ジャズピアニストの上原ひろみが8日、東京・すみだトリフォニーホールでコロンビア出身で現在米・ニューヨークを拠点に活躍中の気鋭のジャズ・ハープ奏者のエドマール・カスタネーダとの新プロジェクト「上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ」の日本ツアー『LIVE IN JAPAN TOUR 2017』の最終公演をおこなった。今年9月に発売した『上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ「ライヴ・イン・モントリオール」』のセットリストを再現するというもの。ソロ曲も含め11曲を披露。エドマールのハープを「魔法みたいだなと思いました」と上原が語ったように、2人の奏でる多彩な音色により作り上げた独特の世界観で観客を魅了した。

2人の天才が作る世界観

上原ひろみ(c)Makoto Hirose

 会場に心地よく響くジャズミュージックと、ステージに設置されたグランドピアノと半月型のハープという独特の組み合わせに、観客もこれから起きる新たな音楽体験を予期してるかのようにワクワク感を漂わせた笑顔で語らい合う姿が印象的だった。

 暗転し、大きな拍手の中、2人が登場。深く一礼しそれぞれがポジションに付きエドマールのハープの音色から始まる「A HARP IN NEW YORK」を奏でる。上原は流れるような演奏で繋いでいく。

 冷たい雨の降る夜となったこの日。1曲目を終え、上原が「本日はお足元の悪いなか…」と語りかけると、なぜか会場に笑い声が広がった。上原は「ヘンなこと言ってないのに、なぜか笑われる現象は世界共通なんだなと最近思います。この前は、海外の公演でハローと言って笑われました(笑)。まだ原因は解明できていません」と独特の雰囲気で会場を和ませる。

 そして先日のサッカー・ワールドカップの抽選会で日本とコロンビアが同じ予選リーグに入ったことに触れ、「ワールドカップではこの後、敵同士になるんですが。私も彼もサッカーが大好きなので、その話題にはあまり触れないようにしていますが…」とエドマールを紹介。エドマールは、歓声に応えて「こんばんは。東京に戻ってこれて嬉しいです」と日本語で挨拶。続いて、英語で「この場所で最終公演を迎えられて嬉しいです。ジャコ・パストリアス(米ベーシスト)って知っていますか? 彼にインスパイアされた曲をやります」と話し、「FOR JACO」を披露。

 エドマールはハープの弦を上下左右飛び回るように爪弾き、エレクトリックベースの様な音を奏で、それに続く上原も天板下の弦に触れながら低音を会場に響かせる。革新的なテクニックでエレクトリックベースの概念を覆したジャコのそのスタイルを彷彿とさせる様な、独特の演奏で観客を彼らの世界観へと一気に引き込む。

 そのまま流れるように「MOONLIGHT SUNSHINE」、「CANTINA BAND」を立て続けに披露。「CANTINA BAND」では、楽しく跳ねるような演奏で会場をダンスホールの様な雰囲気に変えた。

すべての概念を覆す音楽

エドマール・カスタネーダ(c)Makoto Hirose

 ここで上原が一旦ステージを離れる。エドマールは「楽しんでる? ひろみは凄いよね! 日本では“与える”ということを学びました。今夜は僕が音楽を与えます」と語りかけた。そしてソロで「JESUS OF NAZARETH」を演奏。一つの楽器から奏でられているとは思えない程、多彩な音で会場を満たした。

 そして、上原が交代で登場。速く滑らかなタッチから切ないメロディを乗せていく「HAZE」を奏でる。超高速に鍵盤を叩きながらも、繊細でしっかりと粒立った音色で会場を満たしていく。その圧倒的な演奏力に、観客もただ目を見開きメロディに耳を傾けていた。

 演奏を終え、上原は「エドマールに会ったのは去年の6月にカナダのモントリオールでのステージで一緒になって、初めて彼の演奏を見ました。ハープに対する“座っておしとやかに演奏する”というイメージを180度覆されました。魔法みたいだなと思いました。魔法使いみたいですよね(笑)」とエドマールの第一印象を振り返った。

 四大元素のタイトルを持つ4曲の組曲「THE ELEMENTS」。その名の通り、4曲ともにそれぞれが特徴的なイメージを喚起させる。「AIR」では軽やかな演奏から、天に舞い上がるような明るく楽しげなメロディを奏でた。

 「EARTH」では、エドマールの印象的なメロディラインから、上原が叩きつけるような演奏で重層的な音色を重ねていく。続く「WATER」は青く照らされたステージ上で、上原が繊細なタッチでアンビエントなメロディを奏で、エドマールが水滴の落ちるような音を重ねた。

 そして、「FIRE」でこの日の本編を終えた。赤い照明が曲の世界観を引き立てる中、力強く素早いタッチで情熱的な演奏を見せた。エドマールのハープは時にフラメンコギターの様に、時にウッドベースの様に様々に表情を変え2人でその独特の世界観を作り上げた。

 観客はスタンディングオベーションで2人のステージを称賛。鳴りやまない拍手の中、2人はステージを後にした。アンコールではアストル・ピアソラ作曲の「LIBERTANGO」を披露。2人の織りなす表情豊かな音色で観客の心を最後まで鷲掴みにしたまま、ステージを締めくくった。ハープ、ピアノ、そしてジャズ…すべての概念を覆された印象深い一夜となった。【取材=松尾模糊】

セットリスト

01.A HARP IN NEW YORK
02.FOR JACO
03.MOONLIGHT SUNSHINE
04.CANTINA BAND
05.JESUS OF NAZARETH(solo)
06.HAZE(solo)
THE ELEMENTS
07. AIR
08. EARTH
09. WATER
10. FIRE

Encore

11.LIBERTANGO

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