写真=TRUSTRICK初全着席で表現した歌劇型ステージ[1]

初の全着席で彼らの真の音を聴かせたTRUSTRICKの神田沙也加とBilly(撮影・加藤アラタ)

 [ライブレポート]ボーカリスト神田沙也加(以下、沙也加)とギタリストBillyによる音楽ユニット・TRUSTRICKが4日、東京・品川StellaBallで単独公演『TRUSTRICK PREMIUM LIVE SUMMER “lolite”』を開催した。先月、東京・渋谷TSUTAYA O-EASTで行われた『TRUSTRICK PREMIUM LIVE SUMMER “Garnet”』とはその趣を180度変えた“初の全席着席によるプレミアムライブ”の模様を以下の通りにレポートする。  【取材・桂 伸也】

光と影の壮大な世界観

 横に広い品川StellaBallのフロアは、赤い座席で埋め尽くされていた。このような座席式のホールによる会場でのライブも、TRUSTRICKにとっては初めての試みだったという。1階席、階席と程なく観客で埋め尽くされた会場。老若男女幅広い層の観衆が集まったこの日のステージ、「間もなく開演です」という会場案内が流れると、フロアからはまるでクラッシックのコンサートで見られるような静かな拍手が沸き上がった。そして定刻から少し過ぎ、会場が暗転。ステージ前には薄い幕が下ろされ、その先には、ステージの随所に飾られた蝋燭(ろうそく)のような照明がうっすらと見えた。

 そして、SEと共に幕に映像が浮かび上がった。沙也加とBilly、TRUSTRICKのイメージが、幕の上に映し出される。それが幕の先のほのかな照明と重なり、幻想的なイメージを作った。映し出される「TRUSTRICK ATLAS」の文字。オープニングナンバーは、もちろんその「ATLAS」。普段のライブのように「最初からアゲていくぞ!」という気合いよりも、まるで物語を語るような沙也加の静かな歌声が、会場を満たしていく。一方でプレーに徹し、歌心のあるギターのオブリガードで彼女を支えるBillyのギターも、聴きどころをたっぷりと見せていた。ステージ、そして会場いっぱいに広がる、光と影の世界。そのビジュアルが、TRUSTRICKのサウンドイメージと重なって、とてもロマンチックな雰囲気を醸し出していた。さらに4曲目の「君が居る未来のために」では、ストリングスのカルテットも加わり、美しくゴージャスなハーモニーでステージをバックアップしていた。

ドラマチックなステージ

写真=TRUSTRICK初全着席で表現した歌劇型ステージ[2]

撮影・加藤アラタ

 6曲を終え、沙也加がこの日初めて観衆に語り掛けた。6月に行われた、この日のステージとは対照的な趣を構えていた『Garnet』。そのステージを振り返りながら、「今日はこの初の試みを全身で感じてください!」と、このステージをアピールした。全般的にアコースティック的な響きが感じられた序盤より、続いた「MIRRORS」では、少しファンキーなテイストが加えられ、自然とフロアから手拍子の後押しが入る。そんな雰囲気の変化の中で、透明感のある沙也加の声は、なにかゆるぎないTRUSTRICKの芯のような存在感を示し、この日のステージで続く「初の試み」の中で彼女らだけに作り上げられる音を紡ぎだしていた。

 時に会場は真っ暗に暗転、そして沙也加とBillyにゆっくりとピンスポットが当てられる。また別の時にはブルーを基調とした神秘的な照明がステージを華やかに演出するなど、ライブハウスの熱気とは違った魅力があふれるステージが展開していく。サウンド面でも、一時、沙也加はステージを降り、Billyをフィーチャーしたインストナンバー「TRUST」のプレーや、TRUSTRICKとは親交の深い坂本真綾のナンバー「雨が降る」のカバーを、「雨」のイメージを催した照明イメージでプレーするなど、ドラマチックなステージがどんどんと進んでいった。そのステージの印象に観衆も大いに魅了され、一つの曲が終わる毎に、心からの感動を示すような、丁寧な拍手がフロアから上がった。

熱気に溢れた終盤

写真=TRUSTRICK初全着席で表現した歌劇型ステージ[3]

撮影・加藤アラタ

 「『Garnet』とは大分感じが違うじゃないか? と感じられている方もおられるかもしれませんが、安心してください! いつものノリになるかもしれませんので」いよいよステージも後半を迎え、沙也加が観衆に語り掛けた。ここまでTRUSTRICKは、ライブハウスで聴かせているような躍動感あふれるステージとはまた違う、真に音を聴かせ、イメージに浸らせるようなステージを展開し、その光景に観衆は、上質なクラシックやオペラを鑑賞しているかのように静かに席に座り、じっくりとその世界を味わっていた。が、続いてMaroon5のカバーソング「She will be loved」、Billyのアコースティックギターが光る「Calico」と続いた後には、いよいよ私たちの独壇場とばかりに、沙也加が会場の中央で手拍子を、観衆をあおりはじめた。

 「みんなそろそろ立ちたいんじゃないですか?」。彼女のその声に、1階、2階の観衆共に総立ちとなり、クライマックスへの期待をステージに向けた。そして「Escape」、「Sunny Day」と抜群のノリを見せたサウンドに、観衆は先程までの静かな雰囲気はどこに、と思われるほどの熱気をほとばしらせた。そしてラストナンバーは、5月にリリースされた最新シングルのナンバー、「未来形Answer」。彼らの今一番ホットなナンバーだ。曲のブリッジで見られるブレイクは、一瞬の気の迷いや、センチメンタルな思いを表し、そして駆け抜けていくようにサビにつながる。そんな甘酸っぱいストーリーが感じられるこのナンバーを、観衆は全身で感じ、心からステージを楽しんだ。そしてエンディング。「ありがとうございました!」沙也加の礼と共に、TRUSTRICKはステージを後にした。

新たなTRUSTRICKで魅せた

 そしてなおも「トラトリ!」「トラトリ!」(※TRUSTRICKの愛称)と名を連呼し続ける観衆の声に応え、再びステージに登場した彼ら。その笑顔の奥に見えた表情は、結成1年を迎え、この日の様々な、新たな試みをやり遂げた安心感に包まれていた。この日の礼と共に、また新たなTRUSTRICKの世界を切り開いていくことを誓った沙也加、Billy。アンコールナンバーは、「FLYING FAFNIR」、そして「On your marks!」 と、気持ちを高ぶらせるキラーナンバーでしっかりとステージを締めくくり、ステージ、フロアとも皆満面の笑みでこの日のライブは幕を閉じた。

 ステージ序盤は緊張の表情を隠せない様子の二人だったが、かつてなかったホールの雰囲気の中で味わうTRUSTRICKのサウンド、パフォーマンスは、彼らのファンにも強くアピールしたようだ。結成1年でいきなりの大舞台、しかも様々な、新たな試みに果敢にチャレンジした2人の、ライブを終えた時の表情は、彼らの行き先を大きく期待できるほどに晴れやかに見えた。この日のライブでは、このステージのライブDVD、そして今年末に東京・台場Zepp DiverCityでのワンマンライブ開催が新たに発表された。さらに大きな舞台に立つことも不思議ではない彼ら、今後の動向にも大いに気になるところだ。

セットリスト

01. ATLAS、
02. If -君が行くセカイ-
03. Ever Blue
04. いつかの果て
05. 君が居る未来のために
06. 恋人
07. MIRRORS
08. as one
09. snow me
10. TRUST
11. 雨が降る(坂本真綾カバー)
12. She will be loved(Maroon5)
13. Calico
14. Escape
15. Sunny Day
16. 未来形Answer

Encore

E01. FLYING FAFNIR
E02. On your marks!

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