2016年のデビュー以降、その小柄な体からは想像できないパワフルな歌声と、メッセージ性の高い楽曲が魅力のシンガーソングライター・NakamuraEmi。3月21日に約1年振りとなるニューアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5』をリリースする。生きていくなかで感じたことを、楽曲に落とし込む彼女の今作のテーマはコミュニケーションだという。インターネットやSNSなどの急速な普及もあり、この現代社会においてその存在意義が問われている事柄でもある。昨年は全国ツアーをおこなったほか、朝日新聞のラジオCMソング「新聞」を書き下ろしたり、2017年も様々な経験を積んできた彼女が今思うコミュニケーションとは何なのか。楽曲に込められた想いとともに話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】

テーマはコミュニケーション

――ついに3枚目のアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5』がリリースされます。制作はいつ頃から開始されたのでしょうか。

NakamuraEmi

 「N」という曲は6月にパラアスリートの中西麻耶選手に会わせて頂いて書いたり、朝日新聞さんのラジオCMソングになった「新聞」という曲は夏あたりに書いてました。他の曲をギュっと集めてやりだしたのは去年の11月あたりからです。

――アルバムタイトルが基本的にナンバリングですが、そこにテーマとなる裏タイトルがあったりするのでしょうか?

 作る前には全くないんです。思った通りに作って、出来たときにみると今回は“コミュニケーション”というテーマが浮かびました。この1年で感じたことを新たに曲にして全部並べたときに「ああ、こういうアルバムが出来るんだな」という感じがあります。人間臭いものが集まったなと思うと同時に、今私はこういうことが書きたかったんだなと。

――ちなみに『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4』は?

 “光”です。デビューして色んな人の光を当ててもらって、初めて色んな光を見て作ることができた曲が集まったからです。あとメジャーデビュー作『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST』は、“自己紹介”です。

――あとからテーマが見えてくるんですね。さて、昨年リリースされた「Don’ t(Album mix)」(TVアニメ『笑ゥせぇるすまんNEW』オープニングテーマ)はミックスをし直したものですが、どの辺が大きく変わりましたか?

 凄くわかりやすく違うのは、途中でアニメの主人公の喪黒(福造)さんの声が入っているんです。普通はシングルでそういうことをやるものだと思うんですけど(笑)。実はシングルの発売日のときにサプライズで喪黒さんの声で「NakamuraEmiさん発売おめでとうございます」というコメントをライブでスタッフさんがかけてくれまして。

 喪黒さんがNakamuraEmi宛に作ってくれたメッセージが私達の中に残っているので、その頂いたメッセージから「何か今回入れたいね」というのがあったので、その言葉を入れさせてもらいました。「ありがとうございました」という感謝も込めて。

――スペシャルなものに仕上がりましたね。

 そうですね。『笑ゥせぇるすまんNEW』のチームのみなさまと凄く良い感じになれたので、だからこそ、サプライズもして頂けたというのがあると思うし嬉しかったんです。ただの「オ〜ホッホッホ」じゃなくて、私に対して作ってくださったコメントをアルバムにはのせようとなって、“コミュニケーション”が入れられたというか。

――その「Don’ t」を1曲目にした意図は?

 もう全員一致だったんですよね。喪黒さんが「のしっ、のしっ」って歩く感じとかが、少し今の自分に合っているというのもあって。ジャケット自体も色んな意図があって真っ黒なんです。そのイメージからポンっと1曲目に浮かんだのがやっぱり「Don’ t」だったりしたので。

――ジャケットをモノクロにしたその想いとはどんなものだったのでしょうか。

 いつもデザインをしてくれる人と色々話したんですけど、現在は凄く便利な世の中で、ちょっと昔って不便だったけど、不便な分、待ち合わせは信頼関係でしかできないとか、遅刻したら電話できなかったり。そういうひとつ一つがコミュニケーションでできたから、そういうものを今回のアルバムでは大事にしたいというのがありました。

 ちょっと昔のイメージということで、白黒写真みたいなモノクロのイメージと、それが「新聞」という曲にも込められています。新聞ということで白黒っぽくして。ポスターやチラシも新聞テイストで作らせてもらっていて。

――その「新聞」は今までとは変わった切り口の歌詞だという印象を受けました。曲を聴いて、忘れかけていたことを思い出しました。

 いつもライブのときに「NIPPONNO ONNATOOTOKONO PAPER」という新聞を作っていて、ただのチラシというよりは、メッセージ、日記みたいなものを書いて、それをみんなに持って帰ってもらっています。紙が古くなる感じとか、自分がファイリングしてとっておくって、何か凄く思い入れがあるじゃないですか? そういうものを作りたいなと思って、新聞を自分で作っていて。

 触ったり、紙を感じたり、書いたり、そういうのってどんどん減っているんだなと、自分で作りながら思っていて、だから、そのテーマというのはノートに残っていたんです。そのときにたまたま朝日新聞さんから「CMソングを作って頂けませんか?」というお話を頂いて。正に新聞というテーマは気になっていたところなので、それでまとまった曲でしたね。

――この曲の中に出てくる言葉は10代の方は「何のことだろう?」と思ってしまうかもしれませんね。

 「掲示板?」みたいな感じでしょうね(笑)。

――それで知ってネットで調べて、色々な気付きになるかもしれないですよね。

 話したりとか、何か言葉で伝えることは大事だなと改めて最近思いますね。

――ケータイ電話がなかった頃を思い出す内容ですが、Emiさんはスマホはよく使いますか?

 凄く使います! スマホは欠かせない生活になってきていて、これからも機械やロボット化が進むのはおそらく止められないですから。すでに「固定電話って何ですか?」とそれが何の機械かわからない若い方もいるみたいなんです。固定電話をとってどうやって上司に繋げばいいかわからないというのを聞いたことがあって…。

――私も聞いたことあります。時代ですよね。

 でもそれって大人がそうさせてしまったから、若い方には何の罪もないんですよね。ケータイがあってあたりまえですし、「大人が与えた環境だから」という状況だと思うので、そこに人間関係の「会って話す」というのは、面倒かもしれないけど、大事だということを伝えられるのは人間しかいないと思います。

――我々の責任も大きいですよね。これから伝えるべきことがたくさんあると思います。例えばレコードのかけ方もわからない人もいるでしょうし。

 そうですよね。まずは針を落とすところからですよね(笑)。

記事タグ