写真=ジェームス・ブラウン自伝映画[1]

公開中の自伝映画『最高の魂を持つ男』のワンシーン(C)Universal Pictures(C)D Stevens

 ソウル界のレジェンド“JB”こと、ジェームス・ブラウン(享年73)初の自伝映画『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~』(配給・シンカ/パルコ)が先月30日から公開されている。プロデューサーに、ザ・ローリング・ストーンズのミック・ジャガーを迎えている事でも話題を集め、現在、スマッシュヒット中だ。

 JBの代表曲と言えば、曲の大半が「ゲロッパ!」という言葉で占める「Get Up(I Feel Like Being)A Sex Machine」であろう。思わず口ずさんでしまうフレーズだが、そもそも「ゲロッパ!」とは何だろうか。そして、彼のファンクは日本の音楽にどのような影響を与えたのか。

ミュージシャンに影響与えたJB

(C)Universal Pictures(C)D Stevens

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 2006年12月25日に、惜しまれつつもこの世を去ったジェームス・ブラウン。ソウル界のみならず、音楽界全体を、その溢れんばかりの魂(ソウル)と、はち切れんばかりのエネルギーで、人々の魂を揺さぶり「最高のエンターティナー」として世界中を熱狂させた。

 ソウル、ファンク、ブルーズ、ゴスペルといった色濃い音楽性を背景に、R&Bのグルーヴやアフロビートを追求し「ファンク」を派生させたJB。マイケル・ジャクソンやプリンス、国内では和田アキ子やトータス松本なども、JBから大きな影響を受けたと言われている。ジェームス・ブラウンは、誰もが認める世界のファンク帝王だ。

 モッサリと生命力溢れるヘアスタイル、ボス的風格のスーツ姿で猛り踊る、あまりに強烈すぎる存在感。彼の歌うファンクの名曲「SEX MACHINE」を聴くと、体は勝手に動き出し、下手をすると腰までうねり出し、泣く子も黙る、いや、笑顔で陽気に踊り出すという、エネルギーの塊の様な楽曲だ。

「ゲロッパ」とは

(C)Universal Pictures(C)D Stevens

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 「ゲロッパ!」と連呼しているこの楽曲は、主役が「JBの大ファン」という設定で西田敏行が演じた映画『ゲロッパ!』(2003年公開)のヒットもあって、当時、「ゲロッパ!」というボーカルフレーズを口ずさむ人が多く現れ、話題となった。

 そもそも「ゲロッパ!」とは何か。完全に「ゲロッパ」と発音しているものの「JBさん、大変恐縮ではありますが、“ゲロッパ”って何ですの?」と思わず口ずさんでしまいそうになるほど、素朴な疑問がついて回る。

 「ゲロッパ!」は、活字にして表記すると、若手コメディアンの古風なギャグフレーズっぽく感じるフシもあるが、そうした類ではない。ジェームス・ブラウンが楽曲「SEX MACHINE」で繰り返しシャウトしているフレーズは「Get up!」(ゲロッパ)であり、それは最高に魂を揺さぶってくれるフレーズだ。

 ゲット・アップ(JB的発音はゲロッパ)は「いくぜ!」「イクぞおまえら!」と言った感じの、アツい煽りの言葉である。直訳だと「奮い立て」「立ち上がれ!」が適切であろうか。このフレーズが楽曲のボーカル内容の5割以上を占めるという破天荒な楽曲こそが、JBの名曲「Get Up (I Feel Like Being) A Sex Machine」だ。ちなみに曲中で30回も「ゲロッパ」と歌っている。

 JBの「ゲロッパ!」の掛け声と、「ゲロエロッ」という返しが主軸で構成されているという(注釈=“Get up!”と、“Get on up”のレスポンス)ファンクの歴史的名曲。そのボーカルのインパクトもさる事ながら、楽曲「SEX MACHINE」のグルーヴ(ノリの気持ち良さ)は天下一品。「最高のグルーヴを持つ生演奏ランキング」があったとしたら、恐らく1位か2位ではないだろうか。

 仮にランキング圏外扱いであった場合は、抗議も兼ねてJBはもう一度、世に登場して歌い出すことだろう。

ファンク音楽の特徴

(C)Universal Pictures(C)D Stevens

(C)Universal Pictures(C)D Stevens

 ファンク音楽、その代表曲「SEX MACHINE」などに見られる特徴として、歌はほとんどメロディーを持たず、シャウトやリズムに応じた歌唱という事が挙げられる。

 合い間に「ハッ!」と呼吸を吐き出す様なシャウトや、悲鳴に近い金切り声で絶叫するといったものはJBの必殺技。絶叫し切った後に力尽きる、失神してステージ場に倒れる、しかし、立ち上がりなおも歌い続ける、などといったステージングはあまりにも有名だ。

 和田アキ子の楽曲「古い日記」などで聴ける「ハッ!」という歌唱(あっの頃は、ハッ!でおなじみの楽曲)は、ジェームズ・ブラウンやファンク、ソウルへの深い解釈から産み出されたものではないかと思われる。

 和田アキ子自身、レイ・チャールズやスティーヴィー・ワンダーなど、ブラックミュージックに対し、多大なリスペクトを寄せている事を語っている。日本のソウルシーンを和田アキ子なしにして語れない事は、和田アキ子の歌から滲み出るその「ソウル」から存分に感じる事が出来る。

JBが与えた影響

 ファンクの先駆者としてソウル界の重鎮と称されるが、JBほどソウルのみならず、あらゆるジャンルの音楽に影響を及ぼした人物はいないのではないだろうか。

 ロック、JAZZ、ポップシーン、数々の分野のミュージシャンから敬愛され、HIP HOPやエレクトロシーン、ダンスミュージックシーンでも、JBのボーカル音源をサンプリングした作品は相当な数におよぶ。(JBはサンプリングに対し、非常に寛容であった事でも有名)

 ファンク、ソウルの御大として世界中に愛された「ジェームス・ブラウン」の魅力。当然「ゲロッパ!」はそのほんの一部だ。ここでは紹介しきれない程の数々の熱い作品と破天荒な逸話がある。

 最高のエンターティナー、その生涯。自伝映画「最高の魂を持つ男」の公開により、再びゴッド・ファーザーJBのファンク旋風が吹き荒れる事に期待を寄せたい。  【平吉賢治】

 ◆『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~』参考資料 ▽公開日=シネクイントほか全国公開中、▽監督=テイト・テイラー、▽脚本=スティーヴ・ベイグルマン、ジェズ・バターワース&ジョン=ヘンリー・バターワース、テイト・テイラー、▽製作=ミック・ジャガー、ブライアン・グレイザー、ヴィクトリア・ピアマン、エリカ・ハギンズ、テイト・テイラー、▽出演=チャドウィック・ボーズマン、ヴィオラ・デイヴィス、オクタヴィア・スペンサー、ネルサン・エリス、ダン・エイクロイドほか。

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