小学館の人気雑誌『ちゃお』に掲載され、シリーズ累計100万部を突破。テレビアニメ化など10年に渡って少女漫画として愛され続ける人気作「ショコラの魔法」が、ネオ・ファンタジーホラーとして実写映画になった。その主人公で美しき魔女ショコラティエ・哀川ショコラ(山口真帆)にまつわる事件を追う学園の新聞部に所属する飯田直を、女優としての活躍も目覚ましい岡田結実が好演。新たな魅力を披露している。
岡田演じる直は、事件に隠された闇深い欲望とチョコの謎に迫る女の子で、岡田のイメージに遠くない快活なキャラクターだ。しかし撮影時、「正直なところ、『ショコラの魔法』の撮影の時は、精神的にズタボロだったんです」と人知れず、芝居に葛藤していたという。そして「毎日音楽に救われています」と語るほど、音楽に助けられたことも多いという岡田。事務所移籍一年、現在の心境を聞いた。【取材・撮影=鴇田崇】
当初はキャラクターつかめず
――本作ではどういう役柄を演じたのでしょうか?
『ショコラの魔法』という原作がある作品で、わたしは飯田直という女の子の役を演じています。新聞部所属で負けん気が強く、男勝りで猪突猛進タイプ。何かをしたいと決めたら感情ですぐ動いてしまう、見ていて飽きないと思います(笑)。
実際にいたら、まわりの人は見ていてハラハラするかもしれませんが、わたしは彼女について行きたくなるくらいのリーダーシップも感じたので、演じていて楽しいキャラクターの女の子でした!
――役作りはどのようにしましたか?
正直なところ、『ショコラの魔法』の撮影の時は、精神的にズタボロだったんです。今まではクセがあるキャラクターを演じることが多く、それが重なっていたのですが、そこへ普通の女の子の役柄をいただき、ナチュラルな女の子よりは色を着けやすい子であると思いながらも、自分の中で戸惑ってしまいました。キャラクターが全然つかめず、どうすればキャラクターが完成するのかわからなかったんです。
――普通の子ほど難しいと、みなさんおっしゃいますよね。
クランクインして撮影一週間後、ようやく役が見えてきたような気がしましたね。出来としては、最初と最後の差が激しくなってしまったような気がしています。準備も自分の中で考えてしたつもりではあるのですが、それは“つもり”であって、最初から全部をぶつけられたかというと、そうではない気もしますね。
ズタボロだった理由
――その当時ズタボロだったとは、どういうことなのでしょうか?
役者、向いていないなと思っていた時期だったんです。作品が上がって自分で観ても、ほかの人がほめてくれても、いつまでたっても向いていないな、辞めてしまえと思いながらやっていたんです。別に病んでいたわけじゃないのですが、初めて自分なりに先が見えないなという時期でした。ただ、だからこそ『ショコラの魔法』を乗りきったことは、自分の中で大きかったなと思います。ほかの作品に比べて撮影期間は短かったのですが、わたしにとっては大切な作品になりました。
――自信があってもなくても仕事は続けないといけないという圧は感じますよね。
連ドラや作品に入る時に失敗は絶対許されない、それが続けば仕事がなくなってしまうとずっと思っていて、特に主役の場合は、自分が崩れたら全部が台無しになりそうな緊張感があるんです。なので常に100点、全力を出し続けなければという状態が続いていて、終わらない100メートル走みたいな感じなんですよね。それが自分の中で疲れになっていたかもしれなくて、ある瞬間にめちゃくちゃ体調を崩したんです。
――頑張りすぎてしまったと。
自分では忙しい感覚もなかったのですが、このままでは心が廃れてしまうと思ったんです。それまではオフの日はひたすら寝ていたけれど、あえて人に会ってみたり、作品に触れてみたり、そういうことを意識的に採り入れてみたら、人は心が豊かでなければ演技ができないなと気づけたんです。そのインプットの作業をしないと、ずっと偽物の演技をしちゃうなと思って、それを心がけてみたら復活した感じです(笑)。
――そして役柄的にも、ちょうどやるべき作品がきた。
そうですね。また、その時期の自分は、どこまで本気を出せば許されるかみたいな、ヘンな物差しも作り始めていました。それまで作品には100パーセントで臨まねばならないと思っていたのに、「どこまでやる?」みたいに全力を出すことに躊躇してしまい、がむしゃらを忘れていたんですね。でも『ショコラ魔法』の役作りに悩んでいた時に、このままで進んでいてはいけないと、ちゃんと自分を見つけられたことはよかったと思います。それは『ショコラの魔法』に出会えてよかったことですね。
――今はいかがですか?
ちょうど今はバラエティー中心の生活になっているのですが、いい演技をするためには自分を豊かにすることは絶対に忘れないようにしています。それまではアウトプットが多かったのですが、今はどちらかというとインプットの時期。いい意味で、自分の痩せていた感情がまた太り始めています。また頑張れそうという感じです!
――元気なイメージの裏では、そんな苦労があったのですね。
基本的に、悩み、苦しみ、叫び、全部大好きなんですけど(笑)、演技をすることに疲れていた自分がいることが悲しかったんです。演技はすごく好きなのに、演技が失敗できない環境にずっと置かれてしまうと、恐怖や確実にやらなくちゃという感情が芽生えたことがすごく悲しくて。昔、楽しい気持ちで始めた頃とはまた変わってきたと思い、それじゃダメだと演技レッスンに通い、人に会ってプライベート部分を豊かにして、それをちゃんと仕事で発揮できるようにする作業をここ数カ月でしました。
音楽に救われる
――そのインプットの中に音楽はありますか?
あります!わたし音楽人間なので、音楽がないとわたしは人生、途中であきらめていたと思うほど、毎日音楽に救われています。ここまで物事に対して考える、救われることって、音楽がなければなかったと思いますね。
――どういう曲を聴かれますか?
最近はチャットモンチーさんをよく聴いています。インディーズバンドも大好きなので、自分で探してみんなに言わずにひっそり売れていく姿を見ているのも好きです。そういう楽しみ方をしていますね。一番は選べないのですが、クリープハイプ、RADWIMPS、G-FREAK FACTORY、女性バンドではヤユヨ。基本的にバンドが好きで、イヤホンを忘れると一日がダメですね(笑)。
――詞に救われるタイプなのですか?
そうですね。それもいろいろでクリープハイプの尾崎世界観さんの書く詞に救われることもあれば、鼓舞してもらったり、やってらんねえこんな毎日!みたいな歌詞もあり(笑)、着飾らない感じがいいんです。ダメならダメを必死に歌っている感じがあって、それがすごく好き、救われます!なので大事なシーンの撮影の前やオーディションの前では気合いの入る曲を聴いて挑んだりしています。
――いずれCDデビューなどは?
ありません(笑)。出すつもりもまったくないんですけど、生まれ変わったらバンドマンになりたいと即答できるくらい、本当に自分の人生、違ければ今の仕事かバンドマンの二択だったと思います。
――最後になりますが、映画を待っているファンの方々へメッセージをどうぞ。
作品自体のターゲットが幼い小学生向けだったりするのですが、映画版は小学生から大人の方まで絶対楽しめる内容になっています。『ショコラの魔法』の世界観にはわたし自信、演じていてグッと引き込まれるものがあったので、観ている方も終わった後にそうなるはずだと思っています。
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