中森明菜6年振り作品に秘められた思いとは【1】

中森明菜。6年ぶりオリジナルアルバムに秘められた思いとは

 歌手の中森明菜(50)が12月30日に6年ぶりとなるオリジナルアルバム『FIXER』をリリースする。2010年から体調不良で活動休止していた明菜は昨年、NHK紅白歌合戦に12年ぶりに出演。米・ニューヨークからの生中継で新曲「Rojo -Tierra-」を歌い、話題を集めた。実のところ、楽曲制作は昨年夏から1年かけて進められていた。心身共に復活した明菜が音楽と向き合い、今やりたい事を表現したのが今作。50歳という節目に届ける意欲作で彼女が伝えたかったこととは――。

 昨年夏に発売された『オールタイム・ベスト -オリジナル-』は、オリコンチャートで自身25年ぶりとなる3週連続でトップ3入り。更に、同時発売された『オールタイム・ベスト -歌姫(カヴァー)-』も好調なセールスを記録。当時はまだ、活動再開は公になっておらず、表立った活動がないなかでの上位ランクインは、衰えぬ人気の高さを示した。

 そして、その年の紅白歌合戦に12年ぶりに出演。米・ニューヨークのレコーディングスタジオからの生中継で明菜は、新曲「Rojo -Tierra-」を初披露。低音に響く美声は健在で、放送直後からネット上で話題に。翌年1月に復帰第1弾シングルとして発売されると、オリコン初登場8位を記録し、20年4カ月ぶりにトップ10入りを果たした。

 久々の生歌を聴いたファンはネット上で「流行すたりのない本物の名曲がたくさんある」「若い子たちは知らないだろうけど、凄い歌上手」「今作で改めて色々な世代に聞いて欲しい」と絶賛の声を挙げ、なかには「やっぱり明菜の低音は美しい」と改めて彼女の歌声に心酔しするものもいた。

 明菜の魅力と言えば低音で響く色気のある歌声が一つに挙げられる。抑揚をあえて抑え、一歩引いて歌い上げることで歌に説得力を持たせている。それはクールな表情と絡み合い、楽曲の世界観をより奥深いものとさせる。人はなぜか陰に惹かれることがある。明菜は陽と陰の魅力を兼ね備えているが、どちらかと言えば陰の妖艶さが際立つ。そして、歌の行間からは、内側に宿す情熱や繊細さがのぞかせる。

EDMはアルバムの序章

 復帰シングルとなった「Rojo -Tierra-」はEDM調の楽曲だ。明菜は過去に、ディスコやソウルミュージックを聴いていた影響からブラックミュージックが音楽のルーツだと語っていたことがある。振り返ってみれば、彼女の作品にはそうした曲調の楽曲も多い。EDMを取り入れたことも自然な流れだと言える。ちなみにEDMは、エレクトロニック・ダンス・ミュージックで、日本でもここ1、2年ブームになっている。日本で代表されるのは三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの「R.Y.U.S.E.I.」などだ。

 事前資料には「生音×デジタルのサウンドが軸となり、歌謡の基本リズムをベースに現代に合うエッジィなポップスの世界が展開されている。また、明菜風EDM楽曲があったり、時代感も存分に伝わってくる」と記されてある。EDMが際立った「Rojo -Tierra-」のインパクトが強いだけに、今作『FIXER』はEDMがサウンドのベースになっているかと思えば、実はそうではない。

 EDM要素が強いのは、1曲目収録のタイトル曲「FIXER -WHILE THE WOMEN ARE SLEEPING-」から4曲目「unfixable」までで、5曲目以降は「La Vida」はフラメンコギターとパルマとシンプルな楽器が入り込みポップさが増している。特に、6曲目「雨月」と7曲目「とどけたい ~voice~」に至ってはその要素は全くないに等しく、ピアノの音色が明菜の歌声を際立たたせるバラードで、深層に触れるのである。

 ここでざっくりと曲のイメージを記したい。EDMを強く感じる曲には○を、やや感じられるのは△を付ける。

 M01.FIXER -WHILE THE WOMEN ARE SLEEPING-
 ○切り裂くようなEDMは都会を連想せる。

 M02.Rojo -Tierra-
 ○バスドラが響くアフリカの民族音楽の様な入り口から一気にEDMが流れ込む。大地の力強さと大地を走り抜ける疾走感を感じられる。

 M03.Endless Life
 ○ゆったりとした空間のなかでEDMが世界観を広げる。そのエレクトロニックな世界観に溶け込む明菜の歌声。

 M04.unfixable
 ○この曲からピアノが入りEDMと融合する。伸びやかな明菜の高音が響く。

 M05.La Vida
 EDMに代わりフラメンコギターが展開される。世界的フラメンコギターリスト沖仁とのコラボがかなりのマッチング。夜更けの街角と連想させる。

 M06.雨月
 これもEDMはなく、ケルト音楽を連想させるギターにピアノがドラマチックに展開される。ここに彼女の真意が見える。

 M07.とどけたい ~voice~
 △ピアノがメロディラインを作り、EDMがリズムを刻む。ギターの音色も優しい。明菜の甘く切ない歌声が響く。

 M08.欲動
 △軽やかなギターフレーズが風を呼び込み、EDMのリズムが上昇感を与える。

 M09. kodou
 フラメンコ風アコギとキーボード。歌に伸びやかさと力強さがありドラマティック。

 M10. Lotus
 インド音楽のようなシタール楽器と胡弓の様な音色が空間を作る。

 M11.Re-birth
 ハープとヴァイオリンの音色が包み込む。シンプルなサウンド構成で明菜の歌声が強調される。

記事タグ