[写真]INKT初ツアー完遂(5)

明らかな進化を魅せたINKTツアー最終公演のもよう

 [ライブレポート、8月7日、東京・恵比寿]KOKI(田中聖)擁するロックバンドのINKTが7日、東京・恵比寿LIQUIDROOMで全国ツアー『サイサリス Tour 2015』の最終公演を行った。ブラジルでの海外初公演を終えて挑んだ自身初の全国ツアー。KOKIの出身地である千葉・柏を皮切りに全国7公演を回った。昨年11月に『INKT』でCDデビューを果たし、今年4月には『サイサリス』を発表。サウンド面ではわずか数カ月の間に劇的な変化を遂げている。今回のツアーでもそれは見られ、楽曲はアレンジが加えられ進化していた。インタビューでも「『サイサリス』はツアー中に完成する」と話していたがそれを実現したようにも見えた。12月からの全国ツアーも決まったINKT。今回は、最終公演の模様を以下にレポートする。  【取材・紀村了】

 8日連続猛暑日を記録した東京、午後6時を過ぎても気温は30度を下回らず、熱い空気が体を包んでいた。多くの観衆で埋め尽くされた屋内の会場も異常なほどまでに熱気に満ちていて、冷房は室温の上昇を抑えるのがやっと。ムンムンとする空気のなかでBGMは流れていた。その空気感を遮断するように音と光が突如として落とされる。暗闇のなかでSEが這い、その行き先を追うように青色のスポットライトが辺りを照らす。けたたましい音が鳴り響き、照らすライトは赤色に変わる。そのなかでメンバーがステージに現れる。湧き起る手拍子。メンバーも煽っていく。高鳴る鼓動、“サイサリス色”に染まる会場。興奮に満ち溢れるなかでKOKIが姿をみせ、両腕を左右に伸ばした瞬間、音が途絶える――。

明らかな変化がみえたサウンド

[写真]INKT初ツアー完遂(6)

INKTツアーファイナル・恵比寿LIQUIDROOM

 今回のツアーテーマを掲示しているかのように、最初に披露されたのは『サイサリス』の1曲目に収録されている「Wanderlust」だった。キーボードの音色が劇場的に雰囲気を作り上げる。濡れた金髪を乱すKOKIの歌声が届けられると、観衆は前のめりになって興奮を示す。それに笑顔を見せるKOKI。のっけからフルスロットルだった。開演後から数分しか経っていないが、5月に行われた六本木公演とはサウンドは明らかに異なっていた。楽曲にはアレンジを加えられ、何よりもメンバーには自信の上での余裕さえ感じられた。それはKOKIのにんまりみせた表情からもうかがわせた。

 そして、その変化は2曲目「Fight For Freedom」で確信的なものとなった。観衆のノリを演出させるサウンド構成。一筋縄ではいかない変調のオンパレード。ストレートに走り出したかと思った矢先の急カーブや急降下、そんなジェットコースターのようなサウンドが走る。体がうずく。勝手に体が動く、衝動に駆られる。

 前半はキーボードの音色が空気を支配していた。メロディアスな曲調に入り込むハードロックサウンド。激しく鳴らしたかと思えば、情緒的なキーボードがメロディをコントロールする。その緩急こそがサビへの盛り上がりを更に押し上げる。そして、顔を髪で隠すKOKIはなめるようにファンを見つめる。ドラムの音もより曲を情緒的なものにする。そして終盤に入るシャウト。「Are you ready? TOKYO!!」。ギターのピックスクラッチ(ピックを弦にこすりつけて移動させる)が更に加速させる。そして、KOKIが言い放つ。「お前らまたせたな!INKTだよ!」。

自由自在に空気を支配する

[写真]INKT初ツアー完遂(4)

INKTツアーファイナル・恵比寿LIQUIDROOM

 間髪入れずにドラムが音を刻む。その音を背景にKOKIは「ラスト東京!盛り上がっていこうぜ! こんなものか! 俺らと一緒に歌えるのか、声を出せるのか。今日も最後まで気を抜かず盛り上がって行けよ!」と訴え、3曲目「A Whole New World」。観衆の心は出だしで既にピークに達しているというのに「これでもか!」というぐらいに2曲目、3曲目で追い打ちをかけていく。安定飛行に達しているのに、ジェット噴射をかけ続けているようだった。サビの前での4度に渡るキメ。速球に緩い球、変化の激しいカーブなど、観衆は完全に術中にはまっていた。

 暗くなって始まったのが4曲目「Past & Future」。今度はギターサウンドがリードする。妖艶な雰囲気が漂う。そして場内を照らす七色に代わるライトがその雰囲気を更に高まらせる。激しさを伴ったロックバラード。音符に絡みつくKOKIの歌声は、観衆の体をも絡みつくようだ。そして、ドラムの不意を突く音。その場にいる観衆の表情をみて自由自在にアレンジを加えているようにさえみえた。

 歓声のなかに流れるキーボードのドラマチックな音色。疾走した4曲を締め括るようなダイナミックな音の数々に観衆は酔いしれる。長く続くキーボードのソロパート。時を刻む音色。拍手が自然と起こる。KOKIが口に含んだスモークを吐き出す。一転、彼の代名詞であるラップが始まる。

 先ほどのナンバーとは全く異なる「FTW」。彼らの幅の広さを感じさせるラップが主体の楽曲だ。サビでは一転したロックビート。そして、メンバーとファンがジャンプする。挑発的に指をなめるKOKIに歓声があがる。「道を開けろ。頭を振るぞ!」とヘッドバンキングで激しく空気をかき乱す。「どうしたこんなものか!ラストは!頭振れ!」「おいラストだぞ!首もげるまで頭を振れ!」と煽る。

KOKI、そしてINKTの想い

[写真]INKT初ツアー完遂(3)

INKTツアーファイナル・恵比寿LIQUIDROOM

 音が止んだ会場はファンの歓声だけがとどろく。KOKIが改めて挨拶すると「大阪で倒れた人がいるので、一人残らず見て欲しいから、周りに(倒れそうで)危ない人がいたら思いやりで声を掛けあって知らせて。一人残らず最後まで楽しむよ」と語った。途中、KOKIは息が上がって喋れなくなる場面も。それだけこの4曲は激しかった。観衆とのトークの掛け合いもライブならでは。この日は観衆の興奮の度合いもすごぶる良く、KOKIも「自己主張激しいな」と面食らったほどだった。「日本一熱い場所にして帰ろうぜ!」という問いかけに更に激しい声が呼応した。

 「普段は嫌な事やストレスもあると思う。超えられない壁もあったと思う。逃げる事も大切だと思うし。隠れたり、逃げたりしている時にうちらの曲のワンフレーズでも思い出し、気持ちが前向きになれたら、うちらの楽曲の存在意義はあると思う」と語って披露したのは「Hide and Seek」。ここからロックバラードが続いていく。

 歌詞にある「震えたまま隠れてる 君のことをもう待たせない♪」。この楽曲はKOKIだから説得力がある。優しさを伴った歌声はひとり一人の心に届ていることであろう。それを表現するために観衆は腕を前後に振って表現している。そして、観衆のひとり一人の表情を確かめるようにKOKIはアンプ(音響機器)の上に立って歌う。その思いはメンバーも一緒で、心に響かせるように音を奏でる。

 「Flower of life」でもキーボードの音色が優しい空間を作り上げる。夜更けの海を思い起こせそうな優しいメロディ。そして、会場を照らすライトは灯台のよう。薄暗い会場のなかで響くKOKIの歌声。ゆっくりと歌い上げる。やがて音が高鳴っていく。ドラムが続く。朝焼けを告げるように。場内にも明かりが戻される。「皆が一番良い声で歌ってくれるから俺も歌っていて、演奏していて超気持ちいい!」とKOKI。更に続ける「何でわかってくれないんだろうって思う事もあると思う。人には分からない道を歩んできた俺だから分かる。すごく嬉しい。新しい道に進んでいくから最後まで付いて来いよ!」と言葉を送る。その思いは「Nobody Knows」にも続けられた。

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