音楽への想いを語る福山雅治

音楽への想いを語る福山雅治

<福山雅治が触れた世界の音楽と自身の音楽における「今と昔」>
 デビュー25周年を迎えたシンガーソングライターの福山雅治が“音楽の源流”を世界各地に訪ねるドキュメンタリー番組『福山雅治 SONGLINE ~歌い継ぐ者たち~』が、NHK総合で25日から放送される。20日には、東京・渋谷のNHK放送センターで取材会が、福山出席のもとでおこなわれた。この取材会に小紙媒体の記者も出席し、その模様を報じた。この場では、福山が、世界の音楽に触れた体験やそれによって起きた内的な変化について熱心に語る姿が印象的で、興味深い内容であった。そのため、この一問一答の全てを書き起こしして以下に伝えたい。

福山雅治 本日はお集り頂きありがとうございます。『福山雅治 SONGLINE ~歌い継ぐ者たち~』についてお話しさせて頂ければと思います。よろしくお願いします。

――今回、色々な場所を訪れて起きたハプニングや、特に印象に残った出来事がありましたらお願いします。

福山雅治 今ご覧になっていただいた映像(質疑応答前に取材陣に放映した10分のダイジェスト映像)で、ヨルング族(オーストラリア北部)という民族の所に泊まりに行ったんですけど。普通に、いつもワニがそこら辺にいるんですよ。ワニが沢山いるとは聞いていたんですけど、そんなに近くにいるとは聞いていなくて。泊まる施設も無いのでテントを立てて寝たんですが、本当に…ちょっと帰らせて頂きたいなと思いました(笑)。怖いな、と。

 我々が泊まるところは2メートルくらいある土手みたいになっている所で「そこまでワニは上がって来ませんから」という話だったんですけど、ワニがそういう所でも上がってくる映像を「ホットスポット」という番組(福山が出演していた同NHKの自然ドキュメンタリー)をやっている時に見たけどな、とびびっていました、正直。でも幸い、ワニは来なかったんですけどね。ただサンドフライ(虫)というやつ。それに物凄く噛まれまして、かなり跡が残りましたね。先ほどの「ホットスポット」という番組で慣れているつもりだったんですけど、今回の旅で自然の生き物の力、音楽以外の力ですけど、それを感じさせられましたね。

 あとはトン族(中国南西部)の皆さん。最初にお酒をぐわっと振る舞ってくれたんですけど、あれも聞いてなくて(笑)。「あれあれ?」と思って結構飲まされてちょっと酔っぱらっちゃいましたけど、それも嬉しいハプニングでしたね。

――トン族は歌で愛を伝えたりかなり珍しい文化ということですが、どう思われましたか。あとは結婚式にも参列されたということで感想をお願いします。

福山雅治 まあ、僕自身の作品の中にもラブソングというものがありまして、でもあまりラブソングの話をしてしまうと月9(4月スタート予定の自身主演ドラマ)の宣伝になってしまうんですが。やっぱり言葉にならない想い、言葉よりもっと伝えたい想いというのが歌となってラブソングとなって作られていく。それは民族や国を越えて今も昔もあるんだなと共感できましたね。

――福山さんは家で(ラブソングを)歌われるんですか?

福山雅治 家では歌わないですね(笑)。

福山雅治

福山雅治

――10分の映像の中でディジェリドゥ(伝統楽器)の音を腹で受け止めるシーンなどは強烈なものがありました。番組タイトルの「SONGLINE」は、歌に、歴史や愛や出来事を込めて伝えるもの、ということですが、実際に旅をされて世界の音楽に触れてご自身の中にその様なものを感じましたか。

福山雅治 今回、この番組の制作に参加させて頂くに当たって、前身の番組「SONGSスペシャル ポップスの遺伝子」(NHKと台湾のTVBSの共同制作)が2014年にあったんです。その時に「いったい音楽というものはその国にどの様に生まれ根付いていって、今、日常で親しむようなポップス、ロック、ダンスミュージックに進化していったのか」ということから各国のポップスになる前の源流を現在活躍してるポップスのアーティストたちと探究したんです。

 でも、さらに世界各国には色んな音楽がある。日本人にとってはロック、ジャズ、ブルースや西洋音楽というものが馴染み深いものではありますけど、日本にも特有の民謡であるとか、様々な音楽があってそれがいつの間にか色んな文化の交流で現在の音楽になっている。で、世界にも様々な、ポップスになる前、文化が混ざり合う前の音楽が存在しているはずだと。それは、いわゆる商業音楽とは違う音楽なんですよ。

 僕も中学生の頃、THE MODSとかARBとかが好きでテレビから流れてくる音楽とはまた違うロックバンドというものに触れた時に「格好いい!」と思って感動をもらったのが、ギターを始めるきっかけになったんですけども。そこからいつか「音楽でご飯が食べれたらいいな」と思って上京して、今があるんです。

 それはつまり「音楽を販売する」ということ。だからタダでは作れない。製作費もかかる。レコード会社なりプロダクションなりに出資してもらって音楽を作って、宣伝して頂いて、販売させて頂いて、買って頂いて、そして、音楽で食べれるというのが、プロデビューして以降の活動なんです。そして去年、皆さんの応援と支えによって25周年を迎えたんですけど、その時に思ったのは、お金の発生しない音楽から(もともと音楽は)始まったはずなんですよね。どっかから聴いたとか、自分で勝手に始めたとか。そういうまったくビジネスではない音楽というのものが今も世界に存在しているのではないかと。

 番組のタイトルでもあるイギリスの作家ブルース・チャトウィンが書いた「The Songlines」という本にある「ソングライン」という言葉をたまたまNHKさんの番組で知って、非常に興味が沸いたんです。歌で、民族の歴史や想いを繋げていく。歌の物語、歌の歴史と言うか、言葉ではなくて歌で繋げていく、という独自の文化。商業音楽というものと全く対極にあって今も受け継がれている音楽に、非常に興味を持ちまして。忘れていないつもりだし、大切にしているつもりだったんですけど、自分が音楽に対する接し方や初期衝動をもう一度探りたくて、確かめたくてアボリジニやトン族(中国の南西部・貴州省に暮らす少数民族)の所に行ったというところが今回の始まりだったんです。

――ご自分の中にそのような「ソングライン」を発見できましたか。

福山雅治 再発見…できたと思います。先ほども「家では歌わない」という話をしたんですけど、まあ実際、家では歌わないですけどね。お友達や先輩・後輩なんかと飲みに行ったときにそこにギターがあれば、まあぽろっとは歌ったりするんです。それは、その場の空気で「みんなに楽しんでもらえたらいいな。なんか俺も楽しくなってきた」というそれだけの理由で。今でもそういう風に(仕事でなくても)音楽をやりたくなるというのは、25年間やらせて頂いてもやっぱり音楽は好きなんだなということですね。それを今回の旅で再確認させて頂いたと思います。


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