レコ発ライブを行ったKelly SIMONZ’s BLIND FAITH(撮影・SHIGEYUKI USHIZAWA)

レコ発ライブを行ったKelly SIMONZ’s BLIND FAITH(撮影・SHIGEYUKI USHIZAWA)

 [ライブレポート、7月11日、東京キネマ倶楽部]7月にニューアルバム『AT THE GATES OF A NEW WORLD』をリリースしたKelly SIMONZ’s BLIND FAITH。このバンド名義の作品としては2枚目となるものだ。Kelly SIMONZ’s BLIND FAITHは超絶ギタリストとして名高いアーティスト、 Kelly SIMONZ(以下、Kelly)を中心にベースのKaz、ドラムのYosukeという若い凄腕のミュージシャンと共に活躍を続けているグループ。

 Kellyはソロとして29歳でデビューを果たした一方で、昨年リリースしたアルバム『BLIND FAITH』はバンド名義ながらもある意味、Kelly SIMONZの奇跡的な再デビュー作品といっても過言ではないだろう。デビュー当初は、日本人離れした超絶ギターテクニックを有しながら、メタルサウンドが一時斜陽を迎えた時代背景もあって、その才能に見合う評価が得られない厳しい時期を過ごした。昨年リリースしたアルバムはある意味、その壁を乗り越えた、奇跡の再デビューアルバムともいえる作品であり、その苦難で培われた彼の資質を存分にアピールする作品となった。

 そして前作より約1年、さらにグレードアップしたKellyの世界観を表す作品が登場した。今回は前作同様、ゲストとして日本メタル界では知る人ぞ知る強力なボーカリストのYAMA-Bを迎え、前作からさらにグレードアップしたサウンドを聴かせている。今回はそのニューアルバムリリースを記念して11日に東京キネマ倶楽部で行われたレコ発ライブ『Tokyo Kinema Club "The 9th" At the Gates Of A New World 2015』の模様をレポートする。  【取材・桂伸也】

無駄な音は一音もない――序盤よりいきなり超絶テクニックの嵐

撮影・SHIGEYUKI USHIZAWA

撮影・SHIGEYUKI USHIZAWA

 この日のオープニングは、何のギミックもない、ストレートなものだった。SEと共に最初にステージに現れたのはYosuke、Kaz。そしてドラムのカウントと共に、オープニングナンバー「The Journey To The Gates」のプレーがスタートした。やがてステージ上手(かみて)より登場したKelly。しょっぱなより超絶テクニック満載のフレーズで続々とアピールしてくる彼のギター。そしてブレイクと共に高らかなシャウトを一発お見舞いしたYAMA-Bが登場。

 役者はそろった――。身構えた観衆の表情には、これから起こり得ることへの、そんな期待の思いが見て取れた。そして、YAMA-Bの勇ましくも美しい旋律を奏でるボーカルとともに「At The Gates Of A New World」へ突入。もはやゲストという言葉は、YAMA-Bにはふさわしくない、そんな思いになるほどにこのバンドのスタイルと楽曲は、彼とのステージが不自然にならずマッチしていた。そして、手の込んだ演出など全くなかったオープニングが、実はちょうどいいと思えるくらいに、彼らのステージングは最初から観衆に大きなインパクトを与えていた。

 序盤は、今回のニューアルバムの曲順を踏襲し展開していた。ギターの聴きどころだけでなく、ドラム、ベースとのユニゾンや展開、曲の構成の複雑など、明らかに前回リリースのアルバムよりグレードアップした楽曲群。ポップな雰囲気すら感じる「In The Name Of Love」、YAMA-Bがギターを弾き、Kellyがマイクを手に情感豊かな歌を歌う
「I Am Your Judgement Day」と、早くも見どころ満載のステージが進行していく。時に激しく、時にドラマチックに、鳴り響くKellyのギター。彼のギターは、超絶テクニックに目が行きがちではあるものの、実はその中に響く1音たりとも無駄な音はない。そう納得させられるメロディの完成度が、新たなアルバムの楽曲には強く感じられた。そしてその傾向は、さらにこのステージで余計に光って見えた。

 Kellyが若い2人のメンバーに課した、ミュージシャンとしてのハードルは相当高いものと見えたが、気迫の表情でドラムに向かうYosuke、Kellyのギターに負けず劣らずの超絶フレーズを平然とした表情で弾きこなすKazのベースと、2人の姿にはその壁を実力で乗り越え、Kellyからの信頼を受けられるよう成長を遂げつつある様子がうかがえる。Kellyはいつものステージでは鬼気迫る程の表情で自己のギターに暗い突くような激しいプレーを見せていたが、この日は多くの場面でKazとからみ、Yosukeと目でアイコンタクトをとるなど、その表情は、心なしかプレーを楽しみ笑っていたようにも見えた。

未来の可能性を感じ、微笑んだKelly

[写真]Kelly SIMONZ’s BLIND FAITHレコ発ライブ(3)

撮影・Matthias Lanbrecht

 時にステージ中央に立ち、超絶的ギターソロを奏でたKelly。ここで見せた彼の旋律は、ここまでプレーした曲の中に存在した、完全に構築されたような印象のものとは異なり、まさに「彼の声」といってもいいもの。単なるひけらかしとは違う、フレーズ一つ一つの音に「ガツン」と来るような衝動をたたえたそのプレーに、観衆はまたも気持ちを揺さぶられエキサイト。繊細なニュアンスを示すボリューム奏法より「Signs Of The End Of The World」へ。この曲はイントロリフ、そして構成と、彼が尊敬するギタリストのイングヴェイ.J.マルムスティーンへのオマージュを感じさせるキラーナンバーだ。

 さらに「Bound For Glory」に続く「Nobody Is The Same」は、モトリークルーを彷彿とするブルージーな荒々しさの中、DEEP PURPREの「BURRN」を思わせるギターリフ、そしてソロの導入部分と、Kellyがロックというフィールドを歩んできたそのバックグラウンドの一端が垣間見える。その曲を愛し、このフィールをステージでプレーすることが楽しくてたまらない、この曲のプレーはそんなKellyの思いが感じられた。そして、その思いはしっかり観衆にも伝般し、フロアでは皆、心からこの日のステージを楽しんでいる様子をうかがわせた。

 ステージは中盤に差し掛かり、ここで新たなゲストが呼び込まれた。最新アルバムでもゲストプレーヤーとして参加しているKeiji By ZEROだ。弱冠10歳という年齢でステージでは幼さを見せていた彼だが、ギターを持つとKellyに勝るとも劣らない超絶フレーズを奏ではじめ、見るものを驚かせた。そしてバンドとのセッションによる「AttackK By Zero」より、Kellyの代表曲の一つである「Opus#1」へ。見応え、聴き応えたっぷりのギターバトルが展開される中、驚くべきハイテクニックを見せながらもKeijiを優しく見守るように微笑んでいたKelly。それは若い世代に、自分のような高い志を持った者が現れる可能性が、存在することを、心より喜んでいるようでもあった。

 そして「Enter The New World」より、Kellyの伸びやかなボーカルが映える「Stay With Me Forever」と、緊張感から少し違った空気感を醸し出すナンバーへ。時にアコースティックギターに持ち替え、時には自らが歌い、そしてトレードマークでもある超絶フレーズを繰り出すKelly。そして、ステージはYosukeの絶妙なテクニックとセンスを存分に発揮したドラムソロをはさみ、いよいよクライマックスを迎える段階に差し掛かった。

「次はお前の番だ」Kellyの思いが伝播する

撮影・SHIGEYUKI USHIZAWA

撮影・SHIGEYUKI USHIZAWA

 一瞬しんと静まり返った会場の中、オーケストレーション的なSEが流れ、ステージでは振り出しに戻ったような、劇的なハーモニーと分厚いビートを打ち鳴らしはじめた。前作アルバム『BLIND FAITH』のオープニングナンバー、「N.W.O」だ。Kellyが奇跡の復活を果たすのろしともなった前作のリリース、その象徴ともいえるのがこのナンバーだ。それだけにこの曲にはファンにも、またKelly自身にとっても特別な思いがあるにちがいない。ますます鋭さを増していく彼のギターフレーズに目を輝かせ、大きな声を上げながら追従していく観衆。彼らの振り上げる腕はさらに高みを目指そうと、ピンと真っすぐ上に向けられた。

 そして、この日のラストナンバー「Toki-No-Kakera」へ。この楽曲も前作アルバムに収録されたナンバーであり、曲としては古くから作られ、Kellyが彼のファンとともに大切にしてきたものの一つだ。メロディの美しさ、時に見える哀愁感、そしてロックならではの激しく胸を打つような衝動が、Kellyのギター、YAMA-Bのボーカル、両方の中でそれぞれ現れ、そして互いにシンクロし、曲の意味を何倍にも増幅して観衆の胸の内に染み込ませる。ついに訪れたエンディング、続いて沸き起こるアンコール。この日を迎えた感謝の念を告げながら、ラストナンバー「Now Your Turn」へ。まさしく聴くものへ「Now Your Turn」(今度はお前の番だ)と、後押しをしてくれるようなこのナンバー。強い気持ちで生きるKellyのメッセージは確かに観衆に伝えられながら、この日のステージはついに終焉を迎えた。

 自己の音楽の探求に妥協を許さないKelly。そのあくなき探求心が見事に表現されたステージだった。彼らの音は高い質を求める音楽である一方で、エンタテインメントであること、アーティスティックであること、そのどんな面を見ても、高いレベルを目指そうとする意気込みが強く感じられる。そしてまさに今、「the Gates Of A New World」(新たな世界の扉)を開こうとばかりに、アクティブな活動を続けていくKelly SIMONZ’s BLIND FAITH。その行く先は、これからエンタテインメントが、ロックが、そして音楽がどのようにあるべきかを示しているようにも見える。「本当の音楽とは」「本当のロックとは何か?」音に上質を求めるロックファンたちは、彼らが今後どのような展開をしていくかを、引き続き注意しておく必要があるだろう。

セットリスト

撮影・SHIGEYUKI USHIZAWA

撮影・SHIGEYUKI USHIZAWA

01.The Journey To The Gates
02. At The Gates Of A New World
03. In The Name Of Love
04. I Am Your Judgement Day
05. Immortal Love
06. Tales Of The Viking
07. Signs Of The End Of The World
08. Bound For Glory
09. Nobody Is The Same
10. AttackK By Zero
11. Opu1#1
12. Enter The New World
13. Stay With Me Forever
~Drum Solo SE~
14. N.W.O
15. Toki-No-Kakera
encole
16. Now Your Turn

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