ある衆院議員が所属政党から除籍処分を受け、不服として「エモーショナルな感じで処分となったことは残念」と述べたことをマスコミ各社が報じた。「エモーショナル」―。なかなか聞きなれない言葉の表現に首を傾げた人もいるのではないだろうか。ネット上でもこれに関する“ツッコミ”が後を絶たず、話題となっている。

 当媒体では本来、音楽を中心に取り上げており、政治は別世界の話なのだが、今回の「エモーショナル」という言葉が胸に引っ掛かってならない。なぜなら、ロック界では頻繁に使われている言葉で、「エモーショナル」の単語に続く言葉はだいたい「~なロック」や「~なプレイ」「~フレーズ」とくる。

 ロック界では比較的「感動」を表す言葉として使われることが多い。よって、この発言に触れて「なんだロックの話か」と思ってしまったところもあったりなかったり。同衆院議員の事の真意はさておき、ここでは、このエモーショナルというものを掘り下げてみたい。

 まず、エモーショナルとは日本語に訳すと「感情的」や「感激した」など、気持ちの心理を表す言葉で音楽や芸術関連で特に使用されることが多い言葉だ。

 楽曲のタイトルでもこの言葉を良く見る。例えば、偉大ロックバンド・The Rolling Stones(ザ・ローリングストーンズ)の楽曲「Emotional Rescue」、世界的歌姫・Mariah Carey(マライア・キャリー)の「Emotions」。日本では、ギタリスト布袋寅泰の「BEAT EMOTION」や人気バンドのサカナクション「さよならはエモーション」などだ。

 2000年代に入ってからも米バンド・Hoobus tank(フーバスタンク)などに代表とされるエモーショナルハードコア、通称「エモ」と呼ばれるジャンルをよく聞く。日本でも流行っているので耳にしたことがある人も多いはずだ。それぐらい音楽業界ではよく聞く単語のひとつである。

 特にギター関連の雑誌などを見ると頻繁に目にするはずだ。レコーディングなどでも「そこをもっとエモーショナルに弾いてほしい」という要望を耳にする。基本的に、メロディを奏でる歌や楽器で良く使われる印象だ。

 ロックギタリストで有名なSTEVE VAI(スティーブヴァイ)はデビュー当時、周囲から「テクニックはあるが、エモーショナルに弾けない」というレッテルを張られるも、その批判をあざ笑うように90年発表のアルバム『Passion&Warfare』収録曲「For The love Of God」で“エモーショナル”を顕示した。彼は、更なる高みを目指すため断食を行い、この楽曲のレコーディングに臨んだという話は有名だ。

 他にもギタリストでは、フィギュアスケートの羽生結弦選手が、ソチオリンピックでSP演技の時に使用した楽曲「パリの散歩道」を演奏している故・GARY MOORE(ゲイリームーア)さんもエモーショナルなギターを弾くことで有名だ。感情豊かなギターは聴くものの心を揺さぶる。

 もちろんシンガーも同じだ。特にR&Bやソウル系の人たちは感情豊かに歌い上げる。日本人には馴染み深い演歌も、感情むき出しのこれぞエモーショナルという代名詞的存在だ。

 この感情を歌や楽器に乗せることは簡単なことではなく、スキルや人生経験なども大きく関わってくる。特にバラードなどのスローな曲ではエモーションがないと胸に響いてこない。

 一体どういったスキルがこのエモーショナルに通じるか。それはリズムのタメなどのタイミングや音量の振り幅、いわゆるダイナミクス、そしてビブラートの速さや深さが起因しているのが大きい。演歌ではこぶしだ。ここが出来たうえでのプラスアルファで成り立っている。良い音楽を聴いたり、良い映画を観ただけでも変化するはずだ。

 ここまでエモーショナルを掘り下げてきたのだが、自分の立ち位置をおかしてまで書きたくなる衝動にかられることこそエモーショナルなのだ。  【上村順二】

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