<グラフ1>第1回~第8回AKB48選抜総選挙 各順位別得票数推移

<グラフ1>第1回~第8回AKB48選抜総選挙 各順位別得票数推移

 指原莉乃(HKT48)の2連覇という快挙、しかも過去最高の20万票超えという劇的な結果で幕を閉じた、第8回AKB48選抜総選挙。10年というAKB48の歴史の中でも、大きなインパクトを見せたこのイベントは、今回もテレビ中継やメディア報道などが大々的におこなわれ、相変わらずの注目を集める一大イベントだったとなったことは間違いない。

 しかし、全体の総数の動向には注意しておきたいところだ。総選挙は、“総議席”数「30」で始まった第1回開催時より、第8回では“総議席”数「80」(編注=80議席は2014年の第6回から)、さらに投票も多様な方法(編注=コンサートチケットに付与など)でおこなうことができるようになり、規模も手法も多種多様に“拡大”している。AKB48というグループ認知度の高さを考えれば、総得票数は上がっていくと考えるのが普通だろう。しかし、1位は過去最高の得票数を記録したが、果たしてその他の順位における傾向はどうだろうか。各順位の得票数で見られる傾向を別の視点で見れば、実は注目すべきポイントも存在するかもしれない。そこで今回は、第1回から第8回までの各順位の得票数データをさまざまな視点で考察、そこから見えるAKB48グループの傾向を探ってみたい。

 ただし、今回の分析は各回の当選議席者の得票数が対象であり、順位に食い込まなかった順位圏外メンバーの票、いわゆる「捨て票」については、あくまで視点から除外している前提であることをご承知いただきたい。

全体的な変化:総数傾向の収束化

 グラフ1では、第1回から第8回までの総選挙において、それぞれの順位の総数を折れ線グラフで示している。グラフの形状的な傾向としては、若干の部分的な上下はあるにしても、回数を増すごとにほぼ全体的に上昇傾向にあることがわかる。一方で、各選挙の総数の伸びを前回の総数との差で表したグラフ2に注目してみたい。回を増すごとに総計も増している傾向が見えるが、グラフ2を見るとその総数の伸びは一定でなく、第3回から第4回、第5回から第6回、第7回から第8回というタイミングで大きな落ち込みが発生していることが確認できるだろう。

<グラフ2>第1回~第8回AKB48選抜総選挙 各順位別得票数の前回比

<グラフ2>第1回~第8回AKB48選抜総選挙 各順位別得票数の前回比

 この落ち込みは、果たしてどのような原因があるのだろうか? 問題を定義する前に、それぞれの年で起きた事柄をまずは以下に紹介したい。

 開催回/年数   1位   2位   3位   候補者数  環境変化
第1回(2009年) 前田敦子 大島優子 篠田麻里子 98人  AKB48・SKE48を対象に初開催
第2回(2010年) 大島優子 前田敦子 篠田麻里子 104人
第3回(2011年) 前田敦子 大島優子 柏木由紀  150人 NMB48初参加、東日本大震災発生
第4回(2012年) 大島優子 渡辺麻友 柏木由紀  237人 HKT48初参加、前田敦子辞退
第5回(2013年) 指原莉乃 大島優子 渡辺麻友  246人 秋元才加等不参加、元メンバー等の参加可
第6回(2014年) 渡辺麻友 指原莉乃 柏木由紀  296人 AKB48 Team8初参加、大島優子、板野友美、篠田麻里子ら卒業、海外グループ参加可、この年に襲撃事件
第7回(2015年) 指原莉乃 柏木由紀 渡辺麻友   272人  小嶋陽菜、松井玲奈など主力不参加、高橋みなみ最後
第8回(2016年) 指原莉乃 渡辺麻友 松井珠理奈  272人  NGT48初参加、梅田彩佳や宮澤佐江など主力卒業

 ざっと見ると、主力メンバーの卒業や姉妹グループの参入などが大きな影響を与えているのではないかと考えられる。しかし、この票数の伸びに対する影響が、完全にその理由に収束できるかというと、厳密には矛盾も生じるため、そう言い切ることも難しい。たとえばグループの追加という意味では、第3回ではNMB48が新たに加入、総票数は大きな伸びを見せている。一方で、第4回のHKT48が新規加入、伸びは停滞する方向となっている。

 また、主力メンバーの卒業については、確かに上位ランキング者ともなると、一人で10万票程度の増減が発生するなど、大きな影響があると考えられるが、これが決定的な要因とも言い難いところではある。たとえば第6回では大島優子をはじめとした、大きな支持を集めた主力メンバーの卒業にもかかわらず、第8回は卒業メンバーも第6回と比較すると一人少ないにもかかわらず、票数の伸びは第6回に比べても大きく伸び悩んでいる。

 特に大島は、第7回に参加していれば上位ランクも予想され、篠田麻里子も10位以内のランキングも見込めたかもしれない。板野友美も20位以内にランクインしたと仮定すると、単純にこの3人がいなくなることで失われると予想される票数は20~30万票程度。一方、第8回に卒業したメンバーとしては、宮澤佐江が10位以内、またはあわよくば神7入りということもあったかもしれない。そう想定すると、50位前後の梅田彩佳の票数と合わせると、第8回は大きく見積もっても12~3万票程度と推定される。しかし票の減少としては、第6回のほうが伸び小さくなると予想されるにもかかわらず、実際には第8回のほうが伸びは小さくなっている。

 ちなみに第6回開催の際に起きた襲撃事件については、ショックの大きさや自粛ムードで投票数が落ちた、とみる一方で、励ましの票も増えたことが減少に歯止めをかけたという意見もある。余談ではあるが、その致命的な打撃を受けた第6回より、さらに小嶋、松井と大きな支持のあるメンバーの不参加と、大きな落ち込みが予想されながら逆に大きな伸びを見せていることは驚異的と感じられるとともに、興味深い傾向でもある。これらの考察からは、各回の総票数の伸びに対して、卒業や新規グループ参加などの立候補者の増減といった理由以外の要因が、別に存在するという仮説も考えられる。

 たとえば1年ごとに何らかの、表には現れない要因があるということも考えられる。簡単にいうと「特に実施する上で何か新しいことをするわけではないが、2回に1回は伸びが落ち込む方向に無条件に動いてしまう」ような要因が、毎回総選挙を実施する中で内在するという考えだ。もしそういう要因が存在するとすれば、その核心を明らかにするのはかなり難しい。また今後続いていく選挙戦の中で、ある程度長いスパンで傾向を観察し、同じ現象が発生するかどうかを確認していく必要もあるだろう。

 一方で、第3回から第4回、第5回から第6回では“議席”数の増加など、選挙条件の改革がおこなわれており、それが投票数の伸びを減少させる要因となるという仮定も、一つ考えられないだろうか。ただしこの理由で考えると、第8回の落ち込みの理由はまだ別の要因での落ち込みということになる。第7回と第8回の選挙で、たとえば“議席”拡大のような、直接選挙戦に影響するようなルール改正による差などは、基本的にはないと考えられる。第8回で何らか新しい題材が提供されたという発表は公にはないため、イベント自体から起因する伸びの落ち込みを特定するのは難しいが、AKB48グループの現状から考えて、特定の数値減少を招く要素があったとすれば、どうだろうか。

部分的な数値の下落から見える、グループとしての課題

 第8回の伸びの減少傾向を、各順位における前回との差分という形のデータで見ると、実は第3位から第19位の得票数で伸びがマイナス傾向になっていることがわかる。この現象を微視的に考察するために、グラフ3-1で各総選挙の各順位における前回からの差分を、第1位から第30位まで折れ線グラフで表した。さらにわかりやすくするために、第6回と第7回、第7回と第8回のみの結果をグラフ3-2で表している。このグラフから、第8回での票数の落ち込み傾向が顕著に確認できるだろう。

<グラフ3-1>第1~8回AKB48選抜総選挙 第1位~30位の得票数の前回比

<グラフ3-1>第1~8回AKB48選抜総選挙 第1位~30位の得票数の前回比

<グラフ3-2>第6~7回、第7~8回AKB48選抜総選挙 第1位~30位の得票数の前回比

<グラフ3-2>第6~7回、第7~8回AKB48選抜総選挙 第1位~30位の得票数の前回比

 第8回での落ち込み(前回からのマイナス票)総数は約20万票。その中でも特に神7と呼ばれる順位の、第3位~第7位までの落ち込みは約12万票と大きな割合を占めており、以前落ち込みを見せた第5回~第6回の差分と比較しても、各順位で5千~1万5千票程度、特に第3位は5万票とかなり大きな落ち込みの増加を見せている。逆に第8位以下については、この落ち込みは第5回~第6回の差分よりは、わずかだが持ち直している恰好にも見える。

    第1回      第2回       第3回         第4回 
1位 前田敦子(4,630) 大島優子(31,448) 前田敦子(139,892) 大島優子(108,837)
2位 大島優子(3,345) 前田敦子(30,851) 大島優子(122,843) 渡辺麻友(72,574)
3位 篠田麻里子(2,852) 篠田麻里子(23,139) 柏木由紀(74,252) 柏木由紀(71,076)
4位 渡辺麻友(2,625) 板野友美(20,513) 篠田麻里子(60,539) 指原莉乃(67,339)
5位 高橋みなみ(2,614) 渡辺麻友(20,088) 渡辺麻友(59,118) 篠田麻里子(67,017)
6位 小嶋陽菜(2,543) 高橋みなみ(17,787) 小嶋陽菜(52,920) 高橋みなみ(65,480)
7位 板野友美(2,281) 小嶋陽菜(16,231) 高橋みなみ(52,790) 小嶋陽菜(54,483)
8位 佐藤亜美菜(2,117) 柏木由紀(15,466) 板野友美(50,403) 板野友美(50,483)
9位 柏木由紀(1,920) 宮澤佐江(12,560) 指原莉乃(45,227) 松井珠理奈(45,747)
10位 河西智美(1,890) 松井珠理奈(12,168) 松井玲奈(36,929) 松井玲奈(42,030)
11位 小野恵令奈(1,838) 松井玲奈(12,082) 宮澤佐江(33,500) 宮澤佐江(40,261)
12位 秋元才加(1,599) 河西智美(11,080) 高城亜樹(31,009) 河西智美(27,005)

    第5回        第6回       第7回        第8回
1位 指原莉乃(150,570) 渡辺麻友(159,854) 指原莉乃(194,049) 指原莉乃(243,011)
2位 大島優子(136,503) 指原莉乃(141,954) 柏木由紀(167,183) 渡辺麻友(175,613)
3位 渡辺麻友(101,210) 柏木由紀(104,364) 渡辺麻友(165,789) 松井珠理奈(112,341)
4位 柏木由紀(96,905) 松井珠理奈(90,910) 高橋みなみ(137,252) 山本 彩(110,411)
5位 篠田麻里子(92,599) 松井玲奈(69,790) 松井珠理奈(105,289) 柏木由紀(92,110)
6位 松井珠理奈(77,170) 山本 彩(67,916) 山本 彩(97,866) 宮脇咲良(78,279)
7位 松井玲奈(73,173) 島崎遥香(67,591) 宮脇咲良(81,422) 須田亜香里(69,159)
8位 高橋みなみ(68,681) 小嶋陽菜(62,899) 宮澤佐江(75,495) 島崎遥香(68,126)
9位 小嶋陽菜(67,424) 高橋みなみ(57,388) 島崎遥香(73,803) 児玉 遥(60,591)
10位 宮澤佐江(65,867) 須田亜香里(48,182) 横山由依(63,414) 武藤十夢(58,624)
11位 板野友美(63,547) 宮脇咲良(45,538) 北原里英(61,566) 横山由依(58,610)
12位 島崎遥香(57,275) 宮澤佐江(44,749) 渡辺美優紀(55,715) 北原里英(50,190)

 ※かつて存在していたメディア選抜の12位までの順位。第4回からメディア選抜は廃止、選抜に統合された。選抜メンバーは第4回から16位までに。

 特にAKB48のイメージで核となる部分を担うこの順位が大きく票数を落としているということは、AKB48というグループの一般的な認識に大きな変化が現れているとも考えられるだろう。この大きな変化の要因を考える一方で、逆に落ち込んでいる順位と対照的に、順位を伸ばしている部分に着目してみたい。そのポイントとしては2点、最初に述べた、指原が獲得した第1位、もう一つは第20位以下の“議席者”というポイントだ。

部分的に突出した値に対しての傾向

 前回第7回で3万4千票、第8回で4万8千票という急激な伸びを見せている指原の得票数は、全体的な傾向からすると途方もない数字のようにも見えるが、近年指原に対して「セルフプロデュース能力の高さ」という点が高く評価されているということを考えてみると、強引な言い方をすれば、これはある意味その能力で「AKB48という枠を超えた」活動を展開、凡長なイメージに傾きつつあるAKB48グループのイメージに対し、新たなイメージを作り出そうとするその動きが、順調に広がりを見せているという解釈も、できるかもしれない。

 一方、20位以下(編注=選抜メンバーは21位まで)の順位については、わずかにも見えるかもしれないが、得票数はほぼ上昇傾向にある。前回から比較すると100票以下のわずかな伸びという議席者もあるが、60位以内に位置する者の中には、前回差分票の2~3倍の伸びを記録している者もいる。この傾向は特に近年、AKB48グループ内で叫ばれている「世代交代」という状況とイメージを重ね合わせることもできるだろう。

 特に7月8日に公開されたAKB48ドキュメンタリー映画『存在する理由 DOCUMENTARY of AKB48』でも大きく描かれていたポイントであるが、2015年8月に発足したNGT48という新たなグループ、さらに2014年の発足から、徐々にその勢いを伸ばしつつあるAKB48チーム8の台頭(チーム8でランクインしたのは、坂口渚沙・70位)など、AKB48グループという枠の中でも新たなコンセプトを持ったグループが、勢力を広げつつある。なかでもHKT48の勢いは顕著だ(編注=第8回は19人がランクイン。SKE48・20人、NMB48・11人)。

 また開票結果発表の場として、今回は新たに新潟で選ばれたことは、多かれ少なかれNGT48メンバーへの後押し(編注=NGT48メンバーでランクインしたのは、北原里英・12位、柏木由紀・5位、加藤美南・76位)があったことも間違いない。その意味でも「実は下位グループの盛り上がりが熱い!」という動きに、皆が注目し始めているという傾向も見えてくるのではないだろうか。このエリアの順位者が、今後どのように伸びてくるのかも、今後AKB48の動向を観察していく中では興味深い点であるといえるだろう。

AKB48グループの変革が問われる時期

 さらにAKB48グループの外をのぞいてみても、一時期いわれていた「アイドル戦国時代」の風潮はあまり強く感じられなくなっているものの、現在は知名度、人気を集めるアイドルグループが無数に存在することも確かだ。最も気になるのは、AKB48の公式ライバルの乃木坂46、さらにその妹分として昨年デビューを果たした欅坂46の動きなど。その意味では、アイドルという枠の中で今までAKB48に向けられていた注意が、分散されているという向きも考えられる。

 その意味でも、前項で挙げた2つの要因、そして中枢域の伸びの不振から見える傾向は、「今後AKB48グループが生き残っていくために、まさに現在までに築き上げられたAKB48の既成イメージを、打ち破っていかなければならない」というAKB48グループに突き付けられた大きな課題に結びつくようにも見える。特に神7~選抜メンバーでここ一番の伸びがまさしく「伸び悩んでいる」というのは、この大きなインパクトが求められるエリアに、それほどの衝撃を与えられる人材が順位として入って来ていないという状況にも見える。その意味でこの第8回の総選挙における票数の伸びの傾向には、彼女らが変化を求められている現れとも解釈できるのではないだろうか。

 今回11位にランキングされた総監督、横山由依が受賞の壇にて、これからのAKB48グループの行方を「第2章」とコメントしたことは、AKB48グループが世から新たな課題を突き付けられているという意味と解釈すると、妥当な表現とも見え、彼女らがこの状態をどう乗り越え成長を果たすのか、その課題をクリアしていくことは、まさに彼女らAKB48というグループのストーリーを続けていく大きなカギになるはずだ。今回述べた論考はあくまでさまざまな仮説を積み上げた上での考察に過ぎない。そのため本来は、もっと裏付けのあるデータや前提条件などを用意する必要がある。また同時に、今後の総選挙の推移についても注意深く観察を続けていくことも大切になるだろう。その意味では今後も彼女らの動向には注視していく必要があるととともに、新たなステージへの変革が、さまざまな形で現れてくることを、願ってやまないところでもある。(文・桂 伸也)

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