[写真]小室哲哉と秋元康が「小室哲哉ぴあ」で初対談

初対談を行った小室哲哉(左)と秋元康。音楽業界の過去と今、そして未来を語る(C)ぴあ

 日本の音楽史に多大なる影響を与えた小室哲哉(55)と秋元康(56)が、29日発売のムック本『TM NETWORK 30TH ANNIVERSARY SPECIAL ISSUE 小室哲哉ぴあ TK編』(ぴあ発売)で対談を行っている。テレビ番組などでの共演はあるものの本格的な対談は今回が初めて。同世代で一時代を築いてきた“戦友”だからこそ明かされる本音が垣間見える。

 ◆写真=プロデューサー論を語った小室哲哉

 また、小室のロングインタビューでは、音楽プロデューサー論やTM NETWORKの最新アルバム『QUIT30』について語っている。一部からは商業音楽の代表格とも言われた氏ではあるが、インタビューから浮かび上がってくるのは「伝える」ことへの強いこだわり。音楽を通じてリスナーにどう伝えていくか。その強い思いは作品に表れ、結果的にヒットやブームとなる。誌上で発せられた言葉からは小室の真意が伝わってくる。

 小室と秋元の対談では、音楽業界の過去を振り返りながら互いの印象について語り合っている。当時の音楽業界の慣わしや、秋元が小室の曲を聴いて衝撃を覚えたという「My Revolution」。そして80年代のアイドルブームから90年代のダンスミュージックブーム。

 TKブームとも呼ばれた90年代のダンスミュージック時代を小室は「何もわからないままその渦中にポーンと入り込んじゃったような感じだったから。もう、どんどん回転の速度が上がっていって、どんどん遠心力が増していって、どんなに自分で手綱を引こうと思ってもまったく止められなかったから。あの時に、今と同じような距離に秋元さんがいてくれたら、どんなに心強かったか」と回顧。

 一方の秋元は「時代には、その時々に咲いてる花っていうのがあるんですよ。たとえば、80年代に僕はアイドルという畑でいろんなことをやって花を咲かせてきて、今度は90年代にダンスミュージックという畑で小室さんがいろんな花を咲かせてきて。あの頃の小室さんを見てて『きっと今、楽しいだろうなあ』とは思ってましたけど、その畑に行って自分で種を蒔いて無理に花を咲かそうとは思わなかった。それが難しいのはわかっていたので、自分は映画だったり、テレビだったりと、他の場所でおもしろいと思うことをやってきた」と語っている。

 更に、秋元は「globeの『DEPARTURES』だとか、華原朋美の『I BELIEVE』だとか、あの一音だけに賭けているような詞というか、音楽が連れてきたような詞というのは、僕には書けない」と、作詞と作曲全てを一人でこなすことの強みも説いている。

 また、クールジャパンにみられる日本文化の世界的なブームについてはこう語っている。

 小室「たとえば村上隆さんの作品が国外の現代美術の世界でとんでもない価格で取引されたようなことが、自分の足元である音楽の世界でもそのうちに起きるんじゃないかなって」。

 秋元「若い世代が海外に目を向けるようになってきているのは本当に正しいと思うし、日本でやってることをそのまま持っていったら、それが向こうで受けたりする。そこで、少しでも海外の趣向に迎合しようとしたりすると絶対に勝てない。クール・ジャパンというのも、その本質は何かというと、自分たちのやってることに自信を持つことだと思うんですよね」。

 一方のロングインタビューでは小室がいかに物事を考え尽くしているかが伺い知れる。例えば世界市場についてこう述べている。

 「アメリカの市場というか音楽が優れているのは、ずっと世界の民族のことを考えて作っているからなんですね。なので歌詞なんかもわかりやすく簡単な言葉使いなんだけど、メッセージ性があるので浅くは感じない。そして、ちゃんとみんなで盛り上がれるように、シンガロングできるフレーズやリリックを重視しているんです」。

 さらにこうとも語っている。

 「J-POPをなんで海外に輸出できないのか?という課題ですね。なぜ輸入しかできないんだろうとか。もちろん英語という問題や、地理の問題などがあると思いますが、日本人は島国でほぼ同じ民族だけで生活できてしまう環境が、音楽への影響も大きいんですよね<中略>音楽家は、そこを理解したうえで、ポップスを作るべきなんですよ。最大公約数を知る努力が必要なんですよね」。

 物の本質を捉え、それを自分の能力でどう表現していくか。時代を見据え、国内外の現状を捉え、更には自身のクリエイティブな感覚や感性を生かしつつ形にすること。それは片一方の独りよがりでは成り立たない。受け手とのコミュニケーションが大事だ。「どう伝わるか」「どう伝えられるか」。音楽を通じて追及した結果が今の作品であり、過去のブーム。今回のアルバムに連動して小説を組み込んだのもその延長なのであろう。伝え方の多様化だ。

 どう伝えていくか―。音楽に限らずビジネスシーンやライフワークにおいても重要な項目だ。小室と秋元の対談、小室のロングインタビューを通じて「伝えた方」を改めて考えさせられるものとなってる。

 なお、同書ではこのほか、TM NETWORKの宇都宮隆、木根尚登やTRFのDJ KOO、観月ありさ等の音楽仲間や関係者がTKサウンドを振り返っているインタビューや、小室がTKソング100曲を解説しているもの、数字でみるTKブームとビジネス検証、更にはglobeのマーク・パンサー、AAA、森進一ほかからのエールなど、小室の魅力を余すことなく伝えている。  【紀村了】

 ※編集者注釈
 本文中の引用部は全て『TM NETWORK 30TH ANNIVERSARY SPECIAL ISSUE 小室哲哉ぴあ TK編』(ぴあ発売)より。そのうちロングインタビューの取材・文はふくりゅう氏(音楽コンシェルジュ)。小室氏と秋元氏の対談の取材・文は宇野維正氏。

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