プリンスが21日、米ミネソタ州の自宅兼スタジオ「ペイズリー・パーク」で意識不明の状態で発見され、その後死亡が確認された。享年57歳。プリンスの独創的な音楽性、ポップ・アイコンとしての唯一無二の存在感は世界中のアーティストに多大な影響を与えた。独創的な感性で自身の作品、存在として昇華させたプリンスのその“生き様”は、どのような音楽性でシーンのレジェンドとなり、あらゆるアーティストにインスピレーションを与えたのだろうか。プリンスが残した多大な功績を振り返ると共に、プリンスの血を受け継ぐ国内のアーティストが彼を通じて、どのように音楽界に変化をもたらしたのか? プリンスの音楽性が日本に与えた影響と、アーティストとしての圧倒的な存在感、その音楽性を、時代を創りあげたスーパースターの急死という事実を受け、今改めて振り返ってみたい。

プリンスとはどういった存在か?

 プリンス(Prince Rogers Nelson)は、米ミネソタ州ミネアポリス出身のミュージシャン。シンガーソングライター、作曲家、音楽プロデューサー、俳優、ダンサーなど、音楽を軸に多岐に渡る方面で活躍をした人物だ。音楽活動においては、ギター、ドラム、ベース、鍵盤など20種類以上の楽器演奏を自在に操り、作詞作曲、編曲にプロデュースと、全ての工程をこなすマルチアーティスト。

 「美貌」「中性的魅力」「独創性」というフレーズが何ともしっくりくるプリンスの存在感は、他になかなか例えようがなく、彼以外に替えがきかないものだろう。それはプリンスが、性別を表す(♂)(♀)と、管楽器の形を組み合わせたようなシンボルマークを掲げたり、メイン楽器であるギターは基本的にオリジナルシェイプで新たに作り出し、また、既存モデルのギターであっても改造して使用するといった「独自性」にこだわっていた部分からも表されている。“カリスマ”と評されるプリンスは、全ての面でその独創性を発揮する事で、その唯一無二のアーティスト性が醸されていた。

プリンスが残した功績

 国内で最もなじみのあるプリンスの楽曲といえば、総合格闘技K-1のオープニング曲の「エンドルフィンマシーン」だろうか。プリンスは「パープル・レイン」「KISS」など数々の代表曲で知られ、12作品のプラチナアルバム、30曲のトップ40シングルを生み出し、アルバム・シングルの総売り上げは1億2000万枚以上。グラミー賞を7度受賞、アカデミー賞の栄冠にも輝いた経歴を持つ。セールス面や受賞歴から見ても、“時代を創りあげたスーパースター”という存在である事は揺るがない事実だろう。

 数々のアーティストに影響を与えた世界的な“ロック・レジェンド”プリンスとは、ミュージシャンとして、一体“何者”だったのだろうか。「偉大なポップアーティスト」「生命の叫びを音にするギタリスト」「4オクターブ半のレンジを持つボーカリスト」「空間を支配するエンターティナー」どれも彼を表すのに大袈裟なフレーズではない。彼は一体どのような音楽性で時代を走り抜け、どういった面で、あらゆるアーティストに影響を与えたのだろうか。

多岐に渡るプリンスの音楽性

 プリンスの音楽は、ファンク、ディスコ、ソウル色が強く、そしてまんべんなく“ポップ”という特色がある。黒人音楽だけではなく、「ロックに改革をもたらした」とも言われるプリンスの音楽性。彼が影響を受けたとされているアーティストは、ジェームズ・ブラウン、カーティス・メイフィールド、ミック・ジャガー、カルロス・サンタナ、ジョニ・ミッチェル、レッド・ツェッペリン、そしてPファンクなどが挙げられ、ブラックミュージックを基軸としている部分が色濃くみられる。これらある種「スタンダード」とも言える音楽傾向を自身の血として、オリジナリティ溢れるギタープレイや斬新なシンセサウンドなど、彼の独創を加え、キャリアと共に「プリンス独自のサウンド」として進化させていった。

 楽器面に着目すると、特筆すべきはやはり“咆哮”しまくるギタープレイが際立って挙げられるだろう。そしてファンキーなリズムアプローチが生み出すセクシーなグルーヴ。この2点はプリンスのサウンド面の軸として支えられた点だろう。パフォーマンス面に目を向けると、あまりにもノリノリで、フィジカルで、“性的”なパフォーマンスがあまりにも印象的だ。オーディエンス全員と“交わる”ようなライブはプリンスならでは。彼のこのあたりの点も多くのアーティストに多大な影響を与えた。

プリンスに影響を受けた国内アーティスト

 プリンスの死を受け、国内では久保田利伸、布袋寅泰、Chara、河村隆一、スガシカオ、くるり・岸田繁、T.M.Revolution西川貴教ら、他にも数多くのアーティストから続々と追悼の意が寄せられた。数多くのアーティストがプリンスを敬愛している事を物語っている。

 ソウルシンガーの久保田利伸からは、ソウル、ディスコ寄りのリズムアプローチ、ブラックミュージックの発展という点で、プリンスの影響を感じる事が出来る。ダイナミックかつポップなメロディラインとソウルのマッチングは、プリンスの血を受け継いでいる事を感じられるだろう。久保田利伸は、プリンスの洗練された独自のブラックミュージック、その“音楽性”に影響を受けたソウルミュージシャンの一人だ。

 西川貴教はプリンスに対し「Prince and The Revolutionの自由な音楽性に憧れて、T.M.Revolutionは生まれました」(コメント一部抜粋)と綴るほど、思い入れのあるアーティストのようだ。西川貴教の自由な音楽性や、破天荒なパフォーマンス、エンターテイメント性は、プリンスから影響を受け、その意思を受け継いでいるという事が彼の多岐に渡る活動からうかがえる。プリンスの“生き様”に影響を受けたアーティストの一人だ。

 歌手のスガシカオは、自身のinstagramで、プリンスの遺作となったアルバム『HITNRUN Phase Two』のCD盤の写真と共に追悼の意を綴った。スガシカオは「ファンク番長」の異名を持つほどの“ファンカホリック”(編注=スガシカオのアルバム名にもなった『ファンク中毒』を意味する言葉)だ。J-POPとファンクの融合という難テーマを形にしたスガシカオの楽曲からは、演奏面でのキレが注目される事が多い。ギターのファンクアプローチや、咆哮するリードプレイからは、自身のオリジナリティとなったプリンスの血を匂わせている。タテに踊るベースプレイや鋭いリズムセクションも然り、プリンスの“サウンド”に影響を受けたシンガーの一人だ。

 “和製プリンス”とよばれる程の存在、岡村靖幸はプリンスの“存在”そのものに影響を受けたアーティスト。マルチで才能豊かなクリエイターで、さまざまな楽器、セルフプロデュースもこなすマルチプレイヤーである点は、プリンスとの共通項でもある。「セクシーなダンス」や「替えのきかないポップセンス」そして、独創性が外見に滲み出た「魅力的なルックス」、様々な音楽性を取り入れて独自の世界観を表現する「独創性な感性」と、プリンスの申し子のような存在だ。それでも決して「プリンスの2番煎じ」ではなく、「岡村靖幸」という唯一無二の存在である点、これこそ最もプリンスに影響を受けた、という事が言えるだろう。

プリンスという存在のフィードバック

 音楽面で様々なアーティストに影響を与えたプリンスだが、独創的で革新的だったのはこと音楽に留まらなかった。例えば、メジャーレーベルを離れて独立しインディーズとして活動をする事は、今では珍しい事ではなく、様々なアーティストが実行している。また、音源をインターネットで売る、という事も同じく今では当たり前の事だ。しかし、プリンスはこれらを今から10年、20年も前からやっていた。

 こういった先見の明が伴った行動も、そして音楽も、パフォーマンスも、全てが斬新で独創的だった「プリンス」という存在が残した功績。そして、様々なアーティストに与えた多大な影響。それらは、今後の音楽シーンのみならず、あらゆる分野で、あらゆる人間が、その生き様や独創的発想、クリエイティブな着想に火をつけた。

 プリンスの音楽、そしてその存在を愛した人間すべてに影響を与えた人物、それがプリンスという唯一無二の存在だろう。プリンスという存在が残した音楽、作品、生き様は、彼のけたたましくセクシーなギターサウンドのように、永遠にフィードバックされるのだろう。(文・平吉賢治)

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