先日の小室哲哉さんの引退表明は残念でなりません。時代の開拓者である彼は様々な人に影響を与えました。筆者もそのなかの一人です。

 ふと思い返すと、自分自身の音楽の聴き方が年々、変わってきていると感じます。インタビュー取材の機会もあって、ここ数年は歌詞を昔以上に着目するようになりました。筆者個人ですが、昔は歌詞を含めて音として捉えていました。ボーカルでさえも楽器の一部という感覚です。よって、邦楽も洋楽もインストも同じレベル。もちろん歌を重点的に聴いていたのですが、言葉の意味は二の次で、どちらかというと言葉の響きが優先でした。

 ボーカルも楽器の一部という感覚でいたのは、松本孝弘さんと小室哲哉さんの存在でした。B’zのライブ映像を観てエレキギターを始め、そこから松本孝弘さんのルーツを辿り、先日引退表明した小室哲哉さんのシンセサイザーに興味を抱くようになりました。それと同時に音楽の聴き方が激変。今まで、ボーカル+アルファだった楽器達が分離して、バックバンドのボリュームを上げたような感じで、耳に飛び込んでくるようになりました。特にギターに意識がいっていたと思いますが、ドラムやベース、鍵盤楽器も同時に聴けるようになっていました。そんなきっかけの一つを与えてくれたのが小室さん。小室さんの引退表明に残念でなりません。

 それを機に音の定位、ステレオ感に興味が湧き、このバランスを作り出しているのはどんな人たちなのかを調べ始めました。これがまたハマってしまいまして、一時期レコーディング、ミックスエンジニアで曲を選んで聴いていた時期もありました。逆に「これいいな」と思った音は同じエンジニアだったこともあって、「もしかしたらこの音は...」とそれを確認するためにブックレットのスタッフ欄を見るのも非常に楽しみでした。答え合わせのようなものです。

 その次はマスタリングという音源の仕上げの存在を知り、マスタリングエンジニアで音が変わる楽しさを覚えました。そこから、同じ曲でマスタリングエンジニアの違うCDを探して聴くのが楽しくなったのを覚えています。シングルとアルバム収録曲だとマスタリングエンジニアが違うことが多いです。

 長くなりましたが、楽器を始めたことによって音楽の聴き方、楽しみ方が大いに変わりました。そこからどんどんと広がり見せ、記者業を始めてからは、改めて歌詞の奥深さを知り、またひとつ音楽の楽しみが増えたように感じています。音楽に限らず何か退屈だなと感じたら、見方を変えると新たな発見がきっとあります。【村上順一】

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