極上のポップスを聖夜の中野サンプラザに響かせたさかいゆう

 シンガーソングライターのさかいゆうが去る2016年12月25日に、東京・中野サンプラザで、ワンマンライブ『さかいゆうLIVE “POP TO THE WORLD” SPECIAL』東京公演をおこなった。“新しいアレンジで聴かせる新たなさかいゆう”をテーマに、11月から12月にかけて全国6カ所(仙台、新潟、札幌、高松、広島、福岡)で繰り広げてきた全国ツアー『さかいゆうTOUR “POP TO THE WORLD”』のスペシャル版とも言える内容で、先立って21日にNHK大阪ホールでも開催されている。25日の公演では山下達郎やB’zのクリスマスソングをカバーするとともに、最新曲「再燃SHOW」や「君と僕の挽歌」など、ダブルアンコール含め全19曲を披露。ソウルフルでグルーヴィーな歌声で聖なる夜を彩った。

海外での経験が『POP TO THE WORLD』へ繋がった

さかいゆう

 定刻を少々過ぎたところで、ブルーの光がステージを照らすなか、オープニングSEである今回のツアーテーマソングにのって、サポートメンバーがステージに登場、程なくしてさかいゆうも歓声が響くなか元気良く登場した。キーボードの前にスタンバイすると、さかいは「東京~!」と力強い声で叫び、オープニングナンバーとして、11月にリリースしたニューシングルからブラックミュージックテイスト満載の「Drowning」を披露した。流暢な英語で伸びやかに歌い上げていく。その歌声とサウンドは洋楽を聴いているような感覚にさせた。間髪入れずにピアノのイントロのフレーズが印象深い「ストーリー」へ。一体感のある手拍子でオーディエンスもグルーヴの一端を担っていった。

 「Headphone Girl」では「中野サンプラザ、元気ですか~! みんなの声が聞きたいぜ!」と煽り、<オーイエー♪>とコールアンドレスポンス。<古いジャズを聴く♪>という歌詞の部分を<さかいゆうを聴く♪>と替えてライブならではの遊び心で楽しませた。そして、難解なクラップもオーディエンスとともに紡いでゆく。

 MCでは、ツアータイトルである『POP TO THE WORLD』の由来を説明。2010年にアメリカでおこなったライブでマイケル・ジャクソンさんの楽曲が受け入れられると思い歌ったものの一番盛り上がったのは童謡の「ふるさと」だったことや、2012年のロンドンでのライブではTHE BEATLESの「ACROSS THE UNIVERSE」やRadioheadの「Creep」を歌ったがややうけ。その時は、自身の楽曲「ストーリー」が一番盛り上がったと話した。外国人から「これは一体何なんだ?」と問われたさかいは「This Is J-Pop!」とクールに答えたという。そこから『POP TO THE WORLD』へと繋がったようだ。

 「サビを手伝って下さい!」とオーディエンスに投げかけ、「薔薇とローズ」を披露。またいつもとは趣の違うアレンジで、上質なポップスソングを繊細ながらも、力強い歌声で中野サンプラザを包み込んでいく。続けて、「Midnight U」では長めのピアノソロも展開。楽しそうに演奏するさかいの姿が印象的だった。

 そして、「よさこい鳴子踊り」へ。柴山哲郎(Gt)の奏でるトルコ楽器・ウードの音色がアクセントとなり、オリエンタルな雰囲気のなか、ワールドミュージックと言ってしまっても過言ではない多国籍な世界観を見せる。「ケセラセLife」はShingo Suzuki(Ba)の歪んだベースサウンドに、スリリングな和音でイナタイ空気感を満たしていく。手練れのミュージシャンたちによる巧みなサウンドワークで空間を彩っていった。

山下達郎やB’zのカバーを披露

さかいゆう

 ここでカバーコーナーへ。サンタの帽子をかぶり、クリスマスソングをさかい流にアレンジし、届けた。まずはクリスマス定番ナンバーである山下達郎の「クリスマス・イヴ」を、大胆にアレンジを変えて披露。「良い歌は受け継いでいきたい」と語った。次の曲は「ハンドマイクでお届けします」と、キーボードから離れ、中学生の時に好きだったというB’zの「いつかのメリークリスマス」を届けた。柴山と岡野“tiger”諭(Dr)の3人で、原曲の持つ切なさを、さらに強調させしっとりと聴かせた。後半のサビではマイクを使わず生声で届ける場面も。その透き通った歌声に酔いしれるオーディエンスの姿も見られた。

 「寝ないでくださいね」とジョークを挟み、バラードナンバー4曲をノンストップで披露。ビョークのような混沌とした世界観を見せつけた「She left」と、ステージの両サイドで回転するミラーボールが月のように輝き放ち、幻想的な空間を作った「無言の月」。そして、ほのぼのとした暖かさを醸し出した「井の頭公園」と、さかいの歌声で中野サンプラザにストーリーを描いていく。さらにペルシア語で“天からの贈り物”を意味する「ジャスミン」では、眩い光がさかいを包み込みながら、天国へ導くかのような歌声を届けた。エンディングで「私のジャスミンは中野サンプラザの皆さんです」と自分自身のジャスミンを力強く告げた。

 バラードで癒された心に再び火をつけるように、「But It’s OK!」による前へ前へと押し寄せる灼熱のグルーヴによってオーディエンスの心を奮い立たせていく。本編ラストは「再燃SHOW」。さかいの曲では珍しいダンサブルな4つ打ちサウンドで、心も体も躍動感で満たしていく。失敗を乗り越えて強く進んでいく、そんなポジティブさが前面に感じられた楽曲で本編を終了した。

 アンコールの手拍子に応え、Tシャツに着替えゆっくりとステージに登場したさかい。グッズやメンバー紹介をさかい独特のトークで楽しく展開し、オーディエンスを楽しませる。ここでのMCでは、「人生で初めてのコンサートは中野サンプラザで観たレイチャールズなんです」と明かし、初コンサートの思い出を話した。

 そして、「まなざし☆デイドリーム」のカップリングに収録されている「みち」と坂本九さんの「上を向いて歩こう」を『“POP TO THE WORLD” SPECIAL』アレンジでメドレー形式に届ける。「上を向いて歩こう」では大和田慧(Cho・Key)とメインボーカルを入れ替えながら、コントラスト豊かにエモーショナルに歌い上げていく。

 ミラーボールが頭上から登場し、ジョン・レノンの「Happy Xmas (War Is Over)」を壮大なスケール感で情感を込め名曲を紡ぐ。ミラーボールによってキラキラと会場が輝くなか<War Is Over~♪>を会場全体でシンガロングし、争いのない世界への希望を歌い上げていくピースフルな空間に。アンコールラストは体が自然と弾むファンキーな「まなざし☆デイドリーム」を爽快に奏でアンコールを終了した。

ライブのもよう

 鳴り止まない拍手にもう1曲。会場の声を聞きたいとイヤーモニターを外し、亡くなった友人に向けて書いたという、「君と僕の挽歌」をさかいの弾き語りで披露。音楽を始めるきっかけとなった友人に語りかけるように、ソウルフルな歌声が高らかに会場に響き渡る。その渾身の歌は聴く者の感情を揺さぶり続けながら、聖なる夜のライブは幕を閉じた。

 さかいは以前に本媒体のインタビューで、グルーヴを感じとって欲しいと語っていた。ライブの音は一期一会。同じメンバーで同じ演奏をしていても、その時にしか聴けないグルーヴとサウンドがある。それはオーディエンスの手拍子や歌声もグルーヴを作り出す大きなファクターだ。そんな唯一無二のグルーヴと音像が感じられたライブであった。クリスマスという聖なる夜に奏でられたサウンドは、きっと訪れたオーディエンスにとっても“ジャスミン”になったのではないだろうか。

(取材=村上順一)

セットリスト

『さかいゆうLIVE “POP TO THE WORLD” SPECIAL』

12月25日 東京・中野サンプラザ

01.Drowning
02.ストーリー
03.Headphone Girl
04.薔薇とローズ
05.Midnight U
06.よさこい鳴子踊り
07.ケセラセLife
08.クリスマス・イヴ(山下達郎)
09.いつかのメリークリスマス(B'z)
10.She left
11.無言の月
12.井の頭公園
13.ジャスミン
14.But It's OK!
15.再燃SHOW

Encore

16.みち ~上を向いて歩こう~
17.Happy Xmas (War Is Over)(ジョン・レノン)
18.まなざし☆デイドリーム

Encore2

19.君と僕の挽歌

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