今年のサマソニのステージにD'Angelo(ディアンジェロ)が立つ。この驚愕の事実、一体誰が予想出来ただろうか。1995年の大傑作アルバム「Brown sugar」からおよそ20年。世紀の名盤・2ndアルバム「Voodoo」からは14年。昨年遂に新作「Black Messiah」がリリースされ、満を持して今年「D'ANGELO AND THE VANGUARD」名義でサマーソニックに参戦する。 ディアンジェロの「復活」。ネオソウル、ニュークラシックソウル界のレジェンド・ディアンジェロの待ちに待った(20年ほど)初来日である。

まさかの「声明」

 2015年2月4日。ソニー・ミュージックのオフィシャル・アカウントが発信したTweet内容は、画像を加えた以下の一言であった。「ディアンジェロ降臨!」。この内容を受け、いや、まともに「ディアンジェロが来日する」と真っ正面から受けた者は少なかった様だ。

 「なにが降臨だ。確実に来ないだろ」「フワッとした表現で煽るのやめてくれ....ホントに来たら絶対に行くが」「思わせぶりすぎる。信用できん」などの声が上がったのも無理はない、それほど「レアすぎる事実」を示唆した内容だ。ファンが猜疑心に包まれつつもお祭り騒ぎに展開したのはうなずける。

ディアンジェロとは

 「D'Angelo」本名:Michael Eugene Archerは、ピアノにギターにベース、作詞作曲をこなすマルチ・プレイヤー。主にR&B界で脚光を浴びる彼なのだが、ディアンジェロ自身は自分がR&Bシンガーだとは思っていないらしく、一つのジャンルやカテゴリに括られる事に対し、好ましく思っていないという面がある様だ。D'Angelo の音楽性としては、ブラックミュージックを基調とした中でドラッギー(!?)に醸すR&B、HIP HOP、Jazz、エレクトロミュージックの要素。強烈に洗練されたグルーヴ、アレンジメント。ひとつひとつのパートが、深く呼吸をしているかの様なアンサンブル。隙のない音楽とはこの事ではないだろうか。

多方面に影響を及ぼしたD'Angeloの名盤

 まずは何と言っても代表曲「Brown sugar」。同タイトルの1stアルバム。とにかく、ブラックミュージックが好きな方でなくとも、主にロック好きでもテクノファンでも、まずはディアンジェロのこのアルバムの一聴を、強くお勧めしたい。マーヴィン・ゲイやカーティス・メイフィールド、プリンスなどに影響を受け、ソウルやゴスペル、ラップに芯を置くと言われる「ディアンジェロの基本的な魅力」を多大に感じる事が出来る作品だ。

「Brown sugar」

 2ndアルバム「Voodoo」。タイトルはアフリカ起源の魔教的、呪術的な意味の「ブードゥー」で、この恐ろしい魅力を持ったアルバムを正に表している言葉だ。最初に言い切ってしまいたいが、このアルバムは世紀の大傑作だ。50年後100年後、音楽文化が存在しうる限り、未来永劫価値あるアルバムとして語り継がれる歴史的な作品である。そして、恐らく、初聴で「これは最高のアルバムだ。ここがこう良くて、うんぬんかんぬん....」と評す方は少ないであろう。それが出来るのは、ディアンジェロ本人だけと思われる。

 一度聴いて「これはなんか凄い.....が、よくわからないトコの方が多い」となり、「後を引く何とも不可解なグルーヴの快感」を確認すべく、また聴く。「うんうん、なんか解ってきた気がする。あのズレ具合が気持ちイイな。うん。」となり、「ちょっと今日も聴いとくか。これ、一回聴くとアルバム最後まで聴いちゃうんだよな......」とだんだんクセになっていき、「すんごいおどろおどろしいんだけど、なんか清潔感あるというか、妙に高尚というか、何だろ...........?やっぱいいな。うん。」そして気が付けば立派な「Voodoo中毒」に仕上がるという、何とも素晴らしくも恐ろしいアルバムである。

10年以上新作を待たせる「奇才」達

 異常に才能を持った人物の不安定さ。こと音楽界に限った事ではないが、ディアンジェロの様に「天才」などと評される人物は、どういう訳か「多作家」と「寡作家」の真っ二つに分かれる事が多い。その不規則な活動内容、リリースペースは、他と比較するものではないのだが、久々すぎるリリースをかますアーティストとして、いづれも畑の異なる音楽性だが、「ガンズアンドローゼズ」や「ポーティスヘッド」「エイフェックスツイン」などを思い浮かべてしまう。5年、10年待ったあげく、待ちくたびれて忘れた頃にようやく新作をリリース、という点と「希有な才気と強烈なカリスマ性」を備えているという点で、先の3アーティストとD'Angeloの妙な類似点を挙げたくなってしまう。

新作「ブラック・メサイア」

 2014年12月15日にデジタル配信でリリースされた「Black Messiah」。これが14年ぶりとなるD'Angelo3枚目のアルバムとなる。発表、リリースするや直ちにiTunes R&B総合チャート1位。当然の様に即刻1位。しかも海外のチャートではなく、国内チャートでの事例だ。後日リリースされたCD盤も即刻売切御免。入荷待ち。これだけでもディアンジェロの新作リリースの衝撃っぷりを明確に語っている。R&B界のみならず各方面の多くのミュージシャンにも敬愛されているディアンジェロの新譜に、音楽界は狂喜乱舞をもってして彼の「復活」を祝した。

  サマーソニック2015にディアンジェロ降臨。ディアンジェロが「D'ANGELO AND THE VANGUARD」として初めて日本の地に立つ。R&B界の、音楽界の生けるレジェンドの初来日ステージ。これはもう細かい事は置いといて「必見」の一言だ。  【文・平吉賢治】

メモ

 ◆マーヴィン・ゲイ、カーティス・メイフィールド、プリンス ブラックミュージックのシーンで多大な功績と影響を残したアーティストら。ソウル、R&Bの名門レーベル「モータウン(Motown Records)」の代表的アーティスト。モータウンにはスティーヴィー・ワンダーやマイケルジャクソンなどの大御所も所属(マイケルは後に移籍も)する。日本でもしばしばソウルやブラックミュージックの談義の際に「モータウン系の〜」などと表現する事がある。

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