向き合ったのか、4人に話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=片山 拓】

ココロオークションの使命

――1stアルバム『Musical』が完成されましたが、今の心境はいかがですか。

粟子真行

テンメイ とにかく時間がかかった作品です。表現をするために色んなことを悩んで、考えて、音楽と向き合っていかないといけないと思いました。苦労したからこそ、みんなで意識して完成したことが嬉しかったです。

大野裕司 フルアルバムだから集大成にしようということは全くなかったです。むしろ新しい軸を見せたいと思いました。同時に、音楽を作るスタンスや曲作りの技術がようやく上手く噛み合いだして形になったという実感があります。このタイミングでフルアルバムをパッケージできたことは本当に良かったと思います。

粟子真行 「やっと出来たな」という感じでした。嬉しかったし、何より音楽と真剣に向き合うことで出来た作品です。自分にとっても新しいドアをたくさん開いてくれて、成長させてくれた大事な作品になりました。

井川聡 今作は今まで僕らが活動してきた中で養ってきた技術、感性が一音一音に詰め込められた作品です。だいぶ拘った作品になりました。

――録音はタイトなスケジュールで?

大野裕司 期間的にはタイトではなかったです。むしろ時間はあって、その中で密にやったというタイトさはありました。制作・構想にとりかかったのは昨年の10月末くらいで、既存曲でも古くからデモ音源はあったんです。ミニアルバムを出しながらも、ストックしていった格好良いと思うものを詰め合わせて。アルバムのために全て曲を揃えたというよりは、今ある一番良い曲を並べました。サウンドは確実に新しいです。

――今作のテーマは“音”から“音楽”にするということで、この考え方に非常に興味があります。

大野裕司 今はその話をメンバーとスタジオでずっとしています。「音楽であるために必要なものは、結局何なのか」その根幹に辿り着くには凄く時間がかかったんです。“Musical”という構想になったということもあるんですけど、ある程度は個々のパートや音楽に対して、少しずつ確実に一歩踏み込めたという実感があります。

――音楽にするためには何が必要ですか?

テンメイ みんなで共通してやろうと決めたことがあるんです。音楽として成立するのには、まずリズムとメロディとハーモニーということで。

――その3点の基本があるのですね。

大野裕司 感覚的に言うと、「それさえあれば音楽である」という感じです。それがないと音楽ではないか、というところは正直あまり考えていなくて、自分が鳴らした音に対して、今のはどうだったのかと考えるときに必要なのが、リズムとメロディとハーモニーだったりと、そういう解釈です。その3つに関しては、音楽の真理を見た人が作った言葉だと思うんです。本当にその通りだなと思うことがあります。

――アルバム制作にあたって大変だったことは?

テンメイ デモを持ってきてもらった段階で、音色がたくさん入っていました。その中で自分のギターの立ち位置というか「これは考えないといけないな」と思いました。自分のプレイスタイルや音楽表現の仕方など、全てを見直した上で制作に取り組みました。実際に、自分のギターがどれだけこの曲に溶け込むか、どういう出し方をすれば良いかということは常に考えていました。

――意識が一歩進んだ?

テンメイ まるっと変わったくらいの勢いです。みんなと話し合ったことありきという感じで、自分だけでは気付けないことが凄く多いので。去年1年間はだいぶ話し合いました。

大野裕司 やはり真理に近いことは絶対に嘘ではないので、それを経て自分で考える時間が大事なのかなと。本当に気付きを得た瞬間というのは確実に落ち込むと思うんです。「できていなかった自分」を知ることになるので。

――なるほど。

大野裕司 そういう点では決して楽しい作業ではないと思いますし、真に迫っているという根本的な達成感はもちろんあるんですけど、やはりつきまとうのは挫折、後悔であったり。そういうワードもあります。

――今回、作曲面ではいかがでしたか?

大野裕司 僕はトラックを作るだけなので、メロディと歌詞はいつも通り粟子さんに投げて。サウンドのテーマ的に言うと、景色が見える音、感じられる音は、ココロオークションの今までのサウンド感であったりという武器が個性としてありました。でも結局はメロディと歌詞を聴きたいし、それがポップスのあるべき姿だと思うんです。その中でどういうサウンドにするのかというときに、「景色が見えるね」くらいじゃ全然足りないなと思いました。

 それはサウンドの奥に何かを感じる2次的なものなので、音そのものが景色になっていないと。歌・音・景色と、3つ出来てしまうことになるので。歌の後ろに景色があって欲しかったから、そのためには景色と音を同じものにするくらいにする音の精度、景色感、もっともっと研ぎ澄ませないと駄目なんだなと思いました。そういう意識を持って制作をしました。

――簡単なことではないですよね。メロディ、言葉に関しては粟子さんいかがでしたか?

粟子真行 もらったデモが全部壮大だったんです。それに見合う言葉を探すのが大変でした。

――『Musical』というタイトルは最初の段階で出てきていたのでしょうか?

粟子真行 レコーディングの途中くらいです。

――「Musical」はデモの段階から8分もある曲だった?

大野裕司 実はもっと長かったです。最初は9分超えてました。結果的にちょっと短くなったんです。

――皆さん9分のデモを渡されたとき、どう思いましたか?

粟子真行 素直に「長い」と思いました(笑)。

――ですよね(笑)。更に長い楽曲を作る予定は?

大野裕司 これくらい長い曲ができるということはわかったので、やってもいいんですけど(笑)。構想的には全然アリだと思います。音楽的であるという根本に、構成や長さというのは関係ないんじゃないかという風に思っていまして、それでこの曲の構想に入ったということもあります。普通のポップスの構成に違和感を感じたときもあったので。

――AメロBメロ、サビがあって4〜5分の曲。という感じ?

大野裕司 それが美しいものであるとは思うんですけど…。Bメロは次にサビが来て欲しいメロディやリズムであって欲しいと、聴いていて思うんです。でも、それが音楽である絶対に必要な条件であるかというと、きっとそうじゃないなと思います。「音楽的であること」が何かを探すひとつの方法としては、「今これが必要なんじゃないか」と思うことを、どんどん否定していくことだと思うんです。

――もはやプログレですよね。

大野裕司 よくぞ言ってくれました(笑)。

粟子真行 メロディがとにかく多くて、「Aメロ、Bメロ」で言うところの「Hメロ」まであるんです。それは大変でしたね。楽しかったですけど。歌詞に関しては任されていて、前回の『夏の夜の夢』のときに、僕が歌う意味とか、ココロオークションの使命みたいなものが何となく見えてきて、それは「君が大切にしなければいけない今はもう始まっているよ」ということなんですけど、「線香花火」や「蝉時雨」にも言えるようなテーマをみんなに伝えるためにココロオークションがあるのかなと理解した部分が大きかったんです。それをもとに、今回の『Musical』ではほとんどが「今を大切に生きること」を歌っています。

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