高い演奏技術と唯一無二の存在感を放つ人間椅子。世界からも注目を集めるキャリア27年のバンドは若年層のファンも増えている

高い演奏技術と唯一無二の存在感を放つ人間椅子。キャリア27年のベテランは若年ファンも獲得している

 3人組ロックバンドの人間椅子が3日、ニューアルバム『怪談 そして死とエロス』をリリースした。27年というキャリアを誇る人間椅子は歩みを止めることなく突き進んできた。昨年1月には渋谷公会堂、そして、11月には、メタルの帝王とも言われているオジー・オズボーン主催フェス『OZZ FEST』などでもパフォーマンス。その卓越した演奏技術などで新たなファンも獲得した。前作『無頼豊饒』(ぶらいほうじょう)から約1年8カ月ぶりにリリースされた本作は、昨年吸収したものを吐き出すかのように、人間椅子のこだわりと、彼らならではの個性的な魅力が詰まったアルバムである。その本作のコンセプトとサウンド面、そして、アルバム制作での新しい試みや、人間椅子が考えるロック像などについて話を聞いた。

政治的活動はせず批判するのがロック

和嶋慎治(Vocal&Guitar)

和嶋慎治(Vocal&Guitar)

――2015年はどんな年でしたか

和嶋慎治(Vo&G、以下和嶋) 2015年はいろんなことを吸収した年だったなと。20数年振りに渋谷公会堂でライブをやれて。数年前まではやれるとは思っていなかったんですよね。2013年に『OZZ FEST』に出たんですけど、その時に「ああ、バンドはきっと再デビューする」と思ったんです。

――再デビュー?

和嶋 再デビューがなぜかというと、それまで僕たちは非常に停滞していたと思うんです。セールスもそれほどではなく、動員も少ない時期がずっと続いたんですよ。『OZZ FEST』に出る何年か前から徐々にお客さんに受け入れられるようになって、良い流れが出てきたなかでの『OZZ FEST』で、ここで一気に扉が開くと思ったんです。このフェスは若い方や海外の方も注目してくれるので。現実、その通りになって、また渋谷公会堂でライブが出来るようになったんです。昨年は再デビューして渋谷公会堂まで2年で行けて非常に良い流れでした。

――渋谷公会堂でのライブはどうでしたか

和嶋 感動しましたね。お客さんが一緒に応援してくれているというのがすごくわかったんです。

――ここから変わっていったのですね

和嶋 この渋谷公会堂をきっかけに色んなところからお声が掛かるようになりました。対バンイベントに呼んでもらえたり、アニメのエンディングテーマをやりませんかとか。エンディングテーマは、他にも若くて勢いのあるバンドが担当しているんですけど、その中に僕らも入れてもらえて、それも嬉しかったですね。

――そのエンディングテーマとなった「泥の雨」は歌詞がとても意味深いですね

和嶋 いろいろな想像をしてくれれば良いかなと思っていて。ストレートに言ってしまうと差し障りがあることも、歌にすれば言える。活動していくにあたり政治的な面を出さずにやりたいわけですよ、何か批判するにしても。あまり政治的活動をせずにメッセージとか、パフォーマンスで現代の批判をしたり、楽しませたりするのがロックだと思うんです。「泥の雨」は非常にロック的なタイトルだと思いますね。

――アルバムの曲作りはこの「泥の雨」からスタートしたのでしょうか

和嶋 そうですね。これを作った時にアルバムに入れたいと思いましたし、そこから何となく今回のアルバムの流れが出来てきました。

――アルバム制作のスタートはいつ頃から?

和嶋 秋になってからですね。それまでイベントがあったり、劇伴もやったりしていたので。そんな感じでめまぐるしく流れていき、外部からの刺激を受ける1年だったんじゃないかな。

間違いではなかった、痛切に感じた海外ロックとの違い

ナカジマノブ(Vocal&Drums)

ナカジマノブ(Vocal&Drums)

――2年ぶりの『OZZ FEST』はどうでしたか

和嶋 最初の『OZZ FEST』出演時は、とても嬉しくて「一つの夢が叶った」ということだけでいっぱいだったんですね。自分たちはもうそれっきりだと思っていたわけですよ。でも、今回も盛り上がったし、みんないっぱい応援してくれた。2回目となると余裕と言ってしまっていいのかわからないけど、舞い上がって演奏するんじゃなく、お客さんと一緒に『OZZ FEST』を楽しんでやれたんですよね。

ナカジマノブ(Vo&Dr、以下ナカジマ) 『OZZ FEST』に「もう一度」と言ってもらえたら嬉しいなという気持ちでしたね。それで、実際に言ってもらえたので誇りに思いました。

鈴木研一(Vo&B、以下鈴木) 僕らはそんなに動員数が多かったわけじゃないのに呼んでくれたということは、音楽を評価してくれたということなので嬉しかったですね。

――今でもライブは緊張されるのですか

和嶋 どのライブでも緊張するんですけど、あんまり人が多いとどこか飛んじゃう部分もあるかな。

鈴木 むしろ、小さいホールの方が緊張しますね。大きい場所だと目が悪いからかも知れないけど、人の顔がわからない(笑)だからリラックスしてできるんだけど、目の前の人と目が合うようなライブハウスだと緊張するかな。

和嶋 そうそう、目が合ったり、目を外したりとか「あ〜、全然盛り上がってないよ」とか、近いとすぐわかるわけですよ。「これじゃダメなんか」と思いながらやるわけです(笑)人が大勢塊になっているのは異様なオーラを感じるけど、あまり細かいところはわからないので心が折れたりとかはないですね。なので、客観的になれたんですよ『OZZ FEST』は。

――『OZZ FEST』で気になったバンドはいましたか

和嶋 色々観ましたけど、やっぱりオジー・オズボーンのフレンズ(編注=オジーが気に入っているバンド)はスゴいと思いましたね。本人たちも楽しんでやっているのがわかったし、本当にこの人たちは好きでやってきたことが身になったタイプなんだなと。そして、いっぱいお客さんを楽しませる超一流の文化祭だなと思ったんだよね。それはやっぱりオジー・オズボーンがキャッチーな面を持っているからだなと。出演したことでいろいろ勉強になったんですよ。チャーミングなんだよねオジーって。そういうのが凄く必要なんだなと思った。だから演奏だけ上手くても、曲がカッコイイというだけでもダメなんだよね。人としての何かがプラスにないと。

――日本と海外のロックの違いは言語以外に感じたことはありますか

和嶋 ロックはやっぱりアメリカとイギリスの文化だと思うんです。その文化圏の人が演奏するサウンドと、文化圏ではない人が演奏するサウンドは違うと思ったんですよ。子供の時から聴いているから自然に出るというのもあるし、欧米人とアジア人とでは肉体の構造の違いもあるし、出てくる音が全然違うなと。一言で言うならば凄くパワーとエネルギーがある。あのロックっぽさという部分では到底敵わない。日本人としてロックをやるにはどうしたらいいんだろうと考えたりしました。外国人にはない何かを入れないと外国の方たちは認めてくれないだろうなと。

――それはデビュー当初から考えていたことでもありますよね?

和嶋 そうですね。だからバンド名も日本語にしたし、日本語でやらなきゃなというのは昔から変わらないんですけど、目の当たりにするとより一層、痛切に思ったし、自分たちがやっていることは間違いじゃなかったなとも思いましたね。

――『OZZ FEST』の経験が今回のニューアルバムに反映されたのでしょうか

和嶋 曲はあらかた出来ていたけど、反映されたと思います。

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