初の武道館公演を行ったグッドモーニングアメリカ(撮影・佐藤広理)

初の武道館公演を行ったグッドモーニングアメリカ(撮影・佐藤広理)

 【ライブレポート】グッドモーニングアメリカが11月27日に、日本武道館で単独公演『挑戦 㐧七夜』を開催した。結成14年目にして初めて立った念願のステージ。ボーカル&ギターの金廣真悟は「辛い時も皆がいたから乗り越えられた」と語り、感謝の気持ちを込め22曲を熱唱した。また、ベースのたなしんは、結成間もない時期のライブでファンから受けて感動したという、場内を星空に見立てる演出を観衆と共にサプライズ。知らされていなかったメンバーは「泣きそうになる」と感慨深く当時を重ねた。この日は、プロレスラーの大仁田厚氏も応援に駆け付けるなど、“グドモ”の歴史にとって華々しい1ページとなった。(取材・木村陽仁)

たなしん劇場で幕開け

バック転で成功させたたなしん(撮影・佐藤広理)

バック転で成功させたたなしん(撮影・佐藤広理)

 この1年間の活動は、この舞台のために計画された。『挑戦―』、『凌ぎ合う―』と銘を打った“1年企画”は、前作アルバムリリースツアー「inトーキョーシティツアー2014-2015」ツアーファイナル(今年3月)での開催発表に始まり、バンド結成の地、東京八王子での初のホール単独公演(6月)と段階を踏んできた。“夢舞台”が目の前に現れるまでは「実感がなく不安もあった」ようだが、日を重ねるごとにリアル感は増し、希望は満ちていった。“G1馬”が大舞台に挑むよう緻密に調子を上げ、万全の体制で決戦の舞台に挑むようだった。

 すっかり日が暮れた武道館のある北の丸公園は、ひんやりとした空気が漂っていた。それに反して熱気に満ちていたのは歩を進める観客の吐息と場内であった。この日は、一般客だけでなく、古くからの友人、バンド仲間、メンバーの家族や親族の姿もあった。そのためか、時折耳に挟む会話には感慨深く思う言葉やバンド結成当時を懐かしむ内容もあった。そして、それをBGMが情緒的に潤す。

 そうしたなかで突然と明かりが消える。と同時に人気アニメ『ドラゴンボール』の主人公・孫悟空の声(野沢雅子)が「ここが天下一武道会が行われる会場か、なんかすげえ気を感じる――」と響き渡る。しばらくすると、たなしんの声が会場に流れる。「よくぞ来たな! 俺がたなしんだ!」。メンバー念願の武道館公演は“たなしん劇場”から幕を開けたのであった。

 金色の髪をしているな、スーパーサイヤ人か?(悟空)
 違う! スーパーたなしんだ!(たなしん)
 池谷幸雄トレーニングセンターで学んだ必殺技を受けてみろ(たなしん)

 そんなやり取りの後に会場が明るくなると、アリーナ席にレオタード姿のたなしんが。右手に持った新体操のリボンをヒラヒラとさせながら笑顔で歩く。ステージに着くと、用意されたマットに背を向けて一呼吸。掛け声の後に膝を勢い良くのばし背を反った。バック転だ。弧を描くように綺麗に回転。まさかの“アクロバット”に大歓声。本人も「正直怖かった。今まで成功しなかった」と安堵した表情を浮かべ、「15年のバンド人生をかけて挑みたい。余興も終わったところで…グッドモーニングアメリカです。始めます!」と宣言した。

「最高の夜」を

熱血漢の渡邊幸一(撮影・佐藤広理)

熱血漢の渡邊幸一(撮影・佐藤広理)

 暗くなった会場をシリアスなSEが流れる。メンバーがゆっくりと登場するさまは、映画の主人公がオープンニングを飾るように優雅だ。金廣の歌声が武道館に響く。「武道館行くよ」と優しく語り始めて1曲目「拝啓、ツラツストラ」で本編が始まった。

 それはクールさを伴った熱気だった。歌い終わりに渡邊幸一(G)が前に出る。2曲目「キャッチアンドリリース」も「行くよ」と優しく語り掛けて歌い出す金廣。跳ねた音が武道館を弾ませる。渡邊が前に出てソロを展開する。一瞬のキメのあとに響くファンの歓声。間髪入れずに小刻みなドラムで送り出した3曲目「光となって」。軽快な連弾を打ち込むペギのドラムに対して、ゆったりと流れるギターサウンドは異なるグルーヴを作り出す。一方、目まぐるしく切り替わるストロボは観衆の脳波を刺激した。曲終わりにたなしんと渡邊が声を張る。

 ここで一呼吸。普段から確かに熱血漢である渡邊だがいつも以上に興奮した様子で語り出した。「ずっと夢に抱いていた日本武道館、この日を迎えられた。本当にありがとう。ライブハウス時代からずっと戦ってくれたバンドや、家族、同級生、全員が『最高だった』と言ってもらえるような夜を、俺たちにしかできない音楽を、このライブでみせていくので宜しく!」。

 金廣も「本当に楽しんで帰って下さい」と笑顔で語り掛けると、「コピペ」を披露した。グドモの“高速ディスコサウンド”が炸裂する。ステージ両サイドに配置されたモニター画面に映し出される「コピペ」という文字が躍る。それに呼応するようにライト、観衆の手振り、そして声も弾む。それぞれの表現でこの楽しいフレーズを大合唱している。

 余韻を残すことなく5曲目「言葉にならない」。激しいサウンドが胸を打つ。観衆は思い思いに体をくねらせる。ドラムのペギはいつも以上にアグレッシブに強く打ち鳴らす。疾走するように駆け抜け、キメを入れてからドラムロールで次曲「突破していこう」へと紡ぐ。彼らの歴史が軽快な音に載せて足早に過ぎていく。

 そして、濃密な歴史を表すように曲の終わり方も様々だった。「突破していこう」は16ビートで快走中のところに、ロボットのパワーが落とされるように、時空に吸い込まれるように音が止まった。

支えてくれたのはファン

激しく歌い、MCでは優しく語りかけた金廣真悟(撮影・佐藤広理)

激しく歌い、MCでは優しく語りかけた金廣真悟(撮影・佐藤広理)

 金廣が優しく問いかける。「楽しんでますか、楽しんでもらわないと武道の神様が魔物を呼んでしまうから」と茶目っ気たっぷりに語り掛け、曲を続ける。7曲目「inトーキョーシティ」では一度曲を留めてからBGMを流すなど、巧みに時間をコントロールする。8曲目「ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ」では、彼らの深層部に触れる。変則的なリズムで撹乱させながらもサビ部はキャッチーなノリ易さ。大歓声のなかで金廣が言葉をかける。「ありがとう」。

 場内が暗転して再び渡邊がマイクをとる。

 「ステージに立って初めて気づいた。奥まで見えるなって。色んな人に支えられてここまで来ました。正直、何度もバンドを辞めようと思ったこともあった。大学の頃はバンドも活動休止の状態で何もできずにいた。バイトに明け暮れて、俺は何やっているんだろうと落ち込んだ事もあった。そんな時に助けてもらったのが今のメンバーです。そして、同じように助けてくれたのは昔からいるバンドマンでした。リリースとライブの繰り返しでしんどいと思ったこともありました。でも、ライブハウスで待ってくれているファンがいたからやってこれました。ここまでこれたのは目の前にいる皆がいたからだと自信をもって言えます」

 金廣も募る想いを語った。そして、きょう駆け付けてくれた観客に「気持ちを共有したいのでこの歌を聞いて下さい」と言って「コールアップ」を披露した。アコギの乾いた音が心をあらう。そして、スクリーンにはしっかりと気持ちを伝えようと歌詞が表示されている。そんな彼らのメッセージを観衆はしっかりと受け止めているようだった。

 ペギのドラムソロが始まった10曲目「ミサイルをぶちかましてぇな」は、空を突き抜けるような目まぐるしく変わるグルーヴが印象的だった。そして、間髪入れずに届けられた11曲目「空ばかり見ていた」はギターのカッティングが期待感を高めた。そして、入れ替わる赤と青のスポットライトが助長させる。

 しばらく無音が続いたところでスクリーンには昔の舞台裏を収めた4人の映像が流れた。まだ初々しい彼らの姿。無邪気な彼らに温かい笑い声が漏れた。

 エレキギターの音色と、スポットを浴びる金廣の歌声。「語り合おう」と述べると一気に灯りが戻る。昔の写真がスライドショーで流れるなか12曲目「そして今宵は語り合おう」。本来であればそれぞれの人生に投影する曲だが、この日だけはグドモの歴史に重ねているようだった。

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