歴史的なジャズの名盤をコレクションできる隔週刊『ジャズ・LPレコード・コレクション』(デアゴスティーニ・ジャパン)の創刊を記念して、極上のジャズ音楽やその世界感を体感できるバー「JAZZ LP RECORD BAR」が9月27日から10月1日の期間限定で、東京・代官山にオープンする。

 オープンに先駆け、26日には同所で、DJ・作曲家・執筆家・選曲評論家の沖野修也さんをゲストに迎え、ジャズの楽しみ方やその魅力を語るトークセッションが開催された。アナログレコードのサウンド、ジャズの歴史、現代の音楽に影響する要素、録音物としてのレコードの価値――、あらゆる角度からアナログの魅力とジャズの楽しみ方はスウィングするように語られ、代官山でディープにジャズの世界へ浸る一夜が開かれた。

期間限定ジャズ・スポット『JAZZ LP RECORD BAR』とは?

 期間限定オープンする「JAZZ LP RECORD BAR」は、歴史的な名盤をコレクションできる隔週刊『ジャズ・LPレコード・コレクション』のラインアップが店内BGMとして使用されるジャズ・フィーリング・バー。無数のジャケットワークを目で楽しみ、アナログの温もりのある音が空間を包み、ジャズ一色の空間に浸れるスポットだ。

 アナログレコード約100枚が壁一面に展示され、その空間に赴く事で視覚的にもジャズの世界が体感できる、ジャズファンにとってたまらないスポットといえそうで、往年のジャズファンだけではなく、レコードブームで盛り上がりを見せる様々な音楽ファンのアンテナにもかかるだろう。26日のプレオープン・イベントでは沖野修也さんをゲストに迎えたトークセッションが開催された。

 颯爽とBARに現れた沖野修也さんは『JAZZ LP RECORD BAR』について、「非常にスタイリッシュで、期間中は立ち寄りたい」と切り出し、アナログレコードの魅力からジャズの具体的な名曲を挙げての解説、ジャズとクラブシーンとの接点など、専門家の視点で語った。トークセッションの要約を以下、一問一答形式で紹介したい。

スパコンでも解析不能?「アナログレコード」という究極録音物

約100枚のアナログレコードが壁一面に展示

約100枚のアナログレコードが壁一面に展示

――デジタルにはないアナログレコード魅力とは?

沖野 よく“音が温かい”とか“音が良い”などと言われますが、僕もそれは実際に感じる事です。デジタルとアナログを聴き比べると、平面と立体くらい音が違うんですよね。皆さん自身でそれを聴き比べるとそれを実感出来ると思います。

 以前聴いたお話なのですが、今、この世の中で作られているデジタルの録音物を“アナログの音にいかに近づけるか”という研究のテーマがあるそうなんです。デジタルデータは音と音の間に隙間があって、それをコンピューターで計算して間を埋めていく方向に向かっているらしいんです。

 ちなみに、デジタルの音を限りなくアナログの音に近づけるには、現時点では地球上に存在する全てのスーパーコンピューターを使っても計算出来ないと言われているんです。アナログの音というのは昔の古くさいもの、過去にあったものと思われる事もあるかもしれませんが、実は、“音楽の未来は過去の中にある”という…。アナログレコードは究極の録音物なので、デジタルが今後向かって行く方向が、このアナログなんです。

――アナログからデジタルへと移行し、またアナログに向かっているのですね。

沖野 はい。だから全然古いものという訳ではないんです。アナログが音楽の未来なので、僕にとってはアナログのリバイバルというのは自然な事だと思います。

――アメリカではレコードの人気が高まっていますが、日本でもブームは感じますか?

沖野 主に名盤の復刻や、有名なアーティストの再プレスが盛り上がっているのですが、僕はこういった過去の音源がどんどん紹介される事で、ブームではなくて文化として定着するのではないかと、個人的には非常に期待しています。

モード・ジャズの名盤 — マイルス・デイヴィス『Kind of blue』

やわらかなたたずまいをみせるレコードプレーヤー

やわらかなたたずまいをみせるレコードプレーヤー

――『ジャズ・LPレコード・コレクション』創刊号に取りあげられるマイルス・デイヴィスの『Kind of blue』について教えて頂きたいです。

沖野 これは僕が触れずとも、マイルス・ディヴィスの作品の中で名盤中の名盤と言われています。ジャズは時代によって色んなスタイルがあるんですけど、『Kind of blue』は、モード・ジャズと呼ばれる60年代前半から中期にかけてジャズのシーンをリードしていったスタイルがあるのですが、それのきっかけとなる一枚と言われています。

 マイルス・ディヴィス自身にとってもターニング・ポイントでしたし、モダンジャズと呼ばれるものの礎となった名盤として多くの方々に評価されているアルバムですので、これが記念すべき第一号というのは非常に意味のある事かなという風に思っております。

ジャズをサンプリング使用して発展したダンスミュージック

バーカウンターにもレコードジャケットが

バーカウンターにもレコードジャケットが

――ジャズをサンプリング使用したダンスチューンについて教えて下さい。

沖野 HIP HOPのアーティストは数々のジャズの音源をサンプリングしているのですが、『Kind of blue』収録曲はサンプリングをされていないか、仮にされていても著作権の処理がなされていないという事で、それについての辞書やWEB上のリストに上げられていないんです。

 ただ、厳密に言えばサンプリングではないんですけど、エリカ・バドゥ(Erykah Badu)というソウルシンガーが、ライブバージョンのイントロでこの『Kind of blue』収録曲の「So What」を引用しているんです。

 ◇

 そして、沖野修也さんは実際に『JAZZ LP RECORD BAR』の空間でアナログレコードに針を落とし、マイルス・デイヴィスの「So What」と、エリカ・バドゥの「So What」を引用した楽曲を聴き比べた。ベースラインとテーマ部と、エリカ・バドゥが“人力サンプリング”したバージョンの解説を交え、双方の魅力を語った。

 ◇

沖野 カバー、サンプリングというよりも、ある意味マイルス・デイヴィスにオマージュを捧げた感じの引用なんですけど、R&BやHIP HOPのリズムと昔のジャズとの相性が良いんですよね。今回の企画を通して、若い人がジャズにもっと触れてもらえたらいいなと、個人的には思っています。

――普段聴いている音楽の中にもジャズの要素が含まれていたりするのですね。

沖野 そうです。だから今回の企画は、逆に“元ネタ探し”とか“宝探し”みたいな側面もあるし、そういった形でジャズに触れていく良い機会でもあると思います。

『ジャズ・LPレコード・コレクション』について

店内の様子

店内の様子

――DeAGOSTINI隔週刊 『ジャズ・LPレコード・コレクション』について率直にどう感じましたか?

沖野 まず、価格が信じられないなと思いました。色んな方が執筆されているライナーノーツも情報が充実していますし、読み物としてジャズの知識を高められるのではないかと感じました。

――『ジャズ・LPレコード・コレクション』の中で、お気に入りのレコードや、思い入れのあるものは何でしょうか?

沖野 僕が非常に好きなテナーサックス奏者なんですけど、ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)の『Page One』というアルバムです。その中の「Blue Bossa」という曲が有名で僕ももちろん好きなのですが、収録曲の「Jinrikisha」という曲が凄く好きでして、この曲をカバーしたんです。

 ◇

外観

バー入り口

 沖野修也はおもむろにアナログ盤を取り出し、ジョー・ヘンダーソンの「Jinrikisha」と、沖野修也がカバーした「Jinrikisha」を、共にアナログレコードでジャズを出力し、その場で聴き比べた。HIP HOPのリズムを取り入れたというカバーは、先の“ジャズとダンスミュージックの接点”の話を実際に音として『JAZZ LP RECORD BAR』を揺らし、生の感覚で体現させてくれた。

 DeAGOSTINI『JAZZ LP RECORD BAR』オープニングイベントの場で沖野修也は、ジャズの魅力、可能性を言葉に表し、音として空間に表し、アナログレコードのサウンド、ジャズの歴史、現代の音楽に影響する要素、録音物としての価値、あらゆる角度からアナログの魅力、そしてジャズの魅力をスウィングするように語った。

DeAGOSTINI隔週刊『ジャズ・LPレコード・コレクション』

 隔週刊『ジャズ・LPレコード・コレクション』は、パートワークとして初のアナログLPレコード付きのマガジン。本コレクションには、ジャズが最も輝いていた時代のスター達が続々と登場する。モード・ジャズの原点であるマイルス・デイヴィスの『Kind of blue』をはじめ、ジョン・コルトレーンの『Blue Train』、ビリー・ホリディの『Lady in Stain』など、ジャズ史に君臨した巨人たちの名盤がオフィシャル・ライセンスのもと、再現されている。

 ジャズ史に残る名盤が生まれた背景や、ミュージシャン同士の奇跡的な出会いや化学反応、クラブやバーに残るセッションや、アルバム誕生秘話などを掲載した読み応え十分なライナーノーツが、毎号音楽と共に楽しめる。

 「JAZZ LP RECORD BAR」は、代官山T-SITE GARDEN GALLARYで期間限定オープンされ、日替わりで初心者向けレコード講座やDJイベントも開催される。視覚的に、空間的にも、もちろん聴覚的にも、アナログレコードの魅力とジャズの世界へと誘われるジャズ・フィーリングBAR――、じっくりとその世界に浸れる貴重なスポットの出現にはジャズファンはもちろんの事、これからジャズに触れようとする方にとっても心躍らされるだろう。

(取材/撮影・平吉賢治)

参考資料

【DeAGOSTINI 『JAZZ LP RECORD BAR』】

▽開催期間
 2016年9月27日(火) 〜10月1日(土)
▽営業時間
 9月27日(火) 〜 9月30日(金) 16:00〜22:30(ラストオーダー 22:00)
 10月1日(土) 11:00 〜 19:30 (ラストオーダー 19:00)
▽開催場所
 代官山 T-SITE GARDEN GALLERY(東京都渋谷区猿楽町16-15)

▽日替わりトークイベントを開催
 ※定員50名/各回
 ※ワンドリンクのオーダー制
 27日(火)20:00〜21:00「はじめてのレコードオーディオ選び」(スピーカー:D&M)
 28日(水)20:00〜21:00「レコードの選びかた・扱い方」 (スピーカー:ディスクユニオン)
 29日(木)20:00〜21:00調整中
 30日(金)20:00〜21:00「DJ 大塚広子氏 SPECIAL EVENT」
 1日(土) 13:00〜14:00「ジャズ・ミュージシャン菊地成孔氏トークショー」
 1日(土)(時間調整中)調整中

▽提供メニュー
ドリンク=ビール(サントリー ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム)/ウイスキー/ソフトドリンク等予定。フード=ミックスナッツ/サラミ/スナック盛り合わせ/チョコセット等予定。

隔週刊『ジャズ・LPレコード・コレクション』概要

 ジャズ界に歴史を刻んだ名盤が「LPレコード」で毎号1枚付属する本邦初のマガジンシリーズ、隔週刊『ジャズ・LPレコード・コレクション』。付属するLPレコードは、マスター・テープからのリマスターに可能な限り挑んだ180gの重量盤で、質の高い音源を忠実に再現した。ジャケットデザインも、発売当時そのままの人気のデザインを採用し、当時発売された名盤ジャズレコードを新たな『新譜』として手に入れることが可能なマガジンシリーズ。

▽タイトル
 隔週刊『ジャズ・LPレコード・コレクション』
▽価格
 創刊号特別価格 990円
 第2号特別価格  1,990円
 第3号以降通常価格 2,980円 
▽創刊日
 2016年9月27日(火)
▽刊行形態
 隔週 火曜日発売(一部地域を除く)
▽刊行号数
 全85号(予定)
▽判型
 A4変型判(≒LPサイズ)/オールカラー8ページ(表周り含む)

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