楽しかった記憶は無い、電波少女 ヒッチハイクの旅で学んだこと
INTERVIEW

楽しかった記憶は無い、電波少女 ヒッチハイクの旅で学んだこと


記者:小池直也

撮影:

掲載:17年02月10日

読了時間:約13分

「ヒッチハイクの旅」を終えた今、電波少女は何を思うのか

 メジャーデビューをかけて昨年11月から47都道府県でストリートライブツアーを展開してきたヒップホップユニットの電波少女が昨年12月31日、彼らの地元である宮崎県に到着、今年1月上旬にストリートライブを実施し、その“ノルマ”を無事クリアした。この企画は『“電波少女的ヒッチハイクの旅”47都道府県ストリートライブTOUR』というタイトルが示す通り「ヒッチハイクで移動をして47都道府県全県でストリートライブをする」というもの。これにより、電波少女のメジャーデビューが決定、2月4日には渋谷WWWでワンマンライブ『“サライ”~電波少女的ヒッチハイクの旅 完~』を実施した。本媒体ではこれまで、企画スタート前・道中と過去2回のインタビューをおこなってきたがこれが完結編となる。今までの取材を踏まえ、旅の苦しみ、コミュニケーションへの葛藤、極限の中の人間関係、この旅で培ったものなど、ハシシとnicecreamの2人に話を聞いた。

楽しかった記憶は1ミリも無いです

ヒッチハイク中

ヒッチハイク中

――ゴールおめでとうございます。まずは旅の率直な感想をお願いします。

nicecream 一言で言うのも難しいですけど「日本は狭かった」という感じです。

ハシシ 自分は最悪でした(笑)。楽しかった記憶は1ミリも無いです。辛いというか、終盤はマネージャー以外、皆ピリピリしていました。あと1週間くらい長かったらケンカになっていてもおかしくなかったと思います。僕は基本的に結構「わー」って言ってしまうタイプなので、笑いを入れる余裕もあまり無かったです。nicecreamもキレやすくなっていましたし。

nicecream いつもはそんな事はないんですけど、普通にイラついていました。ハシシは普段から自分の事を棚に上げて、僕が遅刻すると文句を言う事があるんです。それでも普段は、「遅刻したのは悪い」と考えて反省できるんです。旅の時は今になって考えてみると、それもできなくなっていて。「人の事を言えないだろ!」と態度にも出てしまいました。

ハシシ とにかくずっと(nicecreamが)いるんで、もう見たくない(笑)。ずっと一緒にいたカメラマンが視界にいるのも段々きつくなってきて。別に嫌いっていう訳じゃないですけどね。ずっと毎日いると、おかしくなってくるというか。思い出したくないです。でも帰って来てからは回復しました。宮崎から東京への帰りは嬉しかったんですけど、nicecreamの方はヤバかったなって印象です。

nicecream もう宮崎にゴールして、「ヒッチハイク終わった」という気分だったので「はあ」って感じだったんです。

――道中、ハシシさんが入院っていう場面もありましたよね。

ハシシ あれは倒れたわけじゃなくて、入院しなくちゃいけなかったんです。扁桃腺が腫れて、40度くらいの熱が出たので早く治すために。もともと扁桃腺が大きいので、腫れやすいんですよ。

東京まで

東京まで

――前回のインタビューでは、徒歩で日本縦断している友達がいる、というお話をされていましたが、合流はできましたか。

ハシシ 会ってないです。自分もその後の彼を追えていないんですよ。他の事に時間を割きたくなかったというのもありましたし、時間のロスにもなるし。自分も早くゴールしたいっていうのもあったので、早くゴールできてよかったと思っています。でも一番、思っていたのは、やっぱりnicecreamだと思います。

 何か遊びを作らないというか。「(前に」進めた方がいいでしょ」みたいなバイブスがあったんです。だから僕は(ネット中継)放送でも、ちょっとした事だったら「ふざけを入れた方が観ている方も楽しめるだろうな」と思っていたんですけど、こいつ(nicecream)は全然無いんですよ。

nicecream そうやろか。結構合わせているつもりだったんですけどね。進めるペースやろ?

ハシシ うそやろ! 後半合わせに来なかったよ。だから段々と自分からも提案とかしなかったですからね。お互いに結構頑固になっていたのもありますけど。台本がある訳でもないから、基本的に視聴者の事とかを考えられなくなっていましたね。あくまで、自分の方から見えていた感じなので、わからないですけど。凄く進みたがっていて。

nicecream 言われてもピンと来ない(笑)。どっちが進みたがっていたか、と言われればハシシの方だと思うけど。

ハシシ え、俺が? 絶対無い(笑)。根本的に進みたいっていうのはありましたけど、nicecreamは「ガチ」って感じなんですよ。効率を考え出して「こうやった方が良い」と。「いや、そうだけど面白いかそれ?」みたいな。

――スタート前の取材で、ハシシさんが未来の自分たちに贈った「仲良くしてください」とメッセージが思い出されますね。

ハシシ お互いの嫌な所が凄く出てたんで、それはきつかったです。嫌なところを探すっていう訳じゃないんですけど、全部お互い様だなっていう事があったというか。自分が本当にキレたのはカメラマンの奴だけだったんです。態度に限界が来てしまって(笑)。

 その日、彼が遅刻して来たんです。それは別にいいんですけど、睡魔にたたかう様子もなく普通に車の中でも寝ていて。それに、放送している時に話しかけてもリアクションもない。それには怒りましたね。でも僕ら2人で衝突する事はありませんでした。ピリピリはしましたけど。

 でも本当に最後の方とかは別に嫌いな訳ではないのに、やっぱり視界に入れたくないんですよ。何かイライラしてしまう。家族でもあそこまで一緒にいる事はないと思います。母親とやれって言われても無理ですもん。

帰りもヒッチハイクというのは聞いてなかった

ハシシ

――年越しはどうされていたんですか。

ハシシ 12月31日に宮崎にゴールしたので、友達と過ごしました。でも楽しくなかったですね、(東京に)帰りたかったので(笑)。nicecreamは楽しんでいましたけど、酔っぱらってたし。

nicecream 僕は年越し、結構楽しかったんです。だから東京への帰りのヒッチハイクはきついなって思いました。

ハシシ こいつは自分とモチベーションが逆だったんですよ。俺は、これが終わらないと気持ちが切り替わらない。だから、この宮崎の期間って足踏みじゃないですか。いつもなら楽しくて、落ち着くはずなんですけど、「自宅に帰りたい」という。だから東京へ向かっている時は進んでいるから良かったんです。宮崎に停滞している間は結構、嫌でしたね。

nicecream でも帰りは10回もヒッチハイクしないで東京に行けましたね。

ハシシ 1月上旬には東京に着きました。でも、帰りもヒッチハイクというのは聞いてなかったです。うすうす感づいてはいましたたけど。「あれ、機材車があるな」って(笑)。コメントとかでも、リスナーが「帰りもヒッチハイクでしょ」と言っていて、「それ、ありえるな」って思ってましたし。帰ってからは基本作業でずっと家にいるので、だいぶ健康になりました。

――「LINEで1000人と友達になる」というミッションはどうでしたか。

nicecream 無事達成できました。ギリギリでしたけどね。宮崎で最後の40人くらいでした。

ハシシ 前半は結構調子良かったんですけど、後半は何カ所か来てくれている人もいたりして。だから路上ライブに集まってくれた人は多くても、友達になれる相手が少なくなってきたりというのもありました。あと東京では警察に注意されて、すぐ撤収しなければいけなかったのが辛かったです。ライブ自体は全部出来たんですけど、その後の物販とかLINE交換とかはほぼ出来ない状態。せっかく東京が一番、人が集まったのに。

 そういう意味では、東京よりも地方の方が良いですね。注意される心配の度合いが少ない。俺が前に立って歌うじゃないですか、だから主犯格っぽく映る。それが嫌で。しかも大声を出さなきゃいけないから、変な人に見えるじゃないですか? 夜中に周りがマンションの公園でやった事もあったんです。「大丈夫かな…」って。家の人からしたら「外でなんか、騒いでいる人いる」って感じだと思うんです。その役を俺がやらなくちゃいけない。路上ライブの場所も周りが「ここでいいんじゃない?」と提案した所が、凄く嫌な時とかもあって。「ここは無理」っていうやりとりもありました。

nicecream その公園でやったのは、島根辺りでしたね。夜の24時くらい。別の場所でやっていたら注意されて、移動しなきゃいけなくなったんですよ。それで遅くなってしまって、そんな時間になったっていう事がありました。「お客さん来なかったらやらない」って放送でも言ったんですけど、来てくれたんで「やるしかない」という感じでした。

ハシシ 昼間の田舎とかだったら、心配する事は何にもないんですけど…。

「ここで俺が辞めるって言ったらどうなるんだろう」という事はよく考えた

スカイダイビング

スカイダイビングのミッションをおこなうnicecream

――バンジージャンプなどの臨時ミッションについてはどうでしたか。

ハシシ そうですね、ちょろちょろと。自転車で琵琶湖1周とか。兵庫でスカイダイビングもやりました。

nicecream あと、四国の肝試しとか。きつかったのはやっぱり滝行ですね。それから僕が印象に残っているのは、ハシシの琵琶湖1周ですね。23時間くらい自転車漕ぎっぱなしでした。そのうち2時間は車で寝たみたいなんですが、大変そうだなと。ハシシは結構そういう事で機嫌悪くなるんですけど、清々しく帰って来て驚きました。

ハシシ その23時間は1人だったから(笑)。カメラマンはいるけど、ほとんど話さないし、体力を使うので頭を使わないんですよ。だから逆にリフレッシュできたというか。常に「コミュニケーションをとらないといけない」という疲れが溜まっていたので。別に誰が嫌とかじゃなくて。ヒッチハイクで乗せて貰っても、知らない人と話さなきゃいけないので。路上ライブでもお客さんと話して。それに常にスタッフとメンバーがいてという状況で、「コミュニケーションをとる」という事がめちゃくちゃ辛くなっていたんです。だから自転車で走っている時の方が楽でした。

nicecream 見ているこちら側は、ちょっと24時間テレビのマラソンを見た様な感動が最後ありました。結構お客さんとかも感動している様子でしたし。

ハシシ 学生時代はスポーツ少年って感じだったんですけどね。高校の時も体を動かしていましたし。次の日は筋肉痛っていうよりは膝が痛すぎて、曲げられなかったです。臨時ミッションはお互いに不得意な部分を避けられたというのは良かったと思います。スカイダイビング(nicecreamが挑戦した)は絶対嫌でした。それならパラシュート付けずに落ちた方がいいです(笑)。

――そこまで嫌だったんですね(笑)。

ハシシ まあ、さすがに死んだ方が良いとは思いませんでしたけど、「ここで俺が辞めるって言ったらどうなるんだろう」という様な事はよく考えました。車の後部座席に乗っていると喋らないから、考える時間が結構長いんですよ。携帯も取り上げられているし。そういう時は結構ネガティブに考えがちではありますね、失礼な事を考えたり。例えば「ここで俺がいきなり発狂したらどうなるんだろう」とか。もちろん実際にはやりません(笑)。ちゃんと制御はできるんですけど、急に叫びたくなる時があって。

nicecream 僕も普段からそういう事を考えたりすることがあるんですよ。特にこの期間は車に乗っている時とか、それ以外でも考える事が多かった気がします。多分携帯があったらツイッターを見たりして、情報取集をすると思うんですけど、それが無かったのでそういう事を考えてたんじゃないかと思います。

滝行のミッション中

滝行のミッション中

――車に乗せてくれた人とのコミュニケーションで印象的な出来事はありましたか。
 
nicecream 乗せてくれた人で面白かったのは演歌歌手の北山さんですね。奈良に送ってもらいました。「音楽活動やってるんです」と話したら「俺と一緒だな」って。

ハシシ この人が面白かったっていうよりは、スキーの世界大会選手やトライアスロン選手で結構有名な方が乗せてくれる事が何度かありました。そういう人の方がエネルギーはある様な気がします。純粋にアクティブというか、パワーがあるのかなと。47都道府県で比率的に考えても。

 あとは「昔ヒッチハイクやっていました」という人だったり、そういう人の方が止まってくれやすいような気がしました。きっと警戒心よりも好奇心が強いんでしょうね。「本当は会社の用事に今から行くんだけど、乗せたいんだよね。俺もヒッチハイクやっていたから」と言って、用事に遅れてまで乗せてくれた方もいたりしました。

――個人的に好きな場所はありましたか?

nicecream 地域で言うと、僕は香川が良かったですね。人が暖かかった。四国に入った瞬間、1発で目的地まで行けたとか良い事もあったし。それから雪もあんまり降らなかったし、うどんとか食べ物も美味しかったです。地震も少ないって、乗せて貰った人に聞いたりしていたので、将来住むにしても良いかなと。

ハシシ 遊びで行きたいなって思ったのは、初めて訪れた沖縄ですね。何にも遊んでないですけどね。行った時はたまたまちょっと寒かったですけど、寒くてこれかという感じでした。街の雰囲気も海外感があって、遊びで来たかったなと思います。

あと1週間ゴールが延びていたら誰か死んでましたね(笑)

nicecream

――この旅で出来た曲があるそうですが。

ハシシ まだ出来てはいないんです。(編注=取材日は1月23日)頭の中で構想していたものを帰って来て、組み立てている最中という感じです。曲名は「FOOTPRINTS」というそのまんまのタイトルです。かなりバンドサウンドの疾走感がある曲なので、僕らっぽくないのかなとは思います。

――なぜバンドサウンドに?

ハシシ このテーマをヒップホップとか、今までのノリで想像した時に「壮大な感じ」とか「感動を誘う様な」ものになりがちだなと思うんですよ。でも、モチベーション的にそういうのは書きたくないなって。まだ旅を自分の中で良い物として消化できてないので、もう少し吹っ切れる様な曲にしたいなと考えています。

――この旅の結果見えたものは何だったんでしょう。

ハシシ 「こういう旅はやっちゃ駄目だな」という事ですね。だって、色々考えましたもん。「解散」とか(笑)。本当に。何ていうんですかね、気持ち的にも「このまま俺、音楽続けられるかな」と思いましたし。今はそんな事も思わないですけど、落ちている瞬間は「これ、やっていけるのかな」とか、音楽続けていける自信が無くなったりとか、お客さんの顔も見たくなかったり。

nicecream 僕は解散までは考えなかったですけどね。

ヒッチハイクで使っていた呼び止め用のスケッチブックをもつ二人

ハシシ 突発的に来るんですよ。1番ひどかったのは中国地方。本当にピークで「帰ろうかな」って思いました。「1週間くらいなら許してくれるんじゃないかな」とか。本当に病んでいるって言われてもおかしくない様な心境でしたから。

nicecream それは感じました。その期間じゃなくとも常々。

ハシシ 本当にヤバかったです。あと1週間ゴールが延びていたら誰か死んでいましたね(笑)。カメラマンもボロボロになっていました。冗談が通じなくなってくるというか、ちょっとしたコントのつもりでも本気に思われてしまったり。

 正直、旅が嫌過ぎて、俺の中でこの期間の事は無にしているんです。整理をつけず、散らかった状態で、押し入れにしまっている様な。でも強いて言うなら、自分の良いところと悪いところを客観視する良い機会になりました。その両方を伸ばせたのかなとも思います。アクが強くなったのかなと思いますし、そういうところを作品にもっと活かしたいですね。あとは日常生活にもう少し我慢が必要なんだなと(笑)。

nicecream ネガティブなところはハシシと同じ様な事ですけど、ポジティブなところは、全国にこれだけお客さんがいるんだなと気づいた事です。

(取材=小池直也)

ヒッチハイク旅のもよう

ライブ情報

電波少女 ワンマンライブ「EST.」開催決定
日程:6月18日(日) 
場所:Shibuya WWW X
開場/開演:17時/18時
金額:前売り3500円(ドリンク代別)
チケット最速先行先着受付
denpagirl.com

作品情報

3カ月連続デジタルシングル配信決定
第1弾デジタルシングル 5月8日(月)「Re:カールマイヤー」配信開始
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ヒッチハイク中
滝行のミッション中
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