<シリーズ:ガールバンド5人の記録(1)>
 80年代から90年代にかけて時代を席巻したガールズロックが再び脚光を浴びている。渋谷で活動する彼女らもまたこの時代に名を刻みたいと日夜ライブに励み、メッセージを伝え続けている。女性5人のMilkey Milton(ミルキーミルトン)だ。

Milkey Milton、ゆとりと肉食系が同居するガールズバンド(2014年8月22日)

結成1年と歩みを始めたばかりのMilkey Milton。左からmiki、ume、mana、chika.、mizu

 結成1年と短く、まだ荒削りの状態。だが、気持ちだけは常に前向きだ。集まればガールズトーク。ファッションやランチ、恋話…。世間からは「ゆとり世代」と揶揄される。だが、それに負けないアグレッシブなハート“肉女子系女子”も備えている。

 そのような彼女たちだからこそ表現できる音楽がある。等身大の姿をありのままに、同世代の女性たちが共感できる音楽を作り続ける―。

 「ゆとり」と言われる世代にあって彼女たちの目に映る人々、都会はどのようなものなのか。音楽を通してかすかに映し出されるその世代の姿と心模様。この企画では、歩みを始めた彼女たちを定期的に取材し、その一端を伝えていきたい。

 ■バンド結成の背景

 音楽の専門学校に通う同級生が集まってこのバンドを組んだ。今年3月に学校を卒業。7月に結成1年を迎えた。ファンはまだ十数人と心細い。それでもいつかは「武道館で」と、夢を見て歌い続けている。

 メンバーは、ボーカルのmana(栃木県)、リーダーでキーボードのchika.(同県)、ギターのume(東京都)、ドラムのmiki(埼玉県)、ベースのmizu(静岡県)。出身地は比較的近く、umeとmikiを除き専門学校1年の時に上京した。それでも育ってきた環境、影響を受けた音楽は異なる。

 出会ったのは2年前の春だ。同じ学校の同級生として知り合った。東京のスケール感にただ戸惑い、不安と動揺の中で心を許し合える仲間として絆を深めていった。2年に進級した時期にリーダーのchika.が切り出した。「バンド組んでみない?」。

 もともと音楽に携わりたいと思っていた。彼女らの時代は、小学ではモー娘。が流行り、中学、高校にかけてはAKB48が人気を集めていた。青春期の音楽業界はアイドルが台頭し、ロックでは青春パンクやオルタナティヴロックがブームとなっていた。

 ■異なるバックボーン

 mizuは、音楽をやりたいがために手に職をと商業高校に入学した。同じく受けた公立校入試の答案はすべて白紙で出した。高校ではしっかりと日商簿記1級などの資格を取得している。勉学に励む一方で私生活ではUVERworldの音楽を好んで聴いていた。

 manaはいわゆるアイドルオタクだった。男性に混ざり女性アイドルを追いかけ、応援していた。力強いアイドルに魅せられ、女性の強さを意識。このときに「女性にしか出来ないものを求めれば勝てる」と確信した。それ以降は、表現力を磨くためにボーカルトレーニングに励み、ダンスにも力を入れた。日米韓で活躍の場を広げたBoAのようになりたいとも抱くようになった。

 umeの世代は、「魔の92年生まれ」と呼ばれたそうだ。中学卒業の年にリーマンショックが起こり、高校卒業の月に東日本大震災が発生、成人式では稀にみる大雪で式典もままならなかった。そのような背景のなか彼女が好んだのはロック。チャットモンチーや東京事変、BUMP OF CHICKENに憧れ、高校時代はコピーバンドを組んでいた。

 chika.は幼少期からクラシックピアノを習っていた。その反面、スポーツにも励み、中学・高校ではハンドボール部に所属。高校卒業後の進路は音楽かスポーツかで悩んでいた。結局、音楽をとった。そんな青春期に聴いていたのはONE OK ROCKやSCANDAL。

 mikiは教会に足しげく通っていた。教会では一般的に賛美歌を歌うのが通例と言われているが、その教会では歌う曲のジャンルを自由に選べた。彼女は洋楽を中心に歌っていた。

 ■音楽専門卒の異質

 音楽を専門とする学校ともあってメンバー全員、音楽の基礎知識・技術は備えている。そのため、楽曲作りは個々に任せるスタンスを取った。「それぞれが作りたいものを作る」と。しかしながらその選択は思いのほか大変だった。

 chika.「好きなジャンルが違うから楽曲にバンドとしての統一性がなかった」、mana「リズムも異なるので歌うのも大変だった」。さらに「mizuはとにかく男っぽい曲が多い」、「umeは女性っぽいしメルヘンなところがある」。

 chika.はこう振り返る。「とにかく歌いたい曲、つくりたい曲をやってきたので一人一人の感性が反映される。だから統一性はないの当たり前だったかも」。

 ただ、この1年でようやくバンドとしてのカラーが見えてきた。それに合わせる形で楽曲を作ることも次第に出来るようになっていった。

 集まればガールズトークともあって、歌詞には女性目線のものが多い。恋話からランチ、ファッション、そして20代女性が抱える悩みや趣向など。chika.「同じ世代の女性が経験することをそのまま歌にしたい」。

 ■ゆとり世代と肉食系女子の同居

 彼女らはいわゆる「ゆとり世代」のど真ん中にある。だがchika.はこう語る。「まわりから言われているけど、ゆとり世代という自覚はない。目の前に起きていることが現実であって、別にゆとりを選択してきたわけじゃない。そういう世代という枠にはめられても困る」。

 更にmanaも「私たちの楽曲で共感はしてほしいけど、ゆとり世代の代弁者になるつもりはない。ありのままの私たちが見て、体験したことを表現していきたい」と語っている。

 ちまたでは、なよなよしている男子を草食系男子と呼び、積極性のある女子を肉食系女子と呼ぶそうだ。manaは音楽をする上では典型的な肉食系女子ともいえる。夢を達成する思いは人一倍強い。「男の子に負けない音楽を作りたい。女の子にしかできないものを追及したい。そして今までにないガールズバンドを作り上げていきたい。そして女の子の強さ、可愛らしさを広めていきたい」。

 結成1年とまだ日は浅い。chika.「1度でもよいからライブを見てほしい。そして見た目、キャラクター、曲を感じてもらい、特に歌詞に注目してほしい」と呼びかけている。

 少なからずとも時代に影響されながら人は歩いていく。「ゆとり」と揶揄される世代にあって彼女たちの目に映るものはどのようなものなのか。歩みのなかで変化もあろう、喜びや葛藤など今の20代女性の生き方を、彼女らの活動を通してみてみたいと思う。次回は12月、来年1月ごろを予定しています。  【紀村了】

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Milkey Milton、ゆとりと肉食系が同居するガールズバンド(2014年8月22日)

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