写真=フレデリック踊りまくった夜

ファンを酔わせたフレデリック(撮影・橋本塁)

 関西の若手バンドで今最も勢いがあるとされる「夜の本気ダンス」「フレデリック」「ドラマチックアラスカ」の3バンドによる全国ツアー『ALA-UMI-DOSS TOUR 2015~逃げ出したくなるような踊ってない夜に本気ダンス~』が隔日、それぞれの地域で行われ、6月30日に大阪・梅田でファイナルを迎えた。このファイナルでは自身初の全国ワンマンツアーを開催することを発表した。ミュージックヴォイスでは、28日に東京・CLUB QUATTROで行われたセミファイナルのうち、フレデリックの模様を以下にレポートする。  【取材・紀村了】

 会場はすっかりダンスフロアと化していた。観衆は激しく踊り、腕を振り上げ、頭を揺らした。1組が終わる度に、Tシャツを汗で濡らした観衆は火照らせた体を冷やすため、そして乾いた喉を潤すため水を求めて店内のバーカウンターに集まっていた。体に触れなくても熱気が伝わってくる。先ほど「夜の本気ダンス」がパフォーマンスを終えたところだ。縦ノリのロックサウンドに、観衆は休むことなく体を激しく揺らした。時折挟むMCはまるで漫才のよう。腕が立つトークに笑い声が会場に響き渡っていた。

 時間の制約もあってセットリストは3組とも各8曲と少ない。それ故にバンドもファンものっけから全力だった。その代償が1組を終えた後に観衆が襲われるエネルギー切れだ。あれだけ盛り上がっていたのだから、2組目に登場するフレデリックへはどう返していくのか、と心配したほどだった。しかも、フレデリックの独特の跳ねるサウンドは横ノリを加え、幻覚症状を与えるループが続く。しかしながら、ふたを開けてみればそれは違っていた。変わらずのハイテンションだった。

のっけから「オワラセナイト」

撮影・橋本塁

撮影・橋本塁

 8曲という限られたセットリストのなかでは特性を出す必要がある。3組とも関西を代表する若手バンドだけあって個性も豊かだ。同じノリを展開しては埋もれてしまう。彼らは彼らなりの工夫が必要だったに違いない。しかも、フレデリックは両者に挟まれての2組目だ。場の雰囲気を維持しつつも次に繋げる必要がある。当然、ファンのエネルギーも考慮する必要があるだろう。

 そうしたことも考慮してここはミドルテンポで繋げてクライマックスでアップテンポか、と思っていた記者の予想を覆し、中毒性を生む“幻覚曲”の象徴とも言えるヒット曲「オワラセナイト」を一発目に放り込んできた。格闘技でいうところのパンチドランカー。ラウンド間の休憩を得たファイターならぬ観衆は力を呼び戻して再び“リング”の中央で“ファイティングポーズ”をとる。高揚に満ちた観衆は、いきなりのキラーチューンに狂いまくった。

 この日の演出はにくかった。「オワラセナイト」で始まり「オドループ」で終わった。両曲は、“アク”の強いフレデリックサウンドのなかでもポピュラリズムを継承したいわゆる大衆ウケができる楽曲だ(厳密に言えば狙って作ったものではなくたまたま出来た)。展開が分かりやすく、ノリやすい。中毒性を生むフレーズのオンパレードだ。MV再生数100万回超えの要因の一つともなったリズムを視覚化した“振り付け”もリスナーの間では好評だ。

 その「オワラセナイト」はそもそも、「オドループ」に次ぐ楽曲としてその名の通り、始まりがあれば終わりもあるというコンセプトのもとに今年5月に発表された。(ミニアルバム『OWARASE NIGHT』の収録曲)。セオリー通りならば先に「オドループ」を持ってくるはずだが、それをあえて外して最後のクライマックスに用意した。「ボクらのダンスはまだまだ終わらんよ」とでも言っているようかのように。

跳ねるリズミカルなサウンド

撮影・橋本塁

撮影・橋本塁

 この両曲に挟まれて披露された2曲目「DNAです」から7曲目「愛の迷惑」までは実にフレデリックの特色が色濃く出ていた。静かに進みながらもサビ部ではダイナミックに聴かせるナンバーの数々。テンポの良い、跳ね上がるリズミックなギターサウンドをベースに、シンプルな構成ながらも時には変調を効かせるなど、独自の音構成を提示させて観衆のノリ(反応)を楽しんでいるようだった。

 楽曲の作詞作曲を手掛ける三原康司(Bass)は合間のMCで「今日来た人たちは間違いないです。めちゃくちゃ楽しく踊っている。あなたたちの歌ですよ。だから我が物顔で踊っていいんですよ」と観衆に投げていたが、個性あるリズムを踊りこなしている観衆に、心から敬意と高い評価を与えているようだった。ニンマリとした表情がそれを裏付けさせた。

 そして、それを表すように観衆とバンドには一体感があった。三原健司(Vocal、Guitar)、三原康司、赤頭隆児(Guitar)は何度もステージ前に出てきて観衆とのリズムによるコミュニケーションを楽しんでいた。kaz.(Drums)は当然ながらその場から動けないものの笑みがこぼれていた。

言葉さえ踊り出す

撮影・橋本塁

撮影・橋本塁

 曲間に一瞬光が落とされた5曲目「ディスコプール」では、ギターの跳ねるカッティングサウンドが雰囲気を作り上げた。ライブの高揚感と、体そして心躍らせるリズムの前では歌詞は無意味であるかのように、歌詞は本来の意味を無くし、盛り上げるためのリズムの一つとなっていた。サビ以外の歌詞はほぼ文章の体裁をなさず、単語となってあふれ出てくる。それは言葉自身が命を宿しているようでもり、跳ねるように零れ落ちてくる。言葉の1語が独立していてそれぞれがファンを躍らせているようでもあった。それは聴く者にインパクトを与え、知らぬ間に脳内でループを始めている。これが彼らの最大の特徴だ。

 その状態のまま間髪入れずにバスドラで始まった6曲目「プロレスごっこのフラループ」では三原健司が「渋谷踊れますか」と煽った。それに呼応するように三原康司も「ダンスの準備は出来ていますか」と確認。フロアも煽られて大歓声をあげた。三原康司はステージ前で両手でガッツポーズを作り、手ごたえを感じていた。赤頭隆児も体を揺らし笑顔をふり蒔いていた。

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