子供が見ていたのに、いつの間にか親が夢中になっていることがある。小生もその親の一人だ。先日、横山だいすけさんに話を聞く機会があった。横山さんは、9年間にわたり、NHK Eテレの『おかあさんといっしょ』でうたのお兄さんを務めた。

 音楽と向き合い、そして子供と向き合ってきた横山さんに聞きたいことがあった。「音楽の役割とは何か」。その質問に横山さんはこう答えた。

 「元気がなくても、悩みがあったとしても、すべての感情というものが、音楽で変えられるという凄い力があるなと思います。親御さんから良く聞くのは、初めての育児とかいろんな悩みがあるなかで、最初は子供に見せていたものが、自分自身も気が付いたら“この歌好きかも”と、“あ! この歌元気もらえるかも”と親御さんが元気をもらうこともあるようです。音楽というものはそういうエネルギーを持っている素敵なものだなといつも思います。歌っている自分自身も力がもらえます」

 「親御さんから良く聞く」という言葉から横山さんの真摯な姿勢がうかがいしれたが、親をも「元気にする」音楽というエネルギーを「素敵なもの」と表現していることが印象的だった。そして、「初めての育児とかいろんな悩みがある」という言葉から、横山さんは日頃から、子供だけでなく親の環境をも考えながら取り組まれているのだろうと感じられた。

 さて、子供から親に波及する音楽の力。子供向け番組の音楽に携わるスタッフに話を聞いたことがある。その子供向け番組で生まれたアイドルグループが親子を巻き込んで人気を集めていた。その人は、その要因の一つに「親にも共感する歌」を挙げて「子供が理解できる言葉を使い、子供から大人までが共感できる歌詞は、大きな魅力のひとつだと思います」と語っていた。

 音楽、そして、歌詞には不思議な力がある。短いセンテンスだからこそ、表現が抽象的になることもあるが、それはかえっていろいろな捉え方ができる。人によっては、夢への後押しに感じるかもしれないし、恋愛の後押しに感じるかもしれない。それこそ育児する親に元気を与えるものかもしれない。そして、メロディやサウンドの効果も大きい。子供から親に波及する流れは、歌詞のなかにそうした要素が含まれているのだろう。

 音楽は、その人の人生や価値観、今心を支配しているものにも左右される。音楽はつくづく、変幻自在、解釈自由な、その人に寄り添い、力を与える不思議な力をもったものであることを感じさせる。【木村陽仁】

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