小室哲哉さんの会見に衝撃が走りました。騒動にまつわる良し悪しを言うつもりは全くありませんが、本当に考えさせられる内容です。約2時間にわたる会見のなか、音楽的発言で筆者が印象的だったのは以下の部分でした。そこからは、小室さんが自身の過去を美化するわけでもなく冷静に振り返りつつも、現在の音楽市場の動向を見据えていたことがうかがえました。

<1>90年代のブームについて

 「今思うと凄すぎた。音楽という意味では影響がありすぎたというところの、それが一番の基準になりまして。それを超えることはもちろんできないですし、それを下回ると、レベルが下がったか、枯渇したりとか。それから期待に応えられないものなのかとか、という感覚です」

2)引退は自分を上回る新しい存在に驚いてということもあるのか、という質問に対して

 「現在、日本で考えると、そこまでは思わないです」

3)後進の音楽家に伝えたいこと

 「これからの若い方たちの音楽業界の進み方は、やはりどうしても欧米が先に進んで引っ張っていく環境だと思いますので。ネットの使い方とかですね。そういうことを非常に勉強されて、日本も必ず、今、欧米が音楽がV字型というかまた盛り返しているというニュースも聞いておりますので、それに沿った活動をされていくと良いんじゃないのかなと思っています。そういう事ができるのは、今、例えばアメリカだったら20代のラッパーの方たちだったりとか。そういう方たちが引っ張ってきているので、非常に参考になるんじゃないかなと思います」

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 自身の過去を美化するわけでもなく冷静に振り返りつつ(1)、若手ラッパーの台頭やサブスクリプションによる市場の活性化といった、現在の米国の動向を見つめた(3)発言だと思われます。そして「自身の音楽の可能性を諦めていなかった」という気持ち(2)も見えました。会見中の気を遣った言葉とはいえ、最近まで小室さんがプロデューサーとして、国内外の動向をチェックしていたと受け取れます。

 また少し前から『シティポップ』や『渋谷系』という90年代を想起させる音楽が注目を浴びていましたが、ここ最近は小室さんの作品に対する再評価も広がっていました。引退を表明した事でSNSなどでそれに拍車がかかっている様子です。

 筆者が個人的に思い入れのある小室さんの曲として挙げたいのは、TRFの「EZ DO DANCE」(1993年)です。キャッチーな歌詞と転調を伴った美しいサビに何度も涙し、体を揺らしました。色々な物ごとがイージーではない現代だからこそ、口ずさみたくなる歌なのかもしれません。

 <Ez Do Dance/Ez Do Dance/踊る君を見てる…/Ez Do Dance/Ez Do Dance/君だけを見ている…>

 この歌詞はダンサーへのエールだったといいます。小室さんの状況も決して簡単ではありませんが、この歌詞の様に「音楽を作る小室さんを見たい」というファンが多い事は疑いの余地がないのではないでしょうか。【小池直也】

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