INTERVIEW

柳楽優弥×有村架純

2人が考える理想の大人とは
『映画 太陽の子』で得た学び


記者:鴇田 崇

写真:鴇田 崇

掲載:21年08月08日

読了時間:約5分

 主演作が続く俳優・柳楽優弥、有村架純、そして三浦春馬さんが共演した『映画 太陽の子』が劇場公開となった。本作は「青天を衝け」など数多くの話題作を手がける名手・黒崎博が監督・脚本を務めた意欲作であり、太平洋戦争末期に存在した「F研究」と呼ばれる“日本の原爆研究”という事実をベースに、時代に翻弄されながらも全力で駆け抜けた若者たちの、等身大の姿を描く青春物語の一面もある。

 その公開を前に、柳楽、有村にインタビューを実施した。戦時下と現代を比べ、思いを新たにすることが少なくなかったというふたりは、今回の『映画 太陽の子』への参加を通じて、どのように成長したのか。そしてまた俳優として、映画人として、今後はどういう人間になりたいかという展望まで含めて、実力派俳優たちが今の時代に抱いている本音にも迫ってみた。【取材・撮影=鴇田崇】

(C)2021 ELEVEN ARTS STUDIOS/「太陽の子」フィルムパートナーズ

当時、懸命に生きた若者たちの姿

――本作では、専門的な知識や時代背景が伴う役柄を演じられたと思いますが、どういうことに気をつけて撮影に臨まれたのでしょうか?

柳楽優弥 黒崎監督からは、「共感しやすい主人公ではないので、だんだん後半になるにつれて、修を疑う瞬間は正直増えてくると思う」と言われていました。でも、この映画は決まったメッセージを投げかけるというよりも、観た方自身がいろいろと考えられる、メッセージを捉えられる作品になっていると思うので、自分の考え方を持てるような気がしています。ぜひ若い方にも観てほしいです。

有村架純 戦時下という厳しい環境を生きている女性だったので、その環境と対面した時に、どう感じて生きているのか、葛藤などもしっかり考えながら、役を作っていきました。状況が悪化するごとに戦争に勝てるのかみんなが疑問に思っていた時代。でも口に出すと、非国民だと言われてしまう。飲む込み気持ちはたくさんあっただろうなと思いましたが、3人だからこそ気持ちを言い合える関係だったと思います。

――本作に関わって、得たものは何でしょうか?

柳楽優弥 漫画原作やオリジナル作品でもあることですが、こういうテーマの作品に挑むと、学びはたくさんあります。実際に歴史の事実についても学び、より戦争というものの怖さを感じました。

有村架純 自分たちは今の生活の中で、大なり小なりの選択をしながら生きていると思うのですが、この当時の戦時中の選択はとても残酷なものや、今では絶対に考えられないようなことの選択を強いられたこともあったと思うんです。そういうことを考えると時代のおそろしさや人間のおぞましさも感じなら、改めて今こうして自由に選択していい時代に生きていることへの感謝や生きることを学びました。

柳楽優弥 この作品は戦争のことだけじゃなくて、その当時懸命に生きていた若者たち、その家族のつながりも丁寧に描いているので、力強く生きることを改めて学びました。今の時代にも通じるところがあると思いました。

有村架純 科学者が研究・探究するロマンだけでなく、科学者の葛藤も学びました。研究で資源やエネルギーを生むのですが、その結果に到達した時、その結果やエネルギーをどう使うかは利用する人たちの手の中にあるから、科学者たちはその先のことに手が届かないんです。そこがすごくもどかしかったということを聞いた時に、ロマンもあるけれど、自分たちがなすことで世界が凄まじいことになってしまうかもしれないと。そういう覚悟の元、日々研究がされているのだということを学びました。

(C)2021 ELEVEN ARTS STUDIOS/「太陽の子」フィルムパートナーズ

やりがい、そして理想の大人像

――そういうことを、全身を使って表現していく俳優という仕事については、やりがいなども含めて何か感じるものはありますか?

柳楽優弥 やりがいは…なかなか自分ではわかりにくいかもしれないです。僕も映画を観るほうで、今回研究者を演じるにあたり『風立ちぬ』『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』『ビューティフル・マインド』などを観ましたが、映画でいろいろと勉強させてもらっているので、映画は自分にとってはないといけないもの、ですかね。僕にはやりがいというよりは、映画にはそういう力があると感じています。

有村架純 自分のことを女優です、俳優ですと言いにくいので、やりがいとは、女優とは、という問いの答えはわからないんです。でも、わたしはシンプルにお芝居が好きで、その気持ちがいろいろな人と出会わせてくれたり、誰かの心に残る作品を世に送り出せたり、そういういい連鎖を生んでくれているなと感じることが、幸せややりがいというものにつながるのかなと思っています。

柳楽優弥 こういうテーマの作品ということもあるのですが、実際に現場にいる間は、楽しいという感覚よりも、もっとできることはないか調べていく作業のほうが多いと思うので、現場にいる間は集中しているんです。公開がだんだん近づいてくるにつれて、お客さんの元にお届けする感覚になるので、そこで頑張ってよかったと、僕はいつも前向きな気持ちになっています。

――表現者として自分を磨くために、たとえば音楽を聴いたりしますか?

柳楽優弥 僕はもともとヒップホップが好きだったのですが、ブラックミュージックが大好きでよく聴いています。最近はジャズや、R&Bもよく聴いています。元気をもらう感じです。背景の、這い上がっていく物語が好きですね。日本だと矢沢永吉さんなど。そういう人が好きなんです。

有村架純 アーティストさんの曲も好きなのですが、ピアノだけ、メロディだけの曲を撮影中に聞くことが多いです。何かのサントラやピアノの曲を、台本を読みながら聴くことが多いです。余計な情報もなく、スッと聴ける。台本も音楽もだと情報過多になっちゃうのですが、作品に集中している時はシンプルなメロディラインだけを聴いて過ごしています。そうじゃない時は家で80年代の曲を聴いたりしています。

――俳優として、仕事人として、今後はどういう人間になりたいですか?

柳楽優弥 31歳になり、品のある大人になりたいなと思いました。そうなれるように頑張ります。習いごとなどをちゃんと続けて、面白くて品のある大人になりたいです。先輩の俳優の方たちを見ていてかっこいいなと思う方は、品のあるふるまいをしている印象があります。なので、僕もそうありたいなとあこがれています。

有村架純 ずっとフラットがいいです。このお仕事をしていると日々刺激だらけなので、普通の日常生活ではなるべく刺激が少ないようにフラットに生きていきたいです。そのほうが、余白が生まれるじゃないですか。いろいろあっちへいったりこっちへいったりすると心がとげとげしくなってしまうけれど、フラットでいると丸いままでいられるような気がするんです。その隙間に必要なものを入れながら、いつでもそういう状態でいたいなと思います。余裕のある大人でありたいですね。

柳楽優弥×有村架純

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