オリジナル・アルバム『夜、カルメンの詩集』の発売を2月28日に控えている清春が2月9日、自身の故郷である岐阜で『KIYOHARU 25 TIMES DEBUT DAY』と銘打った公演をおこなった。そのタイトル自体が示す通り、この日は彼にとって25回目のデビュー記念日。1994年に黒夢がメジャー・デビューを果たしたその日から、満24年を経たことになる。

 公演会場となったclub Gには地元はもとより全国各地から熱心なファンが集結し、チケットは完全にソールドアウト。カリスマの登場を待ち焦がれるオーディエンスの前にまず姿を見せたのは、何故かWエンジンのチャンカワイ。実はこの日、彼は清春とともに某TV番組の収録をおこなっており、開演に先がけて異例の“前説”を担当することになったのだった。観客はそうした想定外の展開にも臨機応変な好反応を示し、清春自身の登場を前に場内は充分すぎるほどに温まっていた。

 改めて場内が暗転し、オープニングSEに導かれて黒衣に身を包んだメンバーたちが配置につく。清春がステージ中央へと進み出ると、まず聴こえてきたのはフラメンコ・ギターの響き。記念すべき祝宴の幕開けを飾ったのは『夜、カルメンの詩集』に収録されている「赤の永遠」だった。この日、彼の脇を固めていたのは、ファンにはお馴染みの中村佳嗣(g)、大橋英之(g)、楠瀬拓哉(ds)に加え、この日が初出演となる高井淳(b)という顔ぶれ。つまり過去には一度もなかった布陣ということになるが、当然ながら演奏面での危うさは微塵もない。緩急豊かな楽曲群が、アコースティックとエレクトリック・ギターのコンビネーションを自在に変えながら、次々と表情豊かに繰り出されていく。

 この夜の演奏曲目については別掲のセットリストをご参照いただきたいところだが、何よりも特筆すべきは、アンコール時に披露された、言わずと知れた黒夢のメジャー・デビュー曲“for dear”から、まだ世に出ていない新作アルバムの収録曲に至るまで、まさに24年にも及ぶ時間経過のなかで生まれてきた多種多様の楽曲たちが、少しも違和感なく溶け合い、ごく自然に共存しながらお互いを照らし合っていたということだ。その事実は、清春という歌い手がいかなるジャンル感の楽曲であろうと自分の色に染めてしまえること、そしてさまざまな音楽的変遷を経てきた彼の表現スタイルの本質は不変であるということを裏付けていたといえる。『夜、カルメンの詩集』には「美学」というそのものズバリの表題が掲げられたナンバーが収められており、同楽曲はこの夜にも披露されたが、彼自身が今日に至るまでの四半世紀にわたりずっと貫いてきたのが、まさにそれなのだろう。

 この日の岐阜地方は降雪こそなかったものの底冷えのする寒さだったが、club Gの館内は真夏のような暑さだった。そしてこの記念すべきライヴは、会場の“音止め”時刻である夜10時ちょうどに着地点へと至った。クロージング曲の定番といえる「あの詩を歌って」を歌い終えた清春は、満足げな笑みを浮かべながらオーディエンスに「(みんなの)どこにも属さない感じがいいです」と告げ、謝意を表しながら「来年、26回目のデビュー日もぜひ僕と過ごしてください」と伝えていた。もちろん次の記念日到来まで待つまでもなく、2月23日には新作アルバム発売に先駆けてのツアーが開幕を迎える。最後、清春は「素敵な夜を15回共有して、忘れられないツアーにしましょう」と告げてその場を去った。新たなツアーの日々、そしてニュー・アルバムの全貌が明らかになる瞬間の到来を、心して待ちたいところである。【文=増田勇一/撮影=柏田芳敬】

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