RADWIMPSのドラマー山口智史が、持病の「フォーカル・ジストニア」という神経症状が悪化し、休養することが先日、報じられた。

 この「フォーカル・ジストニア」は、音楽演奏家がかかる、意志とは異なった筋肉に力が入り正確に演奏ができなくなる症状と言われている。その原因には、遺伝や心理、環境などの関連性も指摘されているが、今のところ解明されていない。

 ライブの前にも必死になって練習していたという山口。彼の美学としても自分の思い通りにプレイできない悔しさはこの上なかったと予測される。

 同症状については、同バンドの公式サイトでも「音楽家は、時に複雑な動作をハイスピードで繰り返すことを要求される、繊細な職業です。極度に集中したトレーニングを長期間続けた結果、楽器を前にすると脳がストレスや緊張で過敏に反応してしまい、エラーを引き起こすのが原因ではないかと考えられています」と記されている。

 現在、生身の肉体で演奏される音楽において、一番イノベーションが起きている楽器の一つはドラムスだと言っても良いだろう。特にジャズドラムだ。ちなみに、山口は音楽大学のジャズ科を専攻していたようだ。そして、以下の話は、彼の病気と直接的な因果関係はないことをまず先にことわっておきたい。

 この革新を日本では「ニューチャプター」と呼び、新しいビートとして歓迎されている。そして世界でも浸透し始めている。この動きには「テクノロジーvs人間」という構図が隠されている。

 「リズムマシーンやコンピュータによってドラマーの仕事は無くなるだろう」という言説がいつもつきまとうが、打ち込みの様なリズムをドラマーが逆に叩く事によってフュージョンが生まれたし、ビートメイカーが組んだ様なビートを叩くことによってニューチャプターの発生が促された面がある。

 さらには、プログレ由来の変拍子、インド系やアフリカ式のポリリズムなどなど人類が積み重ねてきた様々なリズムや技法が段々と音楽学校の教科書のカリキュラムとして蓄積されてきている。

 そして、現場レベルにおいて、音楽理論的なコードだとかメロディの新しい実践と言うよりもリズムに関する動きが活発化しているのだ。この、日進月歩とも言えるこのリズムに関する流行に乗り遅れないため、音楽的に処理していくためには鍛錬を必要とする。

 しかし、複雑に考えていくあまり、無限という概念と対峙する数学者の様に精神に異常をきたす事も希にある。ただし、何度も言うが、山口の病気とは直接的に関係はないと思われる。これは現代ドラマーの憂鬱であり、新しい道へ向かう生みの苦しみとも言える。

 山口の病気がこれと関連しているとは断言できないが、ジミ・ヘンドリックスやカート・コバーンなどのギタリストでは無く、ドラマーが精神的な試練を通ることが今、多くなっている現状であるのは間違いない。  【文・小池直也】

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