社会をユーモアに風刺した楽曲で人気を集めたフォークユニット・藤岡藤巻が2月23日に、東京・青山のライブハウス「月見ル君想フ」で7年ぶりにワンマンライブ『藤岡藤巻ライブ2018 ~冬眠から目覚めたら冬だった~』をおこなう。一般企業に務めながら音楽活動をおこなっていた彼ら。なぜ7年ぶりにワンマンをおこなおうと思ったのか。そこには定年退職後の人たちに伝えたいことがあった。

 藤岡藤巻と言えば、大橋のぞみさんと歌った映画『崖の上のポニョ』の同名主題歌(2007年)を思い出す人も多いだろう。<ポーニョ ポーニョ ポニョ さかなの子>という可愛らしい歌詞で当時子供中心に人気を集めたが、藤岡藤巻自身は社会風刺した楽曲で中高年に人気を集める。

 例えば、バレンタインデーにチョコがもらえない寂しさを代弁した「死ね!バレンタイン・デー」や、定年退職者の目線で会社を皮肉った「贈られる言葉」、社会の現実を書いた「息子よ」に至っては「人生は河なんかじゃない、沼だ」といった調子だ。歯に衣を着せぬユーモラスな歌詞は痛快で、世のオジサンたちは思わず「うんうん」と頷きたくなる楽曲だ。

 藤岡藤巻は、藤岡孝章さんと藤巻直哉さんからなるユニットで、藤岡さんは大手レコード会社で、藤巻さんは大手広告代理店に務めながら音楽活動をしていた。その両名は御年65歳。会社も定年退職し「同世代に届けられるものはないか」ということで7年ぶりにワンマンライブをおこなうことを決めた。なぜだろうか。ライブの模様はSHOWROOMでも生配信されることが決定し、ますます意欲を高める2人。東京・大森のライブハウス「風に吹かれて」でリハーサル中のところ、話を聞いた。

定年退職後の楽しみとして

――復活ライブということで宜しいでしょうか。

藤巻直哉 7年ぐらいやっていなかったので、復活なのか復活ではないのか、ただやっていなかっただけというところですかね。きっかけは、後輩に、ブリーフ&トランクスというバンドがいるんですが、メンバーの伊藤(多賀之)君に、1回一緒にやってくれと言われて。いわゆる対バンというやつですね。それで久々にやってみたんです。長い時間の出演ではなかったけど、案外ウケたので、じゃあワンマンライブをやってみようかということでやることになりました。

藤岡藤巻

リハーサルのもよう。「風に吹かれて」にて

――このご時世に伝えたいものがあったのでしょうか。

藤巻直哉 このご時世に、というのはないけど。僕らは65歳で。2人ともサラリーマンでしたが、僕は定年まで勤めあげて、60歳になると会社からは戦力外通告をされるわけですよ。でもね、戦力外通告を受けたその日からいきなりガクっとくるわけじゃない。あまり変わらないわけですよ、体力的にも。少しはボケているかもしれないけどね。

 僕たちの先輩の姿を見ても、ボランティアや町内会の行事に参加している、という話しか聞かなくて。先輩に電話しても「サンデー毎日なんだよ」とか。人によっては「全日空だよ」とかね。全日、空いているよという意味なんだけどね。なんかそれもどうなのかな、つまらなくないかな、とかね。まあ平均寿命がだいたい80歳というと、国は今ね100歳まで生かそうという政策もあるそうですけど、100歳まで生きるとしたら、60年定年だと、それまで40年あるわけじゃないですか。先ほどの平均寿命80歳と考えても20年はある。その間を僕ら同世代達に「楽しいことやってみない?」という感じの、呼びかけをしてみたいなとふと思ったんですね。

 サラリーマンをやっている時から僕らは音楽をやっているんですよ。でもその時は、皆が麻雀やゴルフをやっているのと同じような感覚もありました。

 若くして出世した僕らの同期はたくさんいたんですけど、そういう連中に限って早くにへたってしまってダメになっちゃっているんですよ。僕は同期で最後に部長になったんですけど、当時、藤岡君は秋元康さんと仲良くしていてね。その時に「そういうのを『海の杭』って言うんだよね」と言われて、「どういう意味?」と聞いたら、海が満ちている時は目立たないんだけど、引き潮で海が引いたら杭が一本だけ立っているから、そういう事を指しているって。俺が部長になっちゃったときも「え? 俺…」みたいな。

 満ちている時は目立たなくて、全然どこにいるか分からないんだけど、引いたら1本だけ立っている。「そういうのを『海の杭』って言うんだよね」と。「うまいことを言うな~」と思って。さらに「本当、藤巻さんは不戦勝の人生だよね」とも言われて。


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