ヒッチハイクの旅を終えその鬱憤を晴らすかのようなライブを展開した電波少女とゲスト達(撮影=柴田恵理)

 ヒップホップユニットの電波少女が4日、東京・渋谷WWW Xで単独公演『電波少女 ワンマンライブ“サライ”~電波少女的ヒッチハイクの旅 完~』を開催した。彼らは昨年11月から今年1月までのヒッチハイク企画『“電波少女的ヒッチハイクの旅”47都道府県ストリートライブTOUR』を終えたばかり。今回のライブをそれを踏まえた、旅の総決算的なものとなった。メンバーのハシシは「旅をポジティブに消化できていない」という様な発言を繰り返しながらも「旅で溜め込んだもの全部出せれば」と意気込み、この旅で培った「FOOTPRINTS」を初披露するなど、思い出をアウトプットしていった。ありきたりの感動を避ける様に、ひねくれる姿勢も健在だった。

この旅で溜め込んだもの全部出せればいいかな

ハシシ(撮影=柴田恵理)

 この日のチケットはソールドアウト。フロアは踊るスペースも無いくらい、人で一杯になっていた。暗転後、旅の終盤に撮ったと思われる、電波少女の映像がイントロダクションとして流されると、その後、スーツ姿のMCが登場。MCが今夜の主役である2人を呼び込みライブが開幕した。

 いきなりのバク宙で先制攻撃、フロアを盛り上げるnicecream。続いてハシシが「ワンマンライブはじまるよー!」と叫んでから、本日の1曲目「INVADER feat.Raq」。ハシシが電波少女のフラッグを片手に歌う。nicecreamはDJブースに下がり、音を調整しながら時折マイクを被せていく。フック(サビ)ではハシシが煽り、観客と一体に。客演参加のRAq a.k.a.REEZYは東大卒ラッパー。早口が印象的で、ハシシとも息が合っていた。

 「電波少女です!」ハシシが軽くMCする。「ライブが久しぶり。リハビリも兼ねて、この旅で溜め込んだもの全部出せればいいかなと思っています。ついてきてください!」と話し、4つ打ちのリズムが組み込まれた力強い「オーバードーズ feat.NIHA-C」に繋げた。静寂を挟んでからのアッパーな展開にフロアが揺れる。ここからの客演はNIHA-C。旅を終えた電波少女に「おかえりなさい」と温かい声をかけた彼は、ニコニコ動画時代からの長い付き合いだ。間奏ではnicecreamのダンスも炸裂。

 NIHA-Cをそのまま残して人気曲の「MO feat.NIHA-C」へ。マイクリレーはNIHA-Cからだった。彼らなりの、ひねくれた失恋ソングを紫の照明が引き立てる。2コーラス目からマイクのバトンを受け取ったハシシは右手を振りながら、ラップを展開。エンディングの裏声も余韻がしばらく漂っていた。

 この旅で「ハシシが優しくなった気がする」とMCをしたのはnicecream。ハシシも旅を振り返りながら「本当にあと3日くらい長引いたら、誰か喧嘩してます。俺がボブ・サップみたいな体格だったら、ボコボコにしてる」と話す。2人のやりとりは軽妙で、ラジオ番組の様だ。また「解散も考えた」と笑いながら話すハシシは「今日は友達いっぱい呼びたいと思います」とまだまだ続く客演陣を予告。

nicecream(撮影=柴田恵理)

 3番手の刺客は、Jinmenusagi。彼を迎えて披露したのは「きっとこの夜も feat. Jinmenusagi」。元々はハシシがフィーチャリングだったJinmenusagiの楽曲だが、今回は関係が逆さまになっている。メロウなイントロをフェイントにした、BPM早めのビートだ。Jinmenusagiは日本語を英語の様なフロウ(抑揚)で操ってバースを蹴る(ラップをしていく)タイプのラッパーだ。そんな相手に対して、ハシシは声高め且つ、メロディアスな表現でコントラストを付けた。曲中のコールアンドレスポンスにもしっかり応答するオーディエンス達もさすが、と言ったところ。

 「Earphone feat.Jinmenusagi」では、音数少な目なビートがクール。やはりここでも、ハシシのメロディとJinmenusagiのラップが好対照。終盤交互にマイクが入れ替わるコンビネーションもスムーズだった。

 暗転してから「nicecream dance show case」へ。nicecreamが5人のダンサーを引き連れて、ダブステップ調の曲で群舞。ところどころでnicecreamソロダンスを決め、しっかり見せ場を作る。そのままハシシが登場、尖った声の質感で昨年リリースした『パラノイア』の1曲目でもある「拝啓」を届けた。

新曲「FOOTPRINTS」を初披露

ハシシとnicecream(撮影=柴田恵理)

 ここで開幕直前、電波少女を呼び込んだスーツの男が再登場。メンバーの2人に絡んでいく、彼こそ続く刺客であるラッパー・抹 a.k.a.ナンブヒトシであった。電波少女と同じく、ネットシーンから台頭してきた一人だ。そんな彼を迎えて「HIPHOPLIFE 3 feat.抹 NOBY」(NOBYは不参加)が披露された。抹のラップは喋る様なフロウが特徴。まくしたてる様にパワフルに盛り上がっていった。

 この日は珍しかった客演無し、レゲエ風味の楽曲「Mis(ter)Understand」で爽やかさを演出してから、「ツキ feat.トップハムハット狂」に移行する。客演のトップハムハット狂もまた、ネットラッパー時代からの仲間である。コミュニケーションが苦手そうに見える電波少女の交友関係が固いものである事を感じさせる。ラップというよりも、歌の成分強めのトップハムハット狂に対し、ハシシは先ほどの応対とは反対にラップで攻めていったのが面白かった。続く「オルタネートエラー feat.トップハムハット狂」は昨今のロックバンドの様なメロディラインが特徴で他の楽曲と比べ、異彩を放つ。

 MCを挟んでから「旅をする中で構築していった」という新曲「FOOTPRINTS」を初披露。ロックな質感を基調としながら、途中でレゲエっぽくなる。彼ららしい、ひねくれた1曲となっていた。そのまま、電波少女はヒップホップらしいビートを投下。nicecreamがダンスでイントロを彩ったのは「Munchii Bear Cookiis 2015」。ハシシとnicecreamでマイクリレーしていく。ハシシの3連符(3つ綴りのリズム)の効いたラップにぐっと来た。ファン達も音に身を委ねている様子だ。

 そのまま客演無しの楽曲「Re:カールマイヤー」を繋げた後、nicecreamにアコースティックギターとマイクが準備される。ハシシが「腐るほどやった曲を、最後やってみんなが笑ってくれたらくれたらいいですね」とMCして演奏されたのは「笑えるように」。旅の中、50回以上重ねたストリートライブでやり続けてきた思い出の曲だ。旅に良くない印象がまだ残っている、とハシシは繰り返していたが、何度も演奏した曲だけにのびのびした印象を受けた。nicecreamもしっかり歌っていた。

胴上げされるハシシ(撮影=柴田恵理)

 この曲をもって本編が終了。「ありがとうございました!電波少女でした!」と叫んで2人が退場。しかし、フロアからはアンコールが発生。「電波のテーマ」を短めで披露し、またステージにハシシとnicecreamが戻ってきた。

 そして、ここからが本当の終盤戦。「暗い曲やります」と告げて始まった「COMPLEX feat.Jinmenusagi, NIHA-C」のイントロで歓声が湧く。抑制された序盤から、フックの途中で入ってくるベースでスイッチが入り、曲が盛り上がる。客演は再び、JinmenusagiとNIHA-Cの2人。MCからMCへ、マイクが繋がれる程に楽曲のギアが上げられていくのが興味深かった。

 この日最後の曲「キメラアント行進曲」では今までの客演ラッパーとダンサーが全員登場。電波少女と総勢5名のMCによるリレーと掛け合いは圧巻だった。最後にふさわしい大団円。エンディング後、交互に胴上げされる電波少女の2人。

 照れくさそうな様子だったが、その後「(旅から)帰ってきてから、友達にも会って良いなと。愛されてるなあと(思った)」と話したハシシの発言が全てを表していると思う。単純な感動を避けながら、ひねくれながら、自分の持ち味を深化させた彼らに、結果的に感動したファンも多かったことだろう。旅の経験がこれからの活動にどうフィードバックされていくのか期待したい。

(取材=小池直也)

ライブ情報

日程:6月18日(日) 
電波少女 ワンマンライブ「EST.」開催決定
場所:Shibuya WWW X
開場/開演:17時/18時
金額:前売り¥3,500-(ドリンク代別)
チケット最速先行先着受付
denpagirl.com

3カ月連続デジタルシングル配信決定
第1弾デジタルシングル 5月8日(月)「Re:カールマイヤー」配信開始

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